06:00 かえでとマリア かえでの部屋にて
※注意※
マリかえの百合でございます
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きらきらとした柔らかい朝日が、カーテンの隙間から柔らかく注ぎ込む。
最初は弱々しいものであった筈のそれが徐々にその強さを増し、やがて部屋全体がぼんやりと明るくなった
辺りで、かえではいつも眠りから覚めていた。
最初に瞼を上げた時に目に映る白い天井は、それが一体何であるのかさえ分からない。
しかし二度三度瞬きを繰り返すうち、徐々にその輪郭がはっきりとしてくる。
そこでやっとかえではゆっくりと身体を起こし、ぐっと大きく背伸びをした。
すると彼女の隣で眠っていた人物がもぞもぞと動き、掛け布団の中へと潜り込んでいく。
かえでは横目でその様子を眺め、ふっと柔らかく微笑んだ。
彼女の恋人は、ほんの少しだけ朝に弱い。それは恐らく、数ヶ月前からほぼ毎日のように一緒の部屋で
過ごすようになったかえでしか知らないであろう事実である。
尤も、花組のトップスタアであると同時に華撃団の副隊長という肩書の彼女にこんな弱点があると言っても、
恐らく誰も信じることは無いのだろう。
勤務態度はメンバーの誰よりも真面目。
年齢の幅が広く隊長以外の全てが女性、更に個性的すぎると評される程のメンバーがこれほどよくまとまって
いるのはほぼ彼女の功績であり、隊長からも特に信頼されている副隊長である。
またその立場故にメンバーを厳しく指導することも度々あるのだが、時折年下のメンバーの成長を優しく見守る
母親のような表情を垣間見せることもある為、他のメンバーからも慕われていた。
そんな傍から見れば完璧な彼女には、そんな弱点は似合わないのである。
「マリア、窒息しちゃうわよ」
微笑みを浮かべたまま小さな声で呟いたかえでは、頭の先まですっぽりと掛けられた布団を少しだけ捲る。
闇からいきなり光の元に晒された形となったマリアは一瞬眉間に皺を寄せたものの、再び夢の世界に
連れ戻されたらしい。深かった筈の皺が徐々に薄くなっていき、表情はやがて安らかなものになる。
かえではそんな恋人のブロンドの髪を軽く撫で、長い前髪を取り払う。
そして額に軽いキスを施すと、じっとその端正な顔を見下ろした。
ここは舞台の上では無く、化粧ひとつもしていない。
だがそれでもマリアは確かに、同性ですらも魅了する華やかなトップスタアの顔をしていた。
朝日にきらきらと輝く、美しいブロンドの髪。
日本人離れした掘りの深い顔、すっと通った鼻筋。
少しだけ桃色に染まった薄い唇、そしてまるで雪のような白い肌……。
見慣れている筈のかえでであったが、改めて見る恋人の美しさに思わずほうっと感嘆の溜息を吐く。
そしてその眩しさ故に胸の鼓動は早くなり、彼女は頭がクラクラするのを感じていた。
どくどくと早鐘のように、彼女の耳に鳴り響く心音。
目の前にあるのは、ビスクドールのように端正な恋人の寝顔。
完全に寝入っているのか、その薄い唇には少しだけ隙間が開いていた。
完全に寝入っているのか、その薄い唇には少しだけ隙間が開いていた。
彼女に、勿論意識は無い。
しかし舞い上がってしまっているかえでには、どうしてもその唇に誘われているような気がしてならなかった。
やがて目を覚ましてしまわないように注意しながらかえでは自らの瞼を閉じ、そっと彼女の唇にキスを施した。
柔らかい感触、雪のように白い肌からは想像できない暖かさ。
それらを存分に感じたかえでは軽くその唇を舐めると、目を閉じたままでゆっくりと身体を起こす。
そして彼女は瞼を開けると、まずその瞳に映ったのは相手のグリーンの双眸であった。
「マ……!」
あまりのことにかえでは相手の名の頭文字だけを殆ど声の無い状態で叫ぶと、背筋をピンと伸ばした
状態で固まる。当然顔は今にも火を噴きそうな程に熱くなっており、ポカンと力無く開いた口さえ閉じる力も
残されては居なかった。
目を覚ましたマリアは暫くじっと無表情でかえでを見つめた後、やがてふっと柔らかい笑みを浮かべる。
そしてショックから立ち直ることのできないかえでの頬に自らの手を添え、寝起き特有の掠れた声で
こう呟いた。
「……私は、幸せ者ですね」
「えっ」
あまりにも小さな囁きを上手く聞きとることができなかったかえでは反射的に聞き返したものの、
気が動転している為に声がひっくり返ってしまう。
まるで首を絞められた鶏のような声を出した彼女は思わず自らの手で口を塞いだのだが、マリアはじっと
そんな彼女を愛おしそうに眺めていた。
頬に添えられていた手がかえでの手の片方を掴み、その口を塞いでいたそれを取り払ってくれとせがむ。
彼女は暫く抵抗していたものの、やがて結局相手の望むがまに手を降ろした。
「あなたのキスで、起こされるなんて」
マリアの指が、かえでの唇に触れる。
その度に背筋がぴくりと震えた為、彼女は思わずぎゅっと強く瞼を閉じた。
やがてマリアの指はかえでの下唇を軽く弾き、再び頬へと戻って来る。
そして彼女は端正な顔に柔らかな笑みを浮かべ、こうかえでに問いかけた。
「もう一度、して下さいませんか?」
彼女はそう言って、まるで口付けを待つかのように自らの瞼を閉じる。
思ってもみなかった言葉にかえでは一瞬目を見開いたのだが、視界を自ら遮ってしまった相手には
そんな彼女の戸惑いは分からない。
目の前に横たわる恋人は、まるで眠れる森の美女のようにかえでには映る。
彼女はさしずめ、その眠りを起こす王子といったところだろうか。
やがて美女が眠りに就いて、時計の秒針がちょうど一周の距離を回り終えた頃――恥じらいに頬を耳まで
染めた王子はやっと、彼女を起こす為の儀式を行う決意を固めた。
「……うん」
そう小さな声を漏らした王子は、ゆっくりとした動作で恋人の唇を奪う。
姫から求められたキスが自身の予想よりも遥かに熱いものであったこと……それを王子自身が身を持って
知ることとなるのは、この瞬間から数秒後のことである。
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朝からいちゃいちゃって素晴らしいよね……!
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