04:00 かえでとあやめ
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あなたの一番古い記憶は何?
そう聞かれて私が真っ先に思い出すのは、あなたと初めて出会った時。
お母様に抱かれたあなたは凄く小さかったけれど、その瞳だけはきらきらと力強く光っていたことを
今でも覚えているわ。
その時私は生まれたての赤ちゃんを見たのは初めてだったから、どう接していいのか分からなくて……
お母様に言われてやっと、あなたの方に手を伸ばしたの。
そしたら、ほんの少し指先が触れただけなのにあなたは私の指をきゅっと握って、じっと私の方をその瞳で
見つめててきてね。
どうしてなのか分からないけど、その時強く思ったの。
私は、この子を護らなければいけない……って。
今思えば、それは姉としての自覚が芽生えた瞬間だったのかもしれない。
でも私にとってのあなたは、その時からずっと妹以上の存在だった。
可愛らしくて、愛おしくて……まるで恋人か母親にでもなった気分だったわ。
だから、私はあなたと会える日が待ち遠しかった。
『お姉ちゃん』って私を呼びながら飛びついてくるあなたを迎える時、あなたの腕の力に負けないように
ぎゅっと強く抱きしめていたこと、もう忘れてしまったかしら。
そんなことはもうずっとしていないけれど、私はあなたの身体の暖かさを今でもはっきりと覚えているわ。
やがてあなたは、暫くしてひどくお転婆な女の子になった。
私の後ろにいつもついて歩いていたと思ったら、いつの間にか私と同じように合気柔術の稽古をし始めて……何段か上の私にも、稽古で会う度に向かってきていたわね。
何とか姉としての面目は守り通したけれど、やっぱり血筋なのかしら。
他の誰よりもあなたを相手にする時が一番、手こずったのを覚えてる。
その上しょっちゅう木登りもしていたし、年上の男の子と喧嘩して泣かせていたこともあったみたいだし。
一緒に住んでいた訳ではないから実際に見た訳ではないけれど、そんな武勇伝幾つも残っている
らしいじゃない?
あの頃あなたと暮らせていたら、私もそれに参加したのに……本当に、残念だわ。
やがて成長したあなたは、私と同じように士官学校へ進学したいと言い始めた。
今になって思えば、小さい頃からずっと私の後を追いかけていたあなただもの。
家のこともあって、そうなることは必然だったのかもしれない。
あの時は、お互い生まれて初めて盛大な姉妹喧嘩をしたわね。
一歩間違えば、手が出てしまっていたかもしれないくらいの。
国の為、人々の為、そして家の為……あなたは軍人になりたいと言った。
でも私は、あなただけはそうなって欲しくは無かったのよ。
家のことなんて全て私に押しつけて、女性としての幸せな一生を送って欲しかった。
一般的な上流家庭のお嬢様と同じように女学校で女としての嗜みを覚え、やがては心から愛する人の元へ。
あなたの幸せな花嫁姿を見送るまでが私自身の役目だと、そう思っていたから。
そしてその幸せを護る為に、私は軍人になったのだから。
勿論あなたの言う通り、国の為であり人々の為であり……家の為でもあったのだけれど。
結局その後はお互いに忙しくなってしまって、あまり会うことができなくなってしまったわね。
私は対降魔部隊で先頭に立って、暫くしてあなたは欧州で先頭に立つこととなった。
あの時はお互いに心に深い傷を負っていた筈なのに、たまに会う時にはどこか余所余所しくなってしまって。
その上経歴としては申し分ない筈のあなたが、少し先に軍属になったというだけで持て囃された私と
比べられて……私を避けるようになってしまった。
その上経歴としては申し分ない筈のあなたが、少し先に軍属になったというだけで持て囃された私と
比べられて……私を避けるようになってしまった。
あの時、正直に話してしまえばよかった。
あなたは、私には無い素晴らしいものを沢山持っている。
誰にでも愛されるその笑顔と明るさは、私には到底真似をすることができないのよ……って。
誰にでも愛されるその笑顔と明るさは、私には到底真似をすることができないのよ……って。
でも、あの時の私にはそれができなかった。
あなたを護ると誓った身として、私はあなたに弱みを見せることができなかったから。
もし自分の全てを曝け出せば、あなたはもう私を二度と慕ってくれなくなるかもしれない……
そんな恐怖に苛まれていたから。
でもそんな自分の弱さのせいで、私はあなたに最悪の形でその全てを背負わせることになってしまった。
家に代々伝わる宝刀。
心に大きな傷を負いつつも無理をして笑っている、お酒の好きな上官。
そして……華撃団。
副司令として、そして劇場副支配人としてのあなたの力量には、私は何の心配もしていないの。
最初は不慣れであっても、あなたならやっていける。
確かに華撃団のメンバーは個性的だけれど、誰にでも愛されるあなたの明るい性格なら、
すぐに打ち解けられる筈だわ。
ただ私が唯一心配なのは、あなた自身のこと。
沢山の人間があなたを頼りにするでしょう。
そしてあなたなら、その全てに応えようとするでしょう。
じゃあ、あなたは誰に頼ることができるというの?
そしてもしもあなた自身の身に危険が迫ったとしたら、一体誰があなたを護ってくれるというの?
私の身体はもう二度と、この世界に生きるあなたに触れる事さえできないというのに……!
ねえ、かえで。
私はいつまで、あなたの心配をしていればいいのかしら。
私はいつまで、あなたの心配をしていればいいのかしら。
あなたをずっと見守っているけれど、私もそろそろ待ちくたびれてしまったわ。
だから、早く……私にかえでの晴れ姿を、見せてちょうだい。
「くちゅんっ!」
机につっぷして眠っていたかえでは、自らのくしゃみによってはっと目を覚ました。
そして風邪かしらなどと呟きながら鼻をすすると、ゆっくりと視線を時計の方へと向ける。
その表情は普段の凛々しい彼女とはかけ離れており、まるで年端のいかない子供のようであった。
そんな寝ぼけ眼の妹を見下ろし、どこかで誰かが溜息を吐く。
だがうっすらとその口元に浮かぶのは、彼女を見守る姉の優しい微笑みだった。
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あやめさんの誕生日にかえでさんは語ったので、今度はお姉ちゃんに語らせてみた。
血潮やったことないけど、あやめさん少しくらいかえでさんのこと匂わせてくれたのかしらん?
設定やら何やらで大好きだけど複雑みたいな書かれ方をしているので、いい加減その辺を解明して頂きたい
であります!
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