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22:00 かえでとすみれ すみれの部屋

注意
かえすみの百合です! ご注意下さい!




+++++++++++++++


豪勢なシャンデリアのある天井。
肌触りのよいシーツが敷かれた、天蓋付きのベッド。
窓のカーテンは一目で高級なものだということが分かり、現在自分が座っているソファー同様庶民には
手の届かない値段のものなのだろう。

久し振りに招き入れられた恋人の部屋を改めて見回し、かえではふぅと溜息を吐いた。
 
『いつも同じ景色では飽きてしまいますから、夜はわたくしの部屋へいらして下さいな。せっかくのお誕生日
ですもの、たまにはわたくしがおもてなしをして差し上げますわ』
 
自分の誕生日のお祝いを誰よりも先に告げに来た相手は、かえでの手を取りそう言って彼女を誘った。

飽きる程の景色というのはかえでの部屋のこと。
仕事の関係やそれぞれの性格から二人の逢瀬はほぼ彼女の部屋で行われており、その為逆にすみれの
部屋にかえでが訪れるということは殆ど無かった。

たまには違う雰囲気を楽しむのもいいかとかえでは相手の誘いに乗ったのだが、いざ訪れてみれば
改めてその豪華さに驚かされる。
かしこまらなくてもいいとすみれには言われているものの、思わず背筋が伸びてしまう、そんな部屋であった。

紅茶用のお湯を取って来ると言い、すみれが部屋を出て数分。
そろそろ戻って来る頃合いとはいうものの、雰囲気が普段と違うせいか時間の流れがやけに長くかえでには
感じられる。
先程から落ち着く様子も無く、彼女がベッドとソファーの間を行ったり来たりしているのはその為。
決してほんの数分でも待たされる事が嫌な程極端に短気な性格というわけではない。

すみれはまだ戻らないのかと、かえではドアを一瞥しやがて立ち上がる。
そしてくるりと部屋の中を一周すると、今度はベッドの上に腰を下ろした。
シーツには皺のひとつも見られないのだが、自由に使っていいという言葉は部屋の主から貰っている。

かえではその言葉に甘え、ゆっくりとその上に仰向けに寝そべった。
その寝心地は思った以上に上等で、自分のベッドがまるで蒲鉾の板か何かではないかとさえ思えてくる。


そのあまりの感触に、かえでは思わず寝がえりをうつとシーツに顔を埋めた。
こんな衝動に駆られた記憶は遥か彼方、彼女が十にも満たない頃にしか見当たらない。

一瞬でシーツの形は崩れ、かえでの身体の周りには大小様々な皺が波打つ。
しかし彼女はそれを意に介する事無く、その上暫くの間その上から顔を上げようとはしなかった。

顔を埋めたのと同時に、かえでの鼻孔にすみれの匂いが充満した。
正確には彼女が好んで付ける香水の香りなのだが、彼女にとってそれが恋人の甘い香りであることに
間違いは無い。


それに気付いたかえでは瞼を閉じ、顔を上げることなく鼻で大きく息を吸う。
甘い香りが身体を満たしていくにつれ、彼女はずっと感じていた緊張感が徐々に緩んでいくのを感じた。

部屋を訪れて初めて感じたこの匂いは、彼女がこの部屋で見つけた唯一の安らぎであった。
 
 
「お待たせいたしました」

やがてノックの固い音が響き、お盆を抱えたすみれがそう言って部屋へと入って来る。
ノックと同時に瞼を開けたかえでは、起き上がる事無く寝がえりをうち彼女の方を見た。

だがおかえりなさいと言おうとした彼女の唇は、言葉を発する事無くあんぐりと開けかれたままで固まる。

「もう、かえでさん。いくらお酒を飲んだからって、まだ眠ってしまわないで下さいまし」

彼女の言葉よりも早くそう言って眉根を寄せたすみれの姿は、先程までとは違うカクテルドレスに
包まれていた。そしてその頭にいつものカチューシャは無く、セミロングの髪は後ろで結いあげられていた。
紅茶のお湯を取りに行くだけの割にはには時間が掛かっていたのだが、どうやらどこかでこの衣装に
着替えてきたらしい。

「すみれ……どうしたの?」

思っても居なかった恋人のお色直しに、かえではうっとりとした表情のままではあるものの、ようやく自ら
口を開く。

「あら、大切な人の記念日ですのよ? 綺麗に着飾ってお祝いしたいと思うのは普通ではなくて?」

寝そべったままのかえでの隣に腰を下ろしたすみれは、にっこりと微笑んで答える。
それと同時に軽く首を傾げた為、後ろの髪が柔らかく揺れた。


「ふふっ……ありがとう、すみれ」


23.jpg


寝ころんだままで答えると、かえでは手を伸ばしてその髪に触れようとする。

すると彼女がが何を求めているかを理解したのか、すみれが軽くかえでの方へと寄りかかってきた。

かえではその髪に触れ、そして耳に、頬に。
そうして順に手を伸ばしていくうちに、いつしかその腕は相手の首へと廻されていた。

お互いにすぐ傍まで顔を近付け見つめ合えば、することはただ一つ。

恋人達はにっこりと微笑み合うと、どちらからともなく唇を重ねた。
 
「さ、かえでさんも……よろしければ先程のドレスに着替えて下さいませんこと?」

熱い口付けを交わしてまた微笑みあった後、すみれの口からそんな言葉が漏れる。
彼女の言うドレスとは、夕方に行われた花組全員との誕生日パーティで彼女からかえでに贈られた
ドレスのことだろう。
今までずっとすみれの色香にすっかり気を取られていたかえでは反射的にそれを頭に浮かべ、そこでやっと
贈り物が彼女の今着ているドレスと色違いのお揃いであることに気付いた。

いくら衣装持ちといえども、かえでは今まで一度もすみれが今身に着けているドレスを見た記憶は無い。
となればこの日に合わせ、すみれは自らの分も一緒にこのドレスを買っていたということか。

お揃いなんて久しぶりね――そんな事を心の中で呟いたかえでは、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
 
 
*     *     * 


かえでがそそくさと服を着替えた後、二人は紅茶ではあったものの軽く乾杯をした。

そして他愛の無い話を交わした後に待っているものは、衣装が違えど変わらないらしい。

二人きりの雰囲気に流されてすみれをベッドの上に押し倒す形となったかえでは、交わされるキスの合間に
こう相手に問いかけた。

「……このベッド、こんなに広くて柔らかいのに。どうしていつも私の部屋で寝ているの?」
 
微笑んでいる彼女に対し、それを聞いたすみれはすぐに目を丸くする。

寝心地のいい柔らかいベッドと、そう高級でもない固いベッド。どちらを選ぶ人が多いかといえば、それは
比べるまでもない。
ましてすみれは上流階級のお嬢様。幼い頃からずっと柔らかいベッドで寝ている彼女の好みなど、火を見る
より明らかの筈。

だがそれでも敢えてかえでの部屋に入り浸っているすみれは、彼女の問いに熱がこもっているであろう頬を
更に赤く染めた。

「そ、それは……上等なベッドの感触に飽きてしまいましたので、たまには庶民の固いベッドもよろしいかと……
そう! 単なる好奇心ですわ!」
 
だんだんと早口になっていくすみれの言葉に、かえではにっこりと微笑む。
そして彼女の額に自らのそれを重ねると、ゆっくりとした口調で口を開いた。

「じゃあ、ベッドを交換したらもう来てくれないの?」
「う……」
 
すみれの口がうめき声を上げたのを最後に、暫くその機能を停止させる。
そんな彼女をじっと見つめていたかえでの口元には、いつの間にか先程までとは違う悪戯な笑みを
浮かべていた。

「……い、意地悪はもうお止しになってくださいな」
 
真っ赤な顔をしたままですみれは息を吐くと、憮然とした表情でそう訴える。
彼女が抵抗せずにすぐに折れることは滅多に無い。
その為かえでは一瞬目を見開いたものの、やがて表情を変え口元に柔らかい笑みを浮かべた。
 
赤くなった頬を労わるように、かえではそこに軽く口付ける。
そしてくすぐったそうに身じろぎした相手の耳元に唇を近付けると、彼女は息混じりの声で小さく
こう囁いたのだった。
 
「ベッドが駄目なら、あなたを貰っても構わないかしら……ねえ、すみれ」


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すみれ様の部屋のベッドに寝てみたい! ふかふかだよふかふか!
というか誕生日縛りだったのって、結局このかえすみだけになっちゃったな……(汗)
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