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皆様おはこんばんちは! お久しぶりでございます。
私は怒涛のような更新を終え、自堕落な日々を過ごしておりました(笑)

しかしやっぱアレですね。人間趣味とはいえずっと根を詰めてちゃいけませんね。
久しぶりにゲームやら読書やらに時間を費やしていたら、少しずつではありますが書きたいネタが浮かんで
きましたよ。
でもまあ万年スランプで亀更新なことに変わりはありませんがね……!

さてさて、そんな私のことは置いておいて。
本日11月8日は、相方様の誕生日でございます。うん年は言わないよそろそろ微妙なお年頃だから(笑)

という訳で相方様、お誕生日おめでとうございます。
ついったでも言いましたが、熱しやすく冷めやすい上に一次畑の私が、ここまで飽きもせひとつのジャンルを
続けられているのはやはりアナタ様のお陰だと思うのですよ。
マイナーすぎて淋しい思いは致しますが、お互い萌えを供給し合って頑張っていきましょう。

ふつつかものですが、これからもよろしくお願い致します。
どうぞ素敵な一年をお過ごしくださいませ。

……私、来月はマリかえがいいな!(笑)

さて、オチたところで本日の更新でございます。
皆様ご存じの通りすみれさま大好きな相方様の為、今回思いつきではありますがひっさびざに『カンすみ』を
書きました。
何年振りだ……一昨年の正月ぶりくらいじゃなかろうか。

ただ本当に思いつきの為、かなり人を選ぶモノになってしまいました。
その為先へ進まれる方は、お手数ですが以下の注意書きを必ずお読みになって下さい。


注意事項
・一応舞台は太正時代でございますが、きっとこれはパラレルです
・すみれ様が『誰!?』と思うほどに乙女だったりします。マジで誰だ!?
・ええ敢えて言いましょう百合である
・私の趣向故、当ブログのメインカプ要素はもりっと含まれております


そんなこんなで、問題のブツはいつも通り拍手返信の後にございます。
皆様どうぞお気をつけて、お進みくださいませ。


【拍手返信(くらゆき)】

10月26日、12時12分頃メッセージを下さった方
喜んで頂けたようで何よりです☆
かえでさんはやはりサブキャラクターなせいか、誕生日とはいえどうしてもメインのキャラクター達のような
盛り上がりを感じることができないので、せめて当ブログだけは盛り上げてやろうと思い企画致しました。
幸せとまでおっしゃって頂けると、私も幸せです。大変だったけどやってよかったなぁ……。
それでは、メッセージありがとうございました!


夜様
お久しぶりです~! たまにサイトをこっそり覗きに行っていました。
オフは大変だったようで、お疲れ様です。少しでもこの企画が癒しになっていたのであれば幸いです。

加山は……2やアニメの記憶だけを頼りに書いたので物凄く不安でした(笑)
加かえでは人気ですからねぇ、私が書くとどうしても振り回される加山クンになってしまうのですが。
姉妹の関係は色んな設定があっても公式で全く補完されないので、思いっきり妄想しちゃってます。
でもやっぱり、愛さんの声で公式の絵で動く姉妹が見たいなぁ……頼みますよ公式!
そんなこんなで、何気に書いている方も楽しい企画でした(笑)

サイトの更新、こっそり楽しみにしております。ですがオフも大切かと思いますので無理はなさらぬよう。
その上最近は本当に寒いですから、体調にはお互い気をつけましょうね。

それでは、メッセージありがとうございました!


まりんこ様
いつもメッセージありがとうございます! 取り敢えず絶○に爆笑いたしました(笑)
そんな艶めかしいかえでさん、書けたらいいのにな……!

レニかえ、気に入って頂けたようで嬉しいです。多分今回の中で一番反響が高かったのですよ。
書いた本人が驚いてます(笑)
レニとかえでさんは親子萌えでも十分オイシイですが、もう少し経ったらかっさらってくれても全然問題
ありませんとも! レニはきっとマリアさんに負けないくらいの美人さんになると確信しておりますので。
レニかえ、もっと流行ればいいのに!

そしてメインかぽ~、出会いから初夜から私も妄想すると止まりません(笑)
初夜ネタはそれこそこのブログを開設した頃に書いたのですが(ええいきなり・笑)、また1や2を再プレイして
検証したらもう少し変化するかもなぁと今読み返して思っております。
私も書きたい! しかし時間がッ! 量がとんでもないことにッ!

そんなこんなでなかなか踏み出せずにいますが、いっぺん本腰入れて一年くらい頑張って『出会い~結ばれ~初夜~』という流れの長編を書くのが夢だったりします。最終的にはマリかえは結婚(笑)、かえすみは引退
からの別れみたいなところまで書けたらなぁ、と。
長丁場な上に実現できるかどうかも不安ではございますが、まったりとお待ち頂ければ幸いです。

けいまさんとは最近お友達になりました(笑)あのサイト様のグリは素晴らしいと私も思います!
何気に通っていたので、相互で結んで頂けて嬉しいのですよ……!

それでは、メッセージありがとうございました! 何か長くなってしまってごめんなさい!


以前にも書きましたが、企画の開始以降毎日途切れることのない拍手を頂けて幸せです。
皆様、そんなにかえでさんに飢えていらっしゃったのですね……! うん、私も飢えてます(笑)

こんな管理人も居るこんなマイナーブログではございますが、これからも末永く見守って頂ければ幸いです。

それでは、続きからカンすみ文へお進み下さいませ~。

【本日の戯言75】
正確に集計した訳ではございませんが、誕生日企画で一番反響が大きかったのはレニかえだった気が。
レニとかえでさんの親子ネタならいくらでも浮かぶのですが、絶対二番煎じになる予感がしてあまり
表に出してはいませんでした。
しかし話を聞くと、え、あんまり無いの……? 過去話とか凄い読みたいんだけど!

そんな感じで、メインも熱いですがレニかえも大変熱うございます(笑)



+++++++++++++++


一週間の公演が満員御礼の千秋楽を迎え、無事にその幕を閉じた。

舞台がはねてもなお役者達に向け声援や拍手を送っていた観客はやがてひとりふたりと去っていき、
今日の撤収作業を終えた裏方達の姿も消えたステージは静寂に満ちている。
観客達で賑わっていたロビーや玄関にも既に人影は無く、劇場の外に住む関係者も今はすっかり家路へと
着いてしまったらしい。
あれだけ賑やかであった大帝国劇場の外観は、その面影もなくひっそりと静まり返っていた。
 
明かりも必要最低限の場所以外はすっかり落とされ、一部はすっかり闇へと落ちたその内部。
だがそんな中で唯一、未だ煌々とした光に包まれ賑やかな声が響く場所が存在する。

役者達の控室。
本番中はピリピリとした空気に包まれていた筈のその部屋は、今は全く別の雰囲気に包まれていた。
 
すっかり空同然になった皿の上にほんの数時間前まで乗せられていた料理の残り香と、ほんのりと甘い
酒の匂いが混じるその空間。
そこでは舞台の成功を祝い出演した役者達を労う『打ち上げ』の宴会が、今正に最後の盛り上がりの時を
迎えていた。
 

 
「みんなぁ~引いたわね~?」
 
副支配人であるかえでのどこか筋の通っていない声が響く室内では、中央にあったのだろうテーブルが端に
寄せられ、全員が円陣を組む形で身を寄せ合い畳の上に座っている。
ちなみにメンバーは八人の団員とモギリである大神、そして先程声を張り上げていた副支配人であるかえでの
計10人。先程まで支配人の米田も日本酒の瓶を片手に宴会に参加して居たのだが、劇場に住み込みでは
ない彼は事務局の面々に連れられ自宅へと送られた。
彼は団員の父親ともいえる存在なのだが、年や立場もある為若者たちに気を遣わせないよう配慮したのかも
しれない。

そして残された面々はといえば、無礼講である上に宴会が終盤に差し掛かっているためか、それぞれが
普段とは違う顔を見せている。
特に酒を飲んでいるカンナやかえではそれが顕著で、特に後者は既に手が付けられない程の、
所謂『出来上がっている』という状態に陥っていた。

饒舌に話したり急に笑い出したりするのは序の口で、酒は弱いからという大神のグラスに無理やり酒を注ぐ、
同じく酔っているカンナと食器を箸で叩きながら歌い出す、下戸なさくらやすみれに酒の入ったグラスを
ちらつかせ『ねえ、一口だけ……どう?』と迫る等々、とても普段の凛とした彼女からは想像もできないような
行動を起こしていた。
 
だが、そんなかえでの酔っぱらいぶりも長い付き合いになるメンバーにとっては慣れたものであるらしい。
押しに弱い大神は何杯か飲まされたものの、酒を嗜むには幼すぎるレニやアイリスはその被害を被る事無く
楽しい時を過ごしているし、下戸なメンバーにかえでが迫った時には上手く他のメンバーが助け舟を出し
事無きを得ている。尚、その役目は主にマリアが請け負っているのだが、かえでとあまり変わらない量の酒を
飲んでいる筈の彼女は、普段通り顔色ひとつ変えて居ないのだった。
 
やがて宴会も終盤に差し掛かり、そろそろお開きかという雰囲気を見せ始めていた頃。未だ酔いの醒めない
かえでが、唐突に『王様ゲームをしよう』と口を開いた。
尤も酔った頭の彼女は、楽しい宴会の時を終わらせまいと頭に浮かんだキーワードを口に出しただけである。
だがその耳慣れない言葉にメンバーは興味を持ったらしく、一部を除き殆ど全員がその案に賛同した。
するとその『一部』のメンバーもまた周りの雰囲気や言葉に上手く唆され、結局全員がそのゲームに参加する
運びとなったのである。
 
 

そして、何度かゲームを行って今は既に三度目。
最初は戸惑っていたメンバーもここまでくればルールにも慣れ、かえでの声に一斉に自らが引いた割り箸の
先を見つめる。酔っている者や表情が顔に出やすい者などは結果が一目瞭然なのだが、レニやマリアといった
落ち着いた面々は無表情のままでそこからは何も読み取る事ができない。

そんなそれぞれの表情を見回したかえでは、最後に自らの割り箸に視線を落として口元を歪めると、先程同様
どこか張りの無いやんわりとした声でこう言った。

「いっくわよー、さんはいッ!」
『王様だーれだ!』
 
大きな掛け声とともに全員が周りを見回す。
最初に王様を引いたアイリスにジャンポールの真似をさせられたさくらなどは、両手で箸を持ち緊張した
面持ちでどこか落ち着かない。
そんな様子を見るに、どうやら三度目の今回も選ばれし者にはなれなかったようである。

「は~い!」
 
そんな暫くの沈黙の後、甲高い声と共に王冠の描かれた割り箸を掲げる者が現れた。
先程からずっと響いているその声の主は、言いだしっぺであると同時にゲームをずっと仕切っていた
藤枝かえでその人であった。

「何だかえでさんかよぉ~!今度こそあたいだと思ったんだけどなぁ」
「カンナさんになんて当たりでもしたら、どんな下品な命令をされるか分かったものではありませんわ」
 
どこか悔しそうな面持ちで言うカンナに、すかさずすみれがそう呟く。
彼女がカンナに喰ってかかるのはいつものことだが、普段ならばそれにすぐに反論するカンナが
『何だよぉ~』と言ったきりニコニコと上機嫌に笑っている。
どうやら酒に強い筈の彼女も、かえで同様にかなり酔いが回っているらしい。

「まぁ、今のかえでさんでも少々嫌な予感がいたしますが」
 
そんな相手の態度にどこか拍子抜けしたような表情を浮かべたすみれは暫く彼女を見つめていたが、
やがてその視線をかえでの方へと向けてふと呟く。視線の先の人物は酒のせいで頬を紅潮させたまま、
カンナと同じように上機嫌な微笑みを浮かべ自らの握った割り箸を見つめていた。
するとそんなかえでの横に静かに座っていたマリアが、心配そうな面持ちで彼女に声を掛ける。
当人はその言葉にパタパタと手を振って何事か呟いていた。
彼女は恐らく『大丈夫だ』とでも言っているのだろう。すっかり酔っぱらった彼女が無茶苦茶な『命令』をしない
ようにと、マリアに忠告された為に。

「いや、酔っぱらってる方がおもろいやんか。いままでありきたりなもんばっかやったから、ここは一発決めて
もらわんとなぁ」
 
すみれと同じようにかえでに視線を送っていた紅蘭が、ふとすみれに声を掛ける。
彼女の表情は明らかにこの状況を楽しんでおり、クジを引いた時からずっと緊張しているさくらとは真逆で
あった。

「ワタシも面白い方がいいでーす!」
 
するとそんな紅蘭に後ろから抱きついた織姫が、彼女と同じように楽しくて仕方が無いといった表情で言う。
参加するかどうかという段階で嫌がっていたすみれとしては、やはり早くこのくだらないゲームが終わって
欲しいと思っているらしい。彼女はしゃぐ後輩達の姿を見、そして深い溜息を吐いた。

「そ、それでかえでさん……命令は何なんですか?」
 
緊張で声を震わせたさくらが、おずおずとそうかえでに切り出す。
さすがにもう熊のぬいぐるみの真似をするのは真っ平であるらしい。

「んふふ~それはねぇ……」
 
かえでは勿体ぶるようにしてそう前置きの言葉を呟くと、唇にそっと自らの指を当てる。
酒が入った為に頬が紅潮しているからか、彼女がその薄い唇を軽く舐める仕草はとても艶めかしく映る。
 
かえでは、いや王様は少しだけ濡れたその唇で、その発言に耳をそばだてる臣下に向かいこんな命令を
下した。

「8番と3番で、ポッキーゲーム」
 
かえでがそう言って軽く首を傾げると、殆どのメンバーが一斉に自らが持つ割り箸を見る。
例外としてすっかり数字を覚えていたらしいマリアはかえでの言動にぴくりと眉を動かし、同じ状況なのだろう
レニは無表情のままじっとかえでを見つめていた。

「な……」
 
一瞬の無音の中、うめき声にも似た声が辺りに響く。
それに自分のものだけでなく大神の箸をも覗き込んでいたさくらは顔を上げ、その他のメンバーもまた
その声の方に視線を遣る。
そして殆どの視線が絶望とも取れる表情をしたメンバーに向けられた時、もうひとつの声が部屋中に
高らかに響き渡った。

「お、あたいじゃねぇか」

笑みまでも浮かべたカンナの表情に、一か所に集まった視線が一斉に彼女の方へと動く。
ひらひらと皆に見せた箸には、くっきりと数字の3が書かれていた。

「な、か、か……カンナさんと!?」
 
先程まで皆の視線を一身に集めていたすみれが、わなわなと震えながら呟く。
そんな彼女の手から畳へと滑り落ちたのは、8と書かれた割り箸。どうやら何の考えがあるわけでもない
酔っぱらいの王様がランダムに選んだ数字は、偶然にもメンバーの中で犬猿の仲とも喧嘩するほど仲のいい
コンビとも言われる、何かしら因縁の深い二人を引き当てたらしい。

「何でぇすみれかよ」
 
カンナはつまらないとでも言いたげな表情で立ち上がると、さくらが先程立った円陣の中央に素直に腰を
下ろした。勿論その前に、テーブルに無造作に置かれたままのポッキーの箱を手に取って。

「冗談じゃありませんわ! なんでわたくしがカンナさんとそんなことをしなければなりませんの。こんな命令
聞ける筈がありませんわ!」
 
だが素直なカンナに対して、すみれは命令を下したかえでをぎっと睨みつけるとヒステリックにそう叫んだ。
さくらやアイリスはその迫力に思わず目を閉じたものの、対するかえでは臆することなくじっとすみれを
見つめている。

「でも、王様の命令は絶対」
 
すると、今の今まで黙っていたレニがふと口を開いた。先程大神の命令で『三回回ってわん』を見事に
無表情のままでやってのけた彼女であったが、ルール違反ともとれるすみれの発言に狡さを感じたのかは
その表情からは分からない。

「たかがゲームのルールなんて、そんなものは知りませんわよ! 大体わたくしは最初からこんなくだらない
お遊びに参加する気なんて全く無かったのですから……却下できないのならわたくしは部屋に帰らせて
いただきま……」
 
だが、かえでへの助け舟とも取れるレニの言葉に全く耳を貸す様子は無いらしい。
すみれはその厳しい視線を今度は彼女へと向けてそう叫び席を立とうとした。
だが唐突に着ていた着物の袖を引かれそれが叶わなかったすみれは、せっかく浮かせた尻を再び畳の上へと
戻されてしまう。
またあまりに予想外のことであった為、その行為に驚いた彼女の言葉は歯切れの悪いところで途切れて
しまった。

その途端、彼女の眉間に深い皺が刻まれる。
元々お世辞にも気が長いとは言えない彼女の性格では、そんなことをされて気分を害さない筈が無い。
すみれは怒り心頭といった表情で自らの裾を未だ握り続けている相手の方へと視線を向ける。
そこには、彼女の纏う空気には場違いな柔らかな微笑みを浮かべるかえでの姿があった。

「駄目」
 
その表情に拍子抜けしたすみれよりも先に、かえでは先程までと変わらないゆっくりとした口調で呟く。
頬を赤らめ酔っぱらっていることは明白なのだが、何故かその言葉にすみれは何とも言えない圧力を感じた。

「なっ……何でわたくしが」
 
その声と表情に一瞬のうちに煮えたぎっていた筈の怒りを封じられた彼女は、最後の足掻きとばかりに
言葉を発したのだが、やはりかえでは彼女がルールを犯すことをよしとしないらしい。

「だぁめ」
 
変わらない笑みを浮かべたまま、先程よりももっと柔らかく、今にも溶けてしまいそうになる程の口調で
かえでは呟き、そして軽く首を傾げた。

「そうだよすみれ。さくらやレニだってちゃんと罰ゲームやったんだよ。そんな我儘言っちゃ駄目!」
「アイリスの言う通りでーす! すみれさんズルすぎまーす!」
 
かえでに続き不平を漏らしたのはアイリスと織姫。先程のレニといい、花組メンバーの年少組はどうやら規則に
厳しいようである。
尤も、最後に口を出した少女の思惑はまた別のところにあるのだろうが。彼女は何より好奇心が強く、面白
可笑しい出来事が大好きなのだから。

「な、わ、わたくしは……」
 
年下のメンバーからそこまで言われては流石に面子に関わるのか、すみれは一瞬たじろぐ。
すると今度は既に定位置についているカンナが声を上げた。

「いちいちうるせーなぁ。たかがゲームだろ? それに舞台で何回もやってんじゃねえか。今更何言ってんだよ」
「それとこれとは状況が違いますわ!」
 
尤もらしいカンナの言葉にすみれは声を上げる。
確かにカンナの言う通り、相手役となることが多い彼らは恋人役になることもザラにある。
たださくらとマリアのコンビとは趣向の違う作品が多い為、彼らよりもラブシーンを演じることは少ないのだが、
それでもキスシーンのひとつやふたつは演じたことのある間柄だ。
 
だがすみれの言う通り、この場は舞台の上では無い。
今この場に存在するのは恋をしている娘では無く、神埼すみれという個人。
そして相手は心奪われた男性では無く、桐島カンナという個人である。

いくら行為は同じとはいえ、すみれにとってみればそれに臨む心境には天と地ほどの差があるのだ。

「まあまあすみれはん。どうしても嫌やったらすぐ折ってまえばええんやし。それにあんまり考えすぎるんは……逆に怪しいで?」
 
やはり無理だと言おうとした時、ふと彼女の隣の紅蘭が口を開く。
その表情は最初こそすみれを宥めようとする意図が見て取れたのだが、徐々にそれはまた違うものへと変化
していった。

何か面白い噂話でも探しているかようなそれは、どこか彼女と同期の噂好きの少女を思い起こさせる。

「怪しいって?」
 
紅蘭の言わんとすることに気付いたすみれが思わず背筋を凍らせたのを尻目に、何も知らないアイリスが
首を傾げてそう問いかける。
そして紅蘭が彼女の方へと向き直ると、丸い眼鏡のレンズが明かりに反射してキラリと光った。

「そりゃあ、意識しすぎるっちゅーことはすみれはんがカンナはんのこむぐぐッ!」
「お、お黙りなさい!」
 
根も葉もないことを言い出そうとした紅蘭の口を、身を乗り出したすみれは慌ててその背後から塞ぐ。
彼女は酒を飲んでもいないのに顔を真っ赤に紅潮させていたのだが、そんな姿をアイリスは不思議そうな
表情で、また少し離れたところに座るマリアはやれやれといった風に見つめ、やがて後者は軽く溜息を吐いた。

「分かりましたわ、かえでさん。このトップスタア神埼すみれ、かなり癪ではございますが……その命令、
承ります」
 
暫く紅蘭と格闘をしていたすみれであったが、漸く彼女を解放するとかえでの方に真っ直ぐ向き直り、
そう声高らかに宣言する。
対するかえでは表情を変えないままでじっと彼女を見つめていたものの、その言葉にどこか満足そうな表情を
浮かべ深く頷いた。

「何でそういちいち大袈裟なんだよ、全く」 
 
過ぎてしまえば殆ど一瞬の出来事であるのだが、カンナは待ちくたびれたとでも言うようにそう吐き捨てる。
そしてどこか緊張した面持ちのすみれが目の前に座るのを見、手にした箱からポッキーを一本取り出して
口に咥えた。

「なんらよ、早く咥えおよ」
 
いざ座ったものの固まったままなかなか端を咥えようとしないすみれに業を煮やしたのか、カンナは催促する
ようにポッキーを揺らしながら言う。言葉が不鮮明なのは、ものを咥えているのだから仕方が無い。

「わ、分かっておりますわよ」
 
すみれはそう言い返すと深く息を吸い込み、意を決してその端を咥えた。
その瞬間に周りが一瞬ざわめいたのだが、彼女の耳にはもうそんな雑音など聞こえてはいない。
 
彼女の耳に響くのは、早鐘のように鳴り響く自らの鼓動。
そして少しずつ食べ進めているのであろう、相手の歯が硬い菓子を砕いてゆく音のみ。

音が近付いてくるにつれ鼓動は早くなり、また自らの体温が上がっていくのも感じる。
咥える瞬間に思わず目を閉じてしまったのだが、これではどの程度の距離間なのかが分からず、彼女は
少しだけ瞼を上げた。
 
彼女の目に、自分が思っていたよりも遥かに近くなっているカンナの端正な顔が映る。
その瞬間にすみれは、心臓が止まってしまうのではないかという程高鳴ったのを確かにその耳で聞いた。
 
 
カンナとの付き合いは長い。舞台上ではあるものの何度も抱きしめられ、ラブシーンを演じたことさえある。
また元来の彼女の性格故か、普段でも抱き上げられたり撫でられたりと、身体に触れられる機会が多かった。

その度にすみれは反発し、ぎゃあぎゃあと喚いた。
相手は普段であればすぐに言い返して他愛も無い喧嘩に発展するものの、いざという時には一切すみれの
言葉を聞かずただじっとその行為を続けていた。
 
そしてすみれは、そんな相手にいつも心の中で感謝していたのである。

思えばどうしても支えて欲しい時、すみれに一番欲しい言葉をくれるのは彼女であった。
そしてその度にすみれは、今と同じような胸の高鳴りを覚えるのだ。
 
がり、カンナが菓子を噛み砕き、また一歩すみれとの距離を縮める。
想像していたより長い睫毛が、すみれの目にはやけに美しく見えた。
 
がり、更にその距離は縮まる。
薄目であるとはいえもしもカンナが瞼を上げてしまったらと、一瞬すみれは恐怖する。
だがどうしても、彼女は再びめを閉じることができなかった。
 
がり、また縮まる。
カンナの吐息がすみれの顔に掛かるところまで距離が縮まった。
先程まで彼女が飲んでいたであろう強い酒の匂いが、ほんの少しだけすみれの鼻腔をくすぐる。
唇が触れ合うまであと数センチ。ここまで顔を近付けたのは、どれくらいぶりだろうか。
 
がり、あとほんの数ミリ。
もしも舞台の上の姿に自分が見とれていると言ったら、彼女はどんな反応をするだろうか。
 
 
彼女がそんなことを考えふと口元に笑みを浮かべたのと同時に、突然その視界は闇に閉ざされ、
やがて意識がふっと途切れる。

二人の唇の間に、あと一口の距離を残して。
 
 
パキ、という音を立てて菓子が折れると同時にすみれの身体は前のめりに倒れ、目の前のカンナは
驚きつつも反射的にその身体を受け止めた。

「おいっ、すみれどうし……あん?」
 
突然倒れたすみれにメンバーはざわめきすぐに大神とマリアが駆け寄るが、同じく緊迫した表情を浮かべて
いた筈のたカンナはすぐに緊張の糸を緩めた。

「ひっ……く」
 
駆け寄った二人が顔を覗きこんだのとほぼ同時に、すみれの口からしゃっくりの音が一つ漏れる。
すると大神は安堵の、そしてマリアは呆れたような表情を浮かべた。

「飲んで無ぇのに何で酔っぱらうんだよ!」
 
力の抜けたカンナの声に他のメンバーは何度か瞼を瞬かせたものの、やがて部屋の中には盛大な笑い声が
響いた。
 
 
*      *      * 
 

賑やかな宴会が終わり、後片付けも済んだ頃。それぞれが寝る支度を始めている中、未だに楽屋に
寝転がっている人物が一人。
それはゲームの最中に吐息から洩れた酒の匂いでひっくり返ったすみれではなく、その後飲み過ぎたせいで
床に寝そべってしまったかえでであった。
 
前者はとうにカンナが部屋へと送り届けており、恐らく今頃は身ぐるみを剥がされ着替えさせられている
頃だろう。せっかくの普段着が皺になっちゃ悪い、とカンナは安らかに眠るすみれの顔を見つめ、どこか優しい
表情を浮かべて言っていたのだから。
 
そして転がされたままのかえでは、漸く眠りから覚めたのかゆっくりと置きあがる。
恐らく彼女には、酒を飲んで以降の記憶など殆ど残ってはいないのだろう。
 
そんなかえでの耳に、ふとからからという軽い音が響く。
彼女がゆっくりとそちらに目を遣ると、そこではマリアが彼女に背を向けたまま、紙コップに差された割り箸の
束をくるくると掻きまわしていた。

それは、宴会の最中に使った王様ゲームのくじである。
どうやら片付けてしまおうとそこに置いたまま、忘れられてしまったらしい。
 
かえでがじっと見つめているのを知ってか知らずか、マリアは無言でその中の一本を引く。
彼女が引いたのは、ゲームでかえでが引いたのと同じ王冠の書かれたものであった。

「さて、どうしましょうか……かえでさん」
 
唐突に名前を呼ばれ、かえでははっと我に返る。
すると先程まで背を向けていたマリアが、ゆっくりと彼女の方を向いた。
そして王様である印を持ったまま、ゆっくりと彼女に近づいてくる。
 
やがて彼女のすぐ傍にしゃがみ込んだマリアは、手に持っていた割り箸でかえでの頬をつう、と撫でた。
硬い木の感触に思わず目を閉じたかえでが再び瞼を上げると、マリアは笑みを浮かべて今度は同じ場所を
自らの指でなぞる。
そして印のついた割り箸で、柔らかくかえでの頬をぱちぱちと二度と叩いた。
 
王様の命令は絶対、それがこのゲームのルール。かえでは確かに、宴会の場でそう仲間達に言った。
今彼女の目の前に居る絶対的君主は、白く美しい頬をほんのりと淡いピンク色に染めている。

「私も大分、酔いが回ってきたみたいです」
 
マリアの言葉に、かえではふっと柔らかく微笑む。
どうやらこの王様の命令はとても一筋縄でいくようなものではなく、その上それに背くことは許されないらしい。
 
かえでが柔らかい表情のままで彼女を見つめると、相手はどこか含みのある笑顔でそれを迎え撃つ。
二人は暫く見つめ合うと、やがてどちらともなくその唇を重ね合った。
 
 
あれほど甘く漂っていた筈の酒の匂いはもうその残り香すらも感じさせず、静寂はやがて劇場内を
覆い始める。
そんな闇に包まれた場所に灯る淡い光に気付いた者は、そこで肌を重ねた二人以外に誰も居ないのだ。
 
+++++++++++++++
うん、多分太正時代にポッキーは無い。そしてきっと王様ゲームも無い(笑)
単にポッキーゲームをするカンすみと、乙女なすみれちゃんが書きたかっただけですごめんなさい。
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ご案内
こちらは、わとことくらゆきの二人が運営する「サクラ大戦」の帝都ごった煮二次創作サイトです。

全体的に女性キャラ同士が非常に仲の良い描写が含まれること、更に製作物によってはキャラが崩壊していることがございますので、観覧の際はご注意下さるようお願い致します。

その上最近はCPが節操無し状態になっておりますので、より一層ご注意願います。

初めていらっしゃった方は、必ず「あばうと」のページをご覧下さい。

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