終わった、取り敢えず今日上げる分は無事に書き終えました……。
うん、何か色々間違ってるような気がするから所々直したいんですけど……その辺の編集はまた後で。
いやぁ、これまで上げた文章の誤字や言い回しなんかを編集しなおそうと思って全部印刷してあるんですけど
裏表印刷で百枚近くあるとなかなか手が出ない……。
しかし、こういう時文章っていうのは便利ですね。どこでも書けますし。
というわけで相方様、明日の記事も何とかなりそうです。
あ、そして今日のネタ!
ド田舎なうちの実家の近所で最大のショッピングモールに行ったら、こんなものが売っておりました。
えっと、ミカンではなくその品名に注目してください。
何もう、タクシーに続いてマリアさんってば! 何でそんなに一般世間にモテモテが浸透してるの!
しかしまあ、498円でマリ姫が4つも堪能できるならまあ満足かなと思います。
はい、もうどうしようもないですね私の頭!
『なばな』が『ばなな』に見えたりするんで、そろそろお迎えが来るかもしれません……。
それでは、本日の返信は特にありませんでしたので、バレンタインネタをお読みくださる方は
どうぞお進みくださいませ~。
昨日上げたモノの続きになっておりますので、そちらを読んだ後の方が楽しめるかもしれません。
(百合は含ませてないつもりですが、所々狙ったような描写が御座いますのでご注意ください。
あ、あと……ほんのり一部だけ大さく(大←さく?)かな? いや別にラブってる訳じゃ無いですけど……)
+++++++++++++++
(以下2月13日の話の続きになります。)
『織姫のちょこれいと』
【3.カンナの場合】
その時、カンナは食堂で山のように積まれたチョコを食べていた。
色や形は様々なものであるものの、山積みにされているものは全てチョコレイト。
端からその光景を見れば、胃腸の弱い者ならもたれてしまうかもしれない。
それもその筈で、バレンタインに男役のトップに次ぐ量の贈り物を受け取るカンナであるが、実は
チョコレイトを貰う数ならば花組で最も多いのが彼女なのである。
何故単純な物量ならば劣っているはずの彼女が、バレンタインのプレゼントの主流であるそれを貰う
数が多いのか。
その理由は、バレンタインの贈り物を花組で一番の量を貰うマリアと、次点のカンナの贈り主の層が
実は全く違うことにある。
前者の場合大半が若い女性からのものであるのに対し、後者は幼い子供からのものが多い。
これはそのまま彼女達個別のファン層の比率に反映されるのだが、それに伴って貰うプレゼントの内容も
違ってくる。
若い女性のファンが多いマリアへの贈り物は、他のファンとは被らず自分だけのものを贈りたいと思う者が
多いのか、チョコだけでなく花束や小物、アクセサリーなどバラエティに富んでいた。
それに対し、『憧れているヒーローにプレゼントをしたい』と良く言えば純粋、そうでなければ単純な想いで
贈り物をしている者が多いカンナのファンは、その内容もオーソドックスにチョコレイトが多い。
その為毎年この時期になると、カンナの主食はほぼチョコレイトになるといってもよいくらいなのである。
そして今年も、カンナはファンに貰ったチョコレイトを律義に全て食べていた。
時折添えられている手紙やカード、似顔絵に頬を緩ませながら。
「カンナさ~ん!」
そんな彼女がまた一箱チョコの入った箱を開けた時、ふと甲高い声が食堂に響いた。
カンナがある程度声の主を予測しながら入口の方に目をやると、彼女の予想通りの人物が
いつも一緒に居る仲間を従えて手を振っているのが視界に入る。
「お、やっと起きたのか織姫。相変わらず寝坊助だな。」
真っ白な歯を見せてニヤリと笑いながら、カンナは箱を開ける手を止めて言う。
確かに彼女の言うとおり時間はもう昼をとうに過ぎており、今の今まで眠っていた織姫は完全に
寝坊した形であることに間違いは無い。
だが彼女は、昨日のチョコレイト作りが長引いてしまったために就寝時間が普段よりずっと遅くなってしまった
という理由があった。
つまり彼女が眠っていた時間は、寝坊したとはいえ普段と変わらないのである。
最も、結局最後まで彼女に付き合わされた形のレニは、彼女と同じ時間に床に着いたものの、
いつもと同じ時間に起床していたのであるが。
しかし織姫は改めてカンナに寝坊を指摘される謂れはないて思っていたのか、不満そうに眉をつり上げ
強い口調でこう言い放った。
「あ~、カンナさんひっどいでーす! もうチョコあげませんよ!」
「お、織姫もくれるのか? そりゃ嬉しいな。ありがとよ。」
相手に人差し指を突きつけられたカンナであったが、彼女に怒鳴られたところで動じるような人物ではない。
そしてあろうことか彼女は、織姫が自分にチョコレイトを贈ろうとしていた事実だけを聞き入れ、
嬉しそうに礼を述べたのである。
「違うです、カンナさんにはあげないでーす!」
謝る様子を見せない相手にへそを曲げたのか、カンナのすぐ傍まで駆け寄ってきた織姫はそう言って、
プイッとそっぽを向く。
それとほぼ同時に彼女の後からゆっくりと歩いてきたレニが、ふとテーブルにあるチョコレイトの箱の
ひとつを手に取った。
「あれ、さっきくれるって言ったじゃねーか」
カンナはそんなレニの様子には気づかずに、目の前で不機嫌そうな顔をしている織姫に向かって
とぼけた表情を浮かべて言う。
しかし、織姫の表情は変わらない。
「そうでしたけどもうあげないでーす!」
「ちぇ、何だよ……」
どうやら完全にへそを曲げてしまったらしいと考えたカンナは口ではそう吐き捨てたものの、
その口元には笑みが浮かんでいる。
目の前で口をへの字に曲げている仲間のことも他の仲間と同じように妹のように思っている彼女は、
たとえ実物を貰えなくてもその気持ちだけで嬉しかったのだった。
「カンナ、それ今日貰ったチョコ?」
そんな心持ちのカンナに、今度はもう一人の妹が声をかける。
ふと彼女がそちらを見れば、先程まで彼女が開けようとしていたチョコレイトの箱を指して
レニが彼女を見下ろしていた。
「ん? ああ、そうだよ」
「ふふっ、アイリスが喜びそうだね。その形」
レニが微笑みながら視線を移したその箱には大きなテディベアが描かれており、中にあるチョコレイトもまた
それを模した形をしている。
彼女のその優しい笑顔は、いつもテディベアを抱いて大切にしている最年少のメンバーのことを
思い浮かべたからだろう。
するとそれにつられたように、カンナの口元にもレニと同じ笑みが浮かぶ。
「だろ? そう思ったんだけど、せっかくあたいにくれたモンだからさすがにあげられないと思ったんだけどな、
さっきアイリスがコレと同じチョコ貰ったって喜んでたんだ。
多分、同じヤツからだぜ?」
机上のチョコレイトを見つめながら、カンナはそう言ってレニを見る。
その脳裏には、午前中に彼女に飛び付いてきた少女の微笑みがあった。
「よかったね」
「ああ、嬉しそうにしてたからあたいまで嬉しくなっちまったよ」
その優しい表情に、レニもまた先程の笑みのままで答える。
するとカンナは、人差し指で鼻の下を擦って微笑んで答えた。
そして、その表情のままで机上のチョコレイトの山を見つめる。
「でも、毎年こんなに贈ってくれるんだ……嬉しいよなぁ」
彼女はしみじみとそう呟いて、テーブルの上に肘をついた。
そして贈り物のひとつを手に取ると、ふっと笑みをたたえて息を吐く。
カンナが沖縄から単身で帝劇を訪れた時には、まさか自分がこれ程までに人々から愛される
存在になるなど夢にも思っていなかった。
しかし実際に今、彼女は毎回の公演で多くのファンから喝采を浴びている。
それだけでも彼女にとって幸せなことに違いないのだが、更にこうして今自分に贈り物を送ってくれる人々が
存在するのだ。
それは彼女にとってこの上の無い程の幸福であり、またこれから先の活動への活力源でもある。
そんなことを思いながら幸せな表情を浮かべているカンナを、先程からずっとそっぽを向いていた織姫は
チラリと盗み見た。
そしてひとつ息を吐くと、彼女は手に持っていた鞄からひとつのチョコレイトを取り出してカンナの方へ
突き出す。
「じゃあカンナさん、私もカンナさんにあげますから、ありがたく思うがいいでーす」
「んあ? おめえ、あたいにはくれないんじゃなかったのかよ?」
突然目の前に現れたそれに、カンナはふと目を丸くして相手に問いかけた。
すると織姫はバツが悪そうに少しだけ頬を染めながらこう小さく吐き捨てる。
「……ありがたく思うんならいいでーす」
そうして再びそっぽを向いた織姫の手からチョコレイトを受けとると、カンナはにっこりと
優しい笑みを浮かべた。
「分かったよ。ありがとな、織姫」
チョコレイトを渡すとすぐに手を引っ込めて腕を組んだ織姫の頭を、カンナはその大きな手で優しく撫でる。
仲間から贈り物を手渡されるということもまた、彼女にとってファンからのそれと同じくらい
幸福なものなのであった。
+++++++++++++++
【4.大神の場合】
その時、大神一郎は悩んでいた。
「……」
無言のままで彼が見つめるのは、机に並んだ二つの包み。
そしてその少し先には、小振りの箱が幾つか並べられていた。
「……お、俺は一体どうすればいいんだ?」
椅子に座った大神は、唸るようにそう呟いて頭を抱える。依然として、表情は険しいまま。
「中尉さ~ん! チョコあげるでーす!」
すると突然、室内に甲高い声が響く。
ノックも無しに入ってきたのは、レニを連れた織姫。
しかし、慌てて机上の箱を一ヶ所に集めて隠すような素振りを見せた大神は、どうやら彼女を
別の人物だと思ったらしい。
「うわぁっ、違うんださくらく……」
心底驚いた様子で叫んだ後大神が振り返ると、きょとんとした顔の二人が彼を見つめていた。
「どうしたの、隊長?」
「な、なんだ……レニと織姫くんか」
不審そうなレニの言葉。
しかし大神は、彼女の問いには答えずにそう呟くと、ふうっと胸を撫で下ろす。
「何安心してるんですか? 変な人ですねー」
「いや、その……」
明らかに不審な動きを見せる大神に、織姫は首をかしげながら詰め寄ってみせた。
大神は慌てて後退りをしようとするが、そこには机、更にその向こうには壁があるためにそれ以上
進むことはできない。
織姫はドアの所にレニを残したままで彼の方へとゆっくりと近づいてくるが、彼から目と鼻の先の距離まで
近づいた所でふっと息を吐く。
どうやら、詰問することに飽きてしまったらしい。
「まあいいでーす。はい、中尉さんチョコ」
そう軽い調子で言うと、織姫は手に持っていた鞄の中からひとつの包みを取り出して大神の方へと
差し出した。
「あ、ありがとう……織姫くん。嬉しいよ」
目の前の少女の訝しげな視線は解かれている。
しかしその背後から注がれるレニの冷たい視線は、未だ彼の身体に現在進行形で突き刺さっていた。
彼女の視線をひしひしと感じながら、大神は織姫から差し出されたチョコレイトを受け取った。
「それはよかったでーす。じゃ、レニ行くですよ~!」
彼の反応に満足したのか織姫は満面の笑みを浮かべると、すぐに踵を返して再び部屋のドアの方へと
戻っていく。
「はいはい」
そうして彼女がそこに辿り着いたところで、レニもその言葉に頷き後を追っていった。
再び、その部屋には大神だけが残される。
「ああ、また……俺はどうすれば!」
先程手にした織姫のチョコレイトを右手に、そしてもう片方の手にはずっと見つめていた二つの箱を持って、
再び大神は唸るような声を上げた。
劇場でモギリを勤めている彼は、花組唯一の男性隊員であるといえども、他のメンバーのように沢山の
贈り物が届けられることはない。
貰えるとしても、他メンバーのファンである常連客から本命のついでに贈られる程度である。
だがそんな彼が今朝、同じ花組のメンバーのうちの二人からチョコレイトをプレゼントされたのだ。
そして更に、今度は織姫にまで……。
だからこそ、大神は悩んでいたのである。
バレンタインは女性が好きな相手に贈り物をする行事。
客からのもののような本命のついでという形ではなく、彼女達は大神個人にプレゼントをしたのである。
それは、つまり彼女達が自分を好いているということになるのではないか……そう大神は考え、
先程からずっと悩んでいたのであった。
彼女達の気持ちを、確かに大神は嬉しく思っている。
だが、この国の法律では妻として娶ることができるのはたった一人だけ。
つまり、今自分にプレゼントを贈った三人のうたの二人の想いを、彼は受け止めることができないのだ。
ああ、なんと、女性に好かれる男というのは辛い生き物なのだろうか……!
そこまで考え、大神は再び三つのチョコレイトを見た。
この中から一人を選ばなければいけない、それは彼にとって苦しい現実である。
だが、三人もの異性から想いを告げられるということは、なんという幸運なのだろう!
そう考えた大神は、チョコレイトを見つめながらニヤリと笑った。
「……どうしたんですか、大神さん?」
背後からの突然の声に、大神の背筋が凍る。
固まった表情のままでゆっくりと後を振り向けば、両手に綺麗に包まれた箱を持ったさくらが
にっこりと微笑んで彼を見上げていた。
「ひいっ……! さ、さくらく……!?」
「嬉しそうですねぇ、沢山頂いて」
首を絞められた鶏のような声で鳴いた大神の背後をチラリと見たさくらは、表情を変えずに更に言葉を続ける。
「いやその、こ、これは……」
大神は慌てて机上のプレゼントをかき集めると、強引に机の中へと押し込んだ。
「いいな~色んな人に好かれて」
じっとその様子を見つめていたさくらは、普段より幾ばくか高い声でそう呟く。
言葉だけならば可愛らしいものであるが、彼女の現在の雰囲気を肌で感じている大神にとって
それは恐怖以外の何物でもなかった。
さくらは一歩と大神の方へと近づき、再び彼の方を見上げる。
距離としてはほんの少しだけ近くなっただけであるのだが、それは大神を更に恐怖のどん底へと
突き落とす材料には充分であったらしい。
「私も、大神さんと恋人みたいになりたいな」
つま先立ちで必死に距離を取ろうとする大神に向かい、さくらはそう呟いて微笑む。
「さ、さくらくん、目が笑ってないよ……?」
すっかり震え上がった大神は、さくらの瞳の奥に潜む鬼の姿を確かに捉えていた。
「あれ、何か凄い声が聞こえませんでしたか?」
大神の部屋を出た後他のメンバーを探しながら廊下を歩いていた織姫の耳が、
ふと誰かの叫び声のような音を捉えた。
「……さあね」
それは確かにレニの耳にも届いていた筈なのだが、彼女は何かを悟ったようにそう呟いて
ため息を吐くのみで、織姫の問いに答えることは無かった。
【5.紅蘭の場合】
その時、紅蘭はじっと自らが今制作している機械を見つめていた。
彼女の手にはピンセットが握られ、それはゆっくりとすぐ手元にある配線を掴む。
「あとはこれを、こっちへ繋げれば……」
作品があと少しで完成するという胸の高鳴りをひしひしと感じながら、紅蘭はゆっくりとピンセットを
動かしていく。
やがてそれを目標の位置をかする辺りまで動かした時、バンッという音と共に高らかに声が響いた。
「紅蘭~! チョコあげるでー」
「今はアカンちょっと黙っとき!」
自らの声よりも更に大きな声を浴びせられた声の主は、呆然と紅蘭の背中を見つめる。
「織姫、紅蘭忙しそうだからもう行くよ」
後から顔を出したその連れが囁いて、声の主を外へと促す。
「う~ん、分かったでーす」
怒鳴られるかのような大声を浴びせられて気落ちしたのか、がっくりと肩を落とした声の主は、
連れの声に促されるままに部屋を出る。
「紅蘭、これ織姫から。ここに置いとくね」
すっかり意気消沈してしまった主の代わりに連れがそう囁いて、包みをひとつだけ入口すぐ
の机の上に乗せて扉を静かに閉めた。
「あと少しなんや……」
紅蘭の耳にその声は聞こえていたのだろうか。
しかし彼女は返事をすることは無く、慎重にピンセットを動かしてゆく。
そして、それはついに目的の位置に繋げられた。
紅蘭は暫くそれを見つめた後、満面の笑みを浮かべてかべて量手を上げる。
「いよっしゃー! これでバレンタインにチョコを貰えへん世の男性のための……」
彼女がそう叫んだ時、ふと先程繋げた配線の辺りから何やら黒い煙か上がり始める。
それは紅蘭の奮闘も虚しくやがて部屋中を覆っていき……そして。
大帝国劇場の一室から、今日も大きな爆発音が辺りに響き渡った。
【6.アイリスの場合】
その時、アイリスは中庭で今日届けられたクマの形をしたチョコレートを嬉しそうに眺めていた。
勿論、その手にはいつも抱えている熊のジャンポールが抱えられている。
幸い今日はもう春が訪れたかのような暖かい天候に恵まれ、その柔らかい日差しの中の彼女の笑顔は、
まるで一枚の絵画のようであった。
「アイリ~ス!」
ふと自らを呼ぶ声か響いたため、彼女は声のする方へと視線を向ける。
するとそこには、いつも彼女と一緒に遊んでいる二人の仲間の姿があった。
「あ、織姫。探してたんだよ?」
彼らに手を振ったアイリスはそう言って、肩に掛けていた鞄の中から綺麗な包みを取り出す。
そして先に彼女の方へと走ってきた織姫に向かい、手にしたそれを差し出した。
「はい、いつもありがとう」
感謝の言葉と共に送られたプレゼントに添えられたのは、まるで小さな花のような彼女の微笑み。
それにつられたのか、プレゼントを受け取った織姫の顔にも思わず笑みが溢れる。
手にした贈り物をしばしば織姫が見つめていた時、マイペースな速度で歩いてきたレニが
やっと彼女に追いついてきた。
「アイリスも私にくれるですか! じゃあお返しに私もあげるでーす!」
それとほぼ同時に感嘆の声をあげた織姫は今度は自らの鞄の中から包みを取り出し、レニに手を
振っていたアイリスの方へと差し出す。
「うわぁ、ありがとう。これ織姫が作ったの?」
「そうでーす」
「……」
嬉しそうに両手でそれを受け取ったアイリスに対して自慢気にふんぞり返った織姫に、
昨日の事実を知っているレニは無言で冷ややかな視線を送った。
まあ、彼女が受ける羽目になった受難を考えれば、そんな行動を取るのも無理はない。
だがそんな視線など織姫が気にする筈もなく、やがてレニは昨日からもう何度目かのため息を吐く。
そんな時、ふと織姫のチョコレイトをニコニコしながら眺めていたアイリスがこう口を開いた。
「織姫は自分で作ったんだ~。アイリスはね、この間レニと買いに行ってきたんだよ。」
自分が織姫に渡したプレゼントを指してアイリスがそう言うと、自分が今まで全く知らなかった情報に
織姫は目を見開く。
「レニとですかー?それなら私も誘ってくれればよかったのに、水くさいでーす!」
「だって、織姫シエスタしてたんだもん」
「起こしても起きなかったんだよ」
不満気な声を上げる織姫に、他の二人から次々とそう言葉がぶつけられた。
それもその筈で、彼らがマリアに誘われて買い物に出たその日、確かに二人は何度も部屋で眠っていた
織姫に声をかけたのである。
だがドアを叩いても部屋に入って身体を強く揺すっても彼女は全く起きる様子を見せず、あまつさえ耳元で
大きな声を出せば、寝言で煩いと不満を言われる始末。
遂に業を煮やしたレニが、もう置いていこうとアイリスを促したのだった。
「え~!」
今の今までそれを知らされていなかった織姫は、頬を膨らませながら二人に向かって声を上げる。
だが、さすがにもう今更何をいっても仕方がないと悟ったのか、彼女の不満は腕を組んでぷいと
そっぽを向くという行動だけに留まったのだった。
「でも、アイリス嬉しいな。今年はいつもより沢山チョコ貰っちゃった。」
そんな織姫を他所に、アイリスは彼女に貰ったチョコレイトとお気に入りのクマの形をしたそれの箱を
見つめながら言う。
可愛らしい演技で花組のマスコットのような位置付けのアイリスは、同じくらいの年でも男役の多い
レニよりも贈り物の数は毎年ぐっと少なかったのだ。
だが今年は手に持っているお気に入りのそれをはじめ、彼女には普段より多く贈り物が届けられたのである。
バレンタインの仕組みを頭では理解しながらもずっと子供心に少しだけ寂しい思いをしていたアイリスは、
今年のその出来事を素直に喜んでいた。
そして彼女は更に、こんな事を言い出したのである。
「あ、でも今年はマリア達だけじゃなくって、すみれも沢山貰ってたみたいだよ?」
「すみれも?」
思い出したかのように紡ぎ出されたアイリスの言葉に、レニは首をかしげる。
彼女から出た名前は花組の娘役のトップのもの。
マリアやカンナ程ではないが、毎年それに次ぐ量の贈り物が彼女にも送られてくる。
だが単純に数が多かっただけならともかく、アイリスには子供ながらに何か引っ掛かることがあるらしい。
彼女はレニと同じように首をかしげ、今朝見かけた年上の仲間の様子を思い出しながらこう付け加えた。
「うん。でも、何かみんなに隠してるみたい……どうしたんだろう?」
「……」
アイリスの言葉に、レニは表情を変えず黙って耳を傾ける。
そして何かを考えているような素振りを見せる彼女であったが、それは唐突に飛び込んできた
大きな声によって遮られた。
「……分かったでーす! レニ、早くすみれさんの部屋に行くです!」
「えっ?」
先程まで不満そうに頬を膨らませていた織姫が突然レニの肩を掴み、彼女は大きく目を見開く。
「どうしたの、織姫?」
アイリスもレニと同じようにその大きな瞳を思いきり見開いていたが、何やら酷く慌てている様子の
織姫の耳にその声は届いていないようであった。
「大変で~す! このままじゃ死人が出るでーす!」
「うわっ!」
更に物騒なことを叫んだ織姫は、驚いた表情のままのレニの手首を掴み一目散に劇場の中へと駆け出す。
「あ~、待ってよ織姫ぇ!」
凄い勢いで走り去っていく友人に向かい、アイリスが慌ててそう声をかけた。
しかし、織姫の勢いは止まらない。
「アイリスは来ちゃ駄目でーす! 子供には刺激が強すぎまーす!」
「あ~アイリス子供じゃないもーん!」
嵐のように去っていった織姫が残した最後の言葉に向かってアイリスは叫ぶが、既に消えてしまった
本人にもうそれは届かない。
こうして暫くの間、少女の甲高い声が柔らかい日差しの降り注ぐ中庭に響いていた。
+++++++++++++++
取り敢えず前編終了。
後編をお楽しみくださ……い……?
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