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えっと、タイトルの通りバレンタインのお話の最後になります。
もし読まれる方がいらっしゃいましたら、一昨日と昨日のネタを読んでからの方が楽しめるかもしれません。

……そして、もうひとつ。
携帯、とうとう巴里から戻れなくなりました(笑)

いや、何だかんだで巴里ライフを楽しんでいたんですよ。
それで最終日である昨日の夜に帝都へ戻ろうと思っていたんですよ。

……そしたら、向こうがまだ14日なのに期限切れを起こしやがりました。
あーあ、暫く帰れないやどうしようか。

まあ、私は面白いからいいんですけどね。グリと巴里を楽しんできます(にこ)

それでは3日間続いたバレンタインネタ最終幕、読まれる方はどうぞお進みくださいませ!
(モトホシ……うーん、モトホシ、なのかなぁ? まあそんな感じで普段よりベタベタしておりますので、危険を
 感じた方は回れ右の方向でよろしくお願いいたします)



+++++++++++++++

『織姫のちょこれいと』


【10.レニの場合】
 
その時、レニは自室で一人星空を見上げていた。

今日は朝のうちからずっと晴天が続いており、それは夜遅くなっても尚続いているらしい。
月の光を隠す雲の影も見当たらないため、満天の星の光はツンと透き通った空気を通り抜けて
まっすぐにレニの方へと降り注いでいた。

そんな夜空を暫く見つめていた彼女は、ふと棚の上にある時計に目を向ける。

せっかく星が綺麗な夜なのだからと灯りを点けていなかった彼女の部屋で黙々と時を告げていたそれは、
既にバレンタインの日が終わってしまっているという事をレニに伝えた。

彼女は暫くその文字盤を見つめると、やがて自らの腕を伸ばしてそれを手に取る。
すると何を思ったか彼女はそれを裏返し、時計の針が進む方向とは逆にくるくると螺を回し始めた。

そうしてやっと彼女の手から離れた時計が示した時間は、バレンタインの終わるきっかり十分前。


自らが狂わせた時計をもう一度見つめたレニは、何故かそれに向かって苦笑いを浮かべた。

その時、彼女の部屋の外から忙しい足音がバタバタと響いてくる。
それは徐々にレニの自室へと近づいてきたのだが、彼女は怯むこともなくただじっとドアを見つめていた。

彼女がそうしてほんの数刻、足音はレニの居る部屋の前でピタリと止み、今度はバンッと勢いよく
その扉が開かれる。

「レニ!」

そこには息を切らせた織姫が立ち、彼女は手に粗末な紙袋を持ってその部屋の主の名を呼んだ。

そして彼女はすぐに、こう言葉を付け加える。

「まだバレンタインですよね?」
「うん、そうみたいだね」

とうにバレンタインの時間は過ぎていたのだが、レニの部屋の時計はまだ午前零時を指してはいない。
それは勿論彼女が自らの手で時計を狂わせたからなのだが、レニはそんなことなどおくびにも出さずに
相手の問いに答えた。

「はあッ、間に合ったでーす。」

後ろ手にドアを閉めた織姫は見事騙されたのか、ほっと胸を撫で下ろして手にしていた紙袋を手渡す。

「ありがとう。」

レニがにっこりと微笑んでそう礼を述べると、開けっ放しであった袋の中身か彼女の目に飛び込んできた。

彼女がレニに手渡したのは、普通のチョコレイトでは無かった。
まるで棒付きキャンディのような形で棒の先端に突き刺さったフルーツを、薄くチョコレイトでコーティングした
ようなものとでも表現すべきだろうか。

とにもかくにも、レニは今まで一度もこのような形のチョコレイトを見たことが無かった。

「これ、織姫が作ったの?」

袋の中から一本を取り出して、レニはそう相手に問う。
彼女は実際にフルーツをこのような形で食べたことは無いのだが、見る分には食欲をそそるような
組み合わせである。

だが果たして普段料理をしない織姫が果たしてこんな物をひとりで作ることができたのかと、
レニは純粋に疑問に思ったのだった。

「厨房に、かえでさんが居たから一緒に作ったでーす。きっと食べ飽きてるだろうからって、
 ずっとこんなの作ってました」

レニの持っているチョコレイトを見つめながら、織姫はそう相手の問いに答える。

すると、レニの口からは思わず笑みが溢れた。

「ふふっ、かえでさんらしいね」

普段料理をしない織姫ならともかくそれを趣味とするかえでなら、普段の経験からこんな珍しいものを
作ることもあるだろう。
その上、今日がバレンタインであるということを見越したその配慮は、普段からメンバー全員を
見渡している彼女ならではのもの。

確かに未だ色々な人から貰ったチョコレイトを食べ終えていないレニにとっても、またかえでがそれを贈る
人物にとっても、それはとてもありがたい配慮であることに間違いはない。

だが微笑んでいるレニとは対照的に、それを渡した織姫の表情は暗い。

そんな昼間の勢いを何処かに置き忘れてしまったかのような彼女を、レニは何も言わずにただじっと
見つめていた。

「レニ……ごめんなさいでーす」

やがて紡がれた織姫の言葉は、彼女に対する謝罪。

「皆さんには、ちゃんとチョコをあげたのに……レニにはあげるの忘れてたでーす。」

ぽつぽつと紡がれる彼女の言葉はどんどんとか細いものへと変わっていき、やがて最後には殆ど
息混じりのものとなる。
そしてそれに比例するかのように、彼女の瞳うっすらと浮かんでいた涙の量はどんどんと増えていった。

「大好きな人なことには、変わりないのに」

消え入りそうな声で織姫が最後に絞り出したその言葉と同時に、彼女の瞳から大粒の涙が溢れ落ちる。
そうして一度流れてしまえばその決壊は早いもので、彼女が何度瞼を擦ってもそれは後から後から
流れ落ちてきた。

そんなふうに止めどなく流れる涙を、織姫はぐしぐしと拭き続ける。

そして一方のレニはといえば、ゆっくりと紡がれた相手の言葉何も言わずに黙って耳を傾けていたのだが、
彼女の口から言葉が途切れたことに気づくと、ふっとその口元に笑みを浮かべた。

そして彼女は相手のそれに少しだけ足りない背を目一杯伸ばをして、織姫の身体を抱きしめる。

その行為は、レニが今最も敬愛し感謝している女性が、いつも彼女にしてくれることであった。

感情というものを覚えてからというもの、彼女にも幾度と無く悲しみの感情が押し寄せてくることがある。
だが、表面上はそれを臆面にも出さないレニの感情を読み取って、その女性はいつも彼女を
抱きしめてくれるのだった。

彼女に抱きしめられる度、レニはその暖かさに救われる。
だからこそ今は彼女自身が、織姫にその暖かさを分け与えたいと願った故の行動であった。

「そんなに泣かなくてもいいよ、織姫。分かってるから」

優しく背中を撫でながら、レニは織姫に向かって囁く。

「レニぃ……」

すると織姫は安心したかのようににっこりと柔らかい笑みを浮かべ、レニの背中に自らの腕を廻すと、
低い位置にある肩にそっと首をもたげる。
 
そうして二人は星の光に照らされた部屋で、暫くの間静かに互いの暖かさを感じていた。
 

+++++++++++++++

 
「そうだ、織姫。もうひとつ忘れてたでしょう?」

暫くしてすっかり落ち着きを取り戻した織姫とふたりベッドの縁に腰かけていたレニは、
ふと立ち上がって彼女にそう問いかける。

「へ?」

目を丸くして首を傾げた織姫はずっと表情を変えないままで、机の中から何かを探りだした相手の後ろ姿を
じっと見つめていた。

「はい、僕からバレンタインのプレゼント」

そんな彼女に向かって、レニは振り返りざまに何かを差し出す。

「……」
「まだ、織姫にはあげてなかったから」

一瞬何が起こったのか分かっていなかった織姫であったが、レニの一言で全てを悟った。

織姫は確かにレニにチョコレイトを渡すのを忘れていたが、それと同時に彼女がアイリスと共に買いに
行ったというバレンタインの贈り物を自身が貰っていないことも忘れていたのである。

「あ~~~~むぐっ!」
「声が大きいよ、織姫」

その事実を知り叫び声を上げた織姫の口を、レニは慌てて塞いだ。
時間は既に午前零時を回っている。隣近所にいる仲間達の殆どは床についているだろう。

「あ、ありがとうです。すっかり忘れてました」

レニの行動にすぐに声を潜めた織姫は、にこにこと嬉しそうに笑いながら相手からプレゼントを受け取った。


それは、真っ青な紙に包まれた小さな箱。何が入っているのかは、開けてみるまで分からない。

「じゃ、一緒に食べようか。バレンタインはもう過ぎちゃったけど」

自らも織姫に貰ったチョコレイトを持って再びレニは彼女の横に腰かけると、相手にそんな提案をする。

「そうですね。私もレニのだけじゃなくて、それも食べてみたいでーす」

すると織姫は両手を上げてその誘いに乗ったのだが、その後に続いた言葉にレニがこう反論した。

「これ、僕にくれたんじゃなかったの?」

一本のチョコレイトを取り出したレニはそれを振りながら、織姫に向かって少しだけ意地の悪い
笑みを浮かべる。

「え~じゃあ私のもあげますから!」

すると、作ったのはいいが急いでいた為に食べることのできなかった織姫が、まだ開封していない箱を
掲げてそうレニに言った。

すると、相手はしれっとした表情でこう切り返す。

「僕、それこの間食べたから要らない」
「あ~! もうレニ今日優しいんだか意地悪なのか分かんないでーす!」

きっぱりとそう相手に切り捨てられた織姫は、そんな事を叫びながら不満そうに頬を膨らませた。

「……さあ、どっちだろうね」

そんな相手を見つめながら呟いたレニの顔が、淡い星の光に照らされる。
そこには、他の誰に向けるものよりも優しい笑みが浮かんでいた。


+++++++++++++++
できた。よかった……時間的には思い通りにいって……。

何だか全体的にモトホシを目指したくせに、マリ姫なんだかレニかえなんだか分からないようなものに
なりました。
そして最後は、まさかの前半シリアス! いや、誰がシリアスにするなんて考えたんだよ!

ですが、世にも珍しい(?)モトホシのシリアスを打ちつつ思ったこと。
いやぁ、純粋なのがこれほどまでに恥ずかしいとは……!

かえすみも大概甘すぎて恥ずかしかったですが、これはなんか、本当に恥ずかしかったですはい。
きっと、穢れた証拠ですね! もうだめですね! 眠いです!
そしてこんな夜中に食いモンが出てくる話を書くもんじゃありませんよ。
お腹空きました。私もチョコフォンデュ食べたいです。

……まあ、そんなことよりも、今年に入ってすみれちゃん関係とモトホシは打ったのに、未だにマリかえを
一切書いていないという。
だ、大丈夫でしょうか……私……。
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