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間に合った、フウ!
慣れないキャラを書くのは難しいですね……焦った。

拍手どうもありがとうございます! やるぜ、俺はやるぜッ!

ではでは、注意事項の後から続きをどうぞ~。


注意
・いつものように百合です。
・でもって今回はマリかえです。
・これは序盤の序盤の序盤であることを、心に留めておいて下さい。



+++++++++++++++


『私もあなたを探してる』

三人が食事を摂ったのは、人の多い大通りから少し外れた洋食屋。
裏通りとあって外に人気は少なかったものの、丁度お昼時ということもあり小さな店の中は人で
ごった返していた。
あまりの賑わいに思わず別の店に向かおうかとも考えた三人だったのだが、幸い客の回転が早かったことも
あり、思いの外早く食事にありつくことができたのである。

「もう、大神さんたら酷いんですよ!」

席に着いた途端、劇場で一戦を交えたさくらの大神に対する愚痴が、その口から堰を切ったように
流れ始めた。
やれ綺麗な女性に視線を奪われていた、やれ花組メンバーの誰それと任務でもないのに2人きりで
出かけていた、やれモギリをしている最中に女性に話しかけられそのご上の空になっていた等々。
 
しかしかえでの記憶が確かならば、大神とさくらは正式に男女の関係では無い筈。
確かに傍から見ている分には、どう考えても相思相愛にしか見えな微笑ましい片想い同士の関係のように
思われるのだが、遂にどちらかが想いを告げたというような話は聞いていない。

尤も花組の隊長に想いを寄せる隊員は他にも存在する為、事を順風満帆に勧めるのは困難である
とかえでは思う。
そして何より彼女の後輩はこの手のことに疎く、そして悲しい程鈍いのだ。
またそこが彼のよさとも言えるのであるが、このままでは軟派な隊長だと思われても仕方が無い。

「まあ、確かに大神君はちょっと優しすぎるところがあるけど……」
 
しかし流石に可哀想に思ったかえでは、責められている弟をフォローしようと口を開いた。
恐らく今回のことも彼の性格が災いした誤解にすぎないのは目に見えているのである。

「本当ですよ。それにすぐ鼻の下を伸ばすんだから」

しかしかえでの次の言葉よりも早くさくらは膨れっ面でそう呟き、ふんっと鼻を鳴らした。
元々素直で純粋な少女なのだが、如何せん恋愛ごとになると嫉妬深さが滲み出てしまうらしい。

そういう年頃なのかしら、とかえでは小さく息を吐いた。

それとほぼ同時に、さくらがふと彼女の方をじっと見つめ、やがて同じように溜息を吐く。

「はぁ……あたしも、かえでさんみたいに綺麗だったら良かったのにな」
「何言ってるの。さくらは私よりずっと魅力的じゃない」

続いて出た彼女の言葉に、かえではそう言葉を返した。

それはさくらに対する慰めではなく、彼女が心から思っていること。
すみれに続くトップスタアになるための稽古を怠らず、またそれにかまけて剣の修練を疎かにすることのない
努力家の面。
更に少ない休息の時間ですらも割いて劇場内の雑務を手伝う気遣いと優しさ。
そして今のような、恋多き少女時代らしい言動。……まあ、それは少々度が過ぎている感はあるのだが。

同じ女性であるかえで自身も羨ましいと思うほど、さくらは魅力的な一人の女性なのである。
それは恐らく、彼女以外の隊員皆が思っていることだろう。

「そんな、あたしなんてまだまだ。かえでさんやマリアさんの足元にも及びません」

かえでの言葉に少しだけ頬を染めたさくらは、片手を軽く振ってそう謙遜する。
すぐにそんな言葉が出る彼女の性格も、彼女の魅力のひとつなのだろう。
 
そうして、暫くの間視線を下げたさくらをかえでは微笑ましく見つめていたのだが、やがておずおずと視線を
かえでの方へと戻したさくらがふとこんな事を聞いてきた。

「でも……どうやったらそんなに大人っぽく、綺麗になれるんですか?」
「えっ……?」

真剣な眼差しで見つめられ、かえでは一瞬言葉に詰まる。
自らにそのような評価をつけてくれたことは素直に嬉しい。
だがかえで自身はさくらが評するような女性に自分がなっているとは思えないのである。

かえでがさくらくらいの歳の頃、彼女が目標としており、そして何よりも近い存在であったのは彼女の姉で
あった。
嫉妬する程に完璧であったその姿と今現在の自分の差は、誰が見ても明らかである。
 
自分は未だ、姉のような大人の女性になりきれていないのだ。

「そりゃあアレやで。女がいっちばん綺麗になるんは……」
 
返答に困ったかえでの代わりに、今の今まで二人の会話をさくらの隣で聞いていた紅蘭が口を挟む。
助け舟かとかえでは一瞬それを有難く思ったのだが、その表情を見た瞬間にそれが間違いであったことを
悟った。
 
やけに嬉しそうな微笑みと、どこかの噂好きを思い出すような口調。そういえば、彼らは同期だったか。
いずれにせよ、かえでにとって有益でないことを言い出すに違いない。

「なるのは?」
 
しかし視線をかえでの方からそちらに移したさくらは、質問をした手前やはり興味があるらしく、
オウム返しに彼女に問いかける。
ここまで真剣な表情をされては、もう止めることはできないだろう。
かえでは二人の様子を訝しげに見つめながら、自らの気持ちを抑える為にグラスの水を一口飲み干す。
しかしその行為は、見事に墓穴を掘る結果となったのであった。
 
紅蘭はさくらの方へ顔を近付け、にいっと悪戯な笑みを浮かべる。
そして小さな、しかしはっきりした声でこう囁いた。

「恋や」
 
その一言に、かえでは思わず口内の水をグラスの中に吹きだしそうになる。
すると気管に水が浸入し、彼女はゲホゲホと咳き込む羽目になってしまった。
先程、劇場内での紅蘭の言葉を借りるなら、かえでにとってそれは見事な『地雷』である。

「……その反応は図星やな」
 
そんなあまりにも露骨な彼女の反応では、傍から見ている誰もがそう思うに違いない。
身体を落ち着かせる為にグラスの残りの水を一気に飲み干したかえでは、無意識に目に浮かんだ涙を
拭きながら紅蘭の方を見た。

「なっ、いきなり何を言い出すのよ紅蘭。私は別にそんな人……」
「顔が真っ赤やで、かえではん」
 
相手の悪戯な笑みは更に深さを増し、かえでにはその眼鏡までもが不気味に輝いているように見える。
勿論、彼女の言っているのはハッタリではなく事実なのだろう。
自らの顔は見えずとも、かえではその首から上だけに真夏に戻ったような暑さを感じていたのだから。
 
沸騰してしまった自らの頭をフル回転させ、かえでは必死に弁解の言葉を考える。
しかし舞い上がった彼女は、こういう時には最も厄介なもう一人の相手の存在をすっかり忘れていた。

「かえでさん、今好きな人が居るんですか?」
 
きらきらと瞳を輝かているのであろうさくらの視線が、かえでに突き刺さる。

「う……」
 
再び言葉を失ったかえでは、すっかり重くなった首をゆっくりと彼女の方へと動かす。

「えっ、誰なんですか? もしかして、あたし達も知ってる人とか!」
「い、いや……」
 
予想通りの表情に、かえではどう返したものかと困惑した。
 
居ないのであれば、そのままの事実を言ってしまえばいい。
だが相手の言葉がなまじ合っているとなると、プライベートではすぐ顔に出てしまうかえでにとっては
少々厄介である。

「さっさと吐いた方が、楽になれるで~」
 
横からそう茶々を入れながら、先程から表情を変えていない紅蘭もかえでの視界に入って来る。
同い年の二人の期待を込めた視線を真っ向から受けたかえでは、必死に思考を巡らせながらもしばらく
返答に窮していた。
 
好きな人が居ない、筈が無い。
好きな人どころか、付き合っている人間が劇場内に存在する。
だがそれは軍事機密並の極秘情報であり、お互い以外に知っている人間はおらず、そして漏らす訳には
いかないのだ。
 
こういう状況でも顔色ひとつ変えずに対処できるのであろう恋人のことを、かえでは心底羨ましく思った。
最も、彼女の相手がそういう性格だからこそ、今まで二人の秘密が外部に漏れる事が無かったとも
言えるのだが。

「や、やぁね二人共。本当に今は誰も……」
 
スムーズにかわすことを諦めたかえでは、半ば強引に自分から話題を逸らすことにした。
あまりにも無理やりであるために、口から言葉が上手く出なかったことは仕方が無い。

だが、この年頃の少女の性というものであろうか。
かえでの口から否定の言葉が出ても、二人の少女は更に喰い下がる。

「今ってことは、前にはいらっしゃったんですか!」
「そういうことじゃなくて……」
「正直に言いや~、かえではん」
 
言い訳をしようと口を開けば、どちらかから突っ込まれる。
そんな応酬を繰り返し時間を稼ぐことで大分落ち着きを取り戻したかえでの頭は、ふとある違和感を
覚え始めた。
 
普段からこのテの話題に敏感なさくらはともかく、彼女と比べて疎い紅蘭までもがどうしてここまで
喰い下がるのか。
唐突な会話への乱入のことも考えると、これは何か裏があるに違いない。

「ところで、なんであなたがこんなにしつこく聞くのよ紅蘭? もしかして、あなたも恋に目覚めたのかしら」
 
質問の応酬の合間を縫って、ついにかえでは当人に向かいそう切り出した。

唐突な質問に紅蘭は目を丸くし、一瞬だけ頬を紅潮させる。
そしてさくらが視線を彼女へと移したところで、ふうっとひとつ息を吐いた。
どうやら自分が標的になるよりは、観念した方がよいと考えたのだろう。

「同期のよしみでな、ネタを提供せえってせがまれてるんや。かえではんに恋人、これは大スクープやで」
 
紅蘭の口から出た『同期』の言葉に、かえでの脳裏に噂好きで知られる風組隊員の嬉しそうな表情が過る。
有益な情報をもたらしてくれることも多いのだが、如何せん自らのプライベートには触れられたくないものだ。

「人の恋路をネタにしないの、全く。はい、この話はおしまい!」
「え~!」
「そんな、かえでさんのいけずぅ~!」
 
紅蘭への追求に加えて自身へのそれをも強制的に終わらせたかえでに、二人は不満の声を漏らす。
かえで自身二人の気持ちは分からなくもない為可哀想な気もしないでもないのだが、それでも漏らすことの
できない秘密というものはあるのだ。

「ほら、もう料理が運ばれてくるから。さっさと食べないとホントに冷めちゃうわよ」
 
物足りなさを隠さない二人を前にしたかえでに、意外なところから救いの手が差し伸べられる。
暫くぶりの食欲には堪らない香りの漂うその手を、彼女は遠慮なく掴むことにした。
 
次々と並べられる料理は、お昼にしては少し量が多いように思われるのだが、ずっとお預けをくらっていた
かえでの腹の虫はそれを大いに喜んだらしい。

耐えきれずに鳴いたその声が、店内の喧噪の中へと消えた。
 
 
 
食事の最中から店を出て浅草を目的無く歩いている間ずっと、さくらと紅蘭の口は様々な話題で
盛り上がっていた。
先程のような恋路の話、舞台や華撃団の話、仲間、ファッション、話題のラジヲ……彼らの話題は
多岐に渡っている。
 
そんな二人の話を聞きながら、かえでは自らの過去について思い出していた。
 
彼女達の年の頃、かえでは周りの殆どが年上で異性であるという世界で生きていた。
同じような年頃の同性が居なかった為、今の2人のような『らしい』話をしたことは殆どない。
せいせいたまに帰国した際に会う姉や、一時期生活を共にしていた組織の、比較的年齢が近かった隊員と
とったところだろうか。
だがどちらも、話す内容の殆どは仕事の話。
前者はかえで自身が早く姉に追いつきたいという気持ちから、後者はその相手が自分以上に組織の解散を
強く拒んだ正義感の強い人間であったから。
今になって思えば、なんと淋しい青春時代だろうか。

だからこそ二人のことを羨ましくない、といえば嘘になる。
もし自分が今とは違う人生を送っていたら……そう考えたことは何度もあったのだから。

「あ! ねえ紅蘭、このかんざし凄く可愛い」
 
現実から少しだけ逃避していたかえでを、甲高いさくらの声が虚勢的に連れ戻す。
その声に視線を向けた紅蘭と共に彼女が指す方を見れば、色とりどりのかんざしが並べられていた。

「ほんまやなぁ、ひとつ買うてこか」
 
さくらに誘われるように店に足を踏み入れた紅蘭の背中を見送ったかえでがふと辺りを見渡すと、
そこは見覚えのある雑貨店。
彼女と同じようにかんざしに目を奪われた恋人が、同じように店に入ろうと誘ったその場所であった。
 
かえでゆっくりと店に入ると、見覚えのある棚の前に立つ。
当時はそこにあった幾つかのかんざしが今はもう見当たらないのは、もう時間が経って売り切れてしまった
からだろう。
かくいう彼女もまた、その恋人にそのうちの一つを贈られた当人であるのだから。

『……あなたにも、私からプレゼントさせて』
 
包みを受け取り礼を述べた後、かえでは相手に向かってそう申し出た。
だが本人は自分には似合わないからと言ってそれをやんわりと断ると、時間が迫っていたこともあり
すぐに店を出てしまったのである。

「……似合うと、思うんだけど」
 
そのうちのひとつを手に取ったかえでは、脳裏に浮かんだ恋人の顔を思い出して思わず呟いた。
すぐに1人ではなかったことを思い出して口を噤んだのだが、連れの少女二人は自分達の買い物に夢中で
それに気付いてはいないようである。
 
ほっと胸を撫で下ろしたかえでは、目の前に並ぶかんざしのうちのひとつを手に取る。
丁寧に漆を塗られたそれを見つめながら、彼女はブロンドの短い髪にそれを挿した恋人を思い浮かべた。

「かえでさんもひとつどうですか? きっとお似合いですよ」
 
そんな彼女に気付いたのか、さくらがそう言いながら彼女のすぐ隣に立つ。
偶然にも、それはあの時の恋人と同じ台詞であった。

「ええ、それもいいかもしれないわね」
 
にっこりと微笑んで彼女が言葉を返したのは、さくらではなく秘密の恋人。
そうして再び手にしたかんざしに視線を移したかえでは、結局未だ逢えず仕舞いの彼女に、何故か無償に
会いたくなってしまったのである。

+++++++++++++++
かえでさんとラチェットが女の子らしい会話……したんだろうか(汗)
どちらかといえば姫の方が喋りやすそう。昴は謎すぎて、ねえ……。

さっくらさんのヤキモチはカンすみの喧嘩並みに、ごくごく日常的な風景だと思っとります。
それでは皆様、また明日。
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