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もりもり行きます、もりもり。
今回を抜いてあと3回、でしょうか……多分。

続いていることが奇跡に近い。が、頑張ります……!

ではでは、いつものように続きからどうぞ……!

注意
・いつものように百合です。
・でもって今回はマリかえです。誰が何と言おうとこれはマリかえです……!
・これは序盤の序盤の序盤であることを、心に留めておいて下さい。



+++++++++++++++


『私もあなたを探してる』

昼過ぎに劇場に戻ったかえでは、さくら達と別れた後すぐに恋人の姿を探した。
好んで外に出る性質では無い為普段よく見かける図書館や射撃場、果ては当人の部屋をも訪れたのだが、
何処にも姿を見つける事ができなかった。
すれ違った何人かにその所在を尋ねても、皆首を横に振るばかり。
だがいくら広いとはいえ隅から隅まで探しても見つからないのだから、どこかに出かけていると考えるのが
妥当というものである。
 
かえでは仕方なく自室の机の上にかんざしを置き、そのまま次回公演の資料を持ってサロンへと向かった。

休日にまで仕事とは淋しい話ではあるが、昼からの時間を持て余してしまうのには勿体無い。
しかしわざわざ自室から場所を変えたのは、閉じ籠ってデスクワークを行うのはあまりにも味気ないと
考えたから。
そして彼女の部屋のすぐ傍にあるサロンは眺望がよいこともあり、すみれがよくそこでティータイムの時間を
過ごしていた。彼女が普段通りの時間を劇場で過ごしていたとすれば、あと三十分もすれば現れるだろう。

1人きりで居るよりも、せっかくの休みくらいは誰かと一緒に過ごしていたい。
欲を言えば、大好きな誰かと。
 
そんな事を考えながら廊下を歩き、やがてサロンのすぐ近くまで来たかえでは、ふとそちらの方を見ると同時に
優しい笑みを浮かべた。
 
そこに居たのはサロンの住民と化しているすみれでは無く、また外出したと思われていた恋人では勿論無く、
現在の花組メンバーの中ではかえでと最も付き合いの長い少女の一人。

「レニ、隣に座ってもいいかしら?」
 
近づいてくるかえでの気配に気付き顔を上げた少女に、かえではそう問いかける。
サロンにはテーブルと椅子が何組か並べられており、いくらレニがその中でも一番大きなソファーに座って
いようと、わざわざその隣に腰を降ろす必要は無い。

しかし彼女は、敢えてそこに座りたかったのである。

「……問題無い」
 
するとレニは嫌な顔ひとつせずそう返事をし、中央から少し右の方へと座っている位置をずらす。
そうしてかえではその隣にゆっくりと腰を下ろすと、彼女が手にした本の表紙に視線を向けた。

「『罪と罰』ね」
 
タイトルを読み上げた瞬間に、かえでの脳裏にまた恋人の顔が過る。
何故ならこのタイトルは、読書好きの彼女の愛読書であったのだから。

「この間、マリアが読んでいたから。面白そうだと思って」
 
レニは淡々とそう呟くと、再び本の世界へと戻ったらしい。
その細かい文字を目で追いながら、次々とページを捲っていく。

「そう、マリアが……」
 
レニの口からでた恋人の名前を、かえでは噛みしめるように呟いた。
思えば、今日初めてその名前を口に出したような気がする。
 
彼女は、何処へ行ったのだろうか。

カンナとの稽古へ行く前、まだ薄暗いかえでの部屋のベッドの上で彼女は確かに寝息を立てていた。
かえではその髪を撫でた後、唇にキスを落として眠っている彼女と別れたきり、今日はすれ違って
さえもいない。
 
確かに朝食の時間には遅れた。それどころか、摂る事すらもできなかった。
その後の昼食はすっかり忘れていた約束を守って外出したものの、戻ってからずっとかえではマリアを
探して回った。
 
だが、彼女は何処にも居ないのである。
他の人間ならば何人か見かけたのだが、どうしても彼女だけが見当たらないのだ。
何処かへ行くという話も聞かなければ、誰かと出かけたという事後報告も聞かない。
というより、先程劇場を廻った際にかえでは殆どの人間を見かけた為、後者という可能性は考えにくい
のである。

となれば、一人でどこかへ? 何故? 何処に? 何の為に?
 
ペラペラと舞台資料を眺めながらも、かえでの頭の中は次々と出てくる謎でいっぱいになっていた。
当然、資料の内容など頭に入って来る筈も無い。
 
すると、かえでの身体が突然何かにぶつかったかのような軽い衝撃を受けて揺れる。
それによって現実に引き戻されたかえでは、取り落としそうになった資料を慌てて抑えた。
 
そしてゆっくりと衝撃を感じた方を見れば、気だるそうに瞼を半分だけ開けたレニの視線とかち合う。
ほんの少し前まで姿勢よくソファーに座り本を読んでいた筈の彼女は、いつの間にか船を漕ぎ始めていた
らしい。そして一瞬意識を失ったところで、かえでの方に寄りかかってきたというところだろう。

「レニ?」
「……あ、ごめんなさい」
 
かえでが声を掛けると、半開きであった彼女の瞼が完全に開く。
そして目を擦りながら身体を起こすと、膝の上に開いた本を閉じた。

「どうしたの? 昨日の夜、遅かったのかしら」
 
人前で滅多に居眠りなどすることが無い彼女のそんな様子を心配し、かえではそう問いかける。
顔色を見る体調が悪い様子は見られないのだが、それでも何か大事があってはいけないと、彼女はその額に
自らの手を当てた後、やがてその額を重ねた。
 
少々過保護のような気がしないでもないのだが、レニがずっと幼い頃から母親の代わりをしてきたのは
彼女である。心配するなという方が無理な話だ。

「ううん、かえでさんよりはずっと早く寝てるよ。身体にも特に問題はな……」
 
熱は無いと判断したかえでが自らの額を離すのと同時に、やけにゆっくりとした口調でレニは呟く。
しかしその途中で言葉が途切れたのは、抑えきれなかったのであろう欠伸のせいであった。
付き合いが長くとも余り見る事のなかったレニの姿に、かえではふっと優しい笑みを浮かべる。
自分の身体に異変があれば正直に訴える彼女のことだ、本人がそう言うのならば大事は無いのだろう。

「そんなに眠たいなら、少しだけ眠ったら?」
 
かえでは母親のような柔らかい笑みを浮かべてレニの癖のある銀色の髪を撫でると、自らの膝の上に
置いたままの資料をテーブルの上へと移した。

「えっ、でも……」
 
彼女の言わんとすることを理解したのか、レニは少しだけ頬を紅潮させて戸惑いの表情を見せる。
照れているのだろうが、かえでにとっては『何を今更』といったところだろうか。

「いいのよ、ほら」
 
包み込むようなかえでの笑顔に背中を抑えたのか、暫くもじもじとしていたレニはやがて意を決したらしく
ゆっくりと身体をソファーの上に横たえる。

そして頭を、かえでの膝の上に乗せた。
 
所謂膝枕の状態になると、かえではレニの髪をくしゃりと撫でる。
舞台で少年役を演じることが多い為に彼女の髪はずっと短いままであるが、もう少し伸ばしてやりたいと
かえでは思っていた。尤も、本人が了承すればの話である。
 
横になったまま、じっと彼女はかえでのされるがままに髪を撫でられていた。
そしてかえで自身もなにも言わず、ただその髪をずっと撫でていた。
少女の体温だけを感じながら。

「かえでさんって、暖かいね」
 
暫く柔らかい沈黙が続いた後、唐突にレニはそう呟いて仰向けになるように寝がえりをうつ。
相手の顔を見下ろす形になったかえでは髪を撫でる手を止めたのだが、レニは動くのを止めたかえでの手を
自ら両手でぎゅっと包んだ。
 
そしてきょとんとしたままのかえでをじっと見上げ、やがてにっこりと微笑む。
そんな彼女の表情に、思わずかえでは胸が熱くなるのを感じた。
 
囚われた彼女を救い、まるで姉妹か親子であるかのようにずっと一緒に過ごし始めてから数年。
ずっと感情というものを知らなかったレニは、この場所でいつしかそれを覚え、徐々に心を取り戻していった。
すると必然的に、少しずつではあるが彼女の表情も豊かなものになってゆく。
しかしこんな何気ない日常でさえ、彼女はこんなに安らかな笑顔を自然に浮かべるようになったのか。

そんな彼女にはもう、以前までの冷たい機械人間であった頃の面影は無い。

「一人で本を読んでいた時は、全然眠くなんてなかったんだ。でも、かえでさんが来たら途端に瞼が
重くなって……」
  
思わず目頭が熱くなるのを必死にこらえながら、かえでは半ば夢見心地になりつつあるレニの言葉ひとつ
ひとつに頷き、耳を傾けていた。

「なんだか凄く安心して、それで……どうして、だろ……」
 
やがて彼女はすっかり夢の世界の虜になったらしく、ゆっくりと瞼を閉じて安らかな寝息を立て始める。
かえでは暫くの間少女の顔に抑えきれなくなった涙が落ちる事の無いよう、服の袖が濡れることにも構わず
必死でそれを拭っていた。

「お休みなさい、レニ」
 
やがてすっかり鼻の頭の辺りが赤くなった頃、ようやく落ち着きを取り戻したかえでは小さな声でそう呟く。
そして額に掛かったプラチナブロンドの髪をかるく払うと、そこに軽い口づけを落とした。
 
どうかこの先もずっと、彼女に幸多かれ……と、そんな願いを込めて。

+++++++++++++++
もうこれで幕でいいような気がしてきた(笑)
見事にレニの大勝利! いやっふう!

という訳にもいきませんので、また明日……
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