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 どうやら本日9月19日は、このブログ開設2周年のようです。
皆様、こんな更新の少ない辺境ドマイナーブログをご贔屓頂き、本当にありがとうございます。

まさか2年も持つなんて、開設当時の私は思っておりませんでしたのことよ(笑)
いやはや、時が経つのは早いものでございます。

さてさてそんな記念すべき日でございますからには、何か記念となるブツを上げた方がいいのかなと
思いまして、早速相方様に伺いましたところ

「去年すっぽかしたテメェが全部やれやボケが!」(注:意訳)

と胸倉を掴まれて怒鳴られましたので、誠に恐縮ではございますがボスである相方様に変わりまして
この私めが拙い文章を上げさせて頂きます。

その内容は『続きから』以降ではございますが、実はまだ終わっておりません。
本日上げるものは本筋に序盤の序盤の序盤……くらいのものです。

何故完結しないのか、普通こういうものはその日限りでパァっと散るものだろう、長編マンドクセ等々、
様々な意見がございますでしょうが、ご勘弁願います。

一応、『ブログ開設記念日』らしいものであると思いますので……私的には! ええ、多分(汗)

まあその辺りは、分かる人だけニヤリと笑って下さいませ。ネタばらしは最終回に致します。
……できれば1日1話で上手く完結できたらと、目論んでおりますはい。

それでは普段通り下記の注意書きをお読み頂き、続きへとお進み下さいませ。

(拍手ももりもりありがとうございました! 何も更新してないのに沢山頂いて、なんだか申し訳ないとです・汗)

注意
・いつものように百合です。
・でもって今回はマリかえです。
・これは序盤の序盤の序盤であることを、心に留めておいて下さい。

 

+++++++++++++++


『私もあなたを探してる』

 


どこまでも真っ青な、雲ひとつない秋の空。
様子を伺うように顔を出したばかりだった太陽はもうすっかりその存在を誇張し始め、柔らかな朝日を
届けてくる。
雨が降るといわれる朝焼けが見られなかったところを見ると、どうやら今日はこの空のまま、美しい秋晴れの
一日となるだろう。
 
こんなにじっと空を見上げたのはどれくらいぶりかしら……と、今にも吸い込まれそうな青空を見ながら
帝国劇場副支配人であるかえでは思った。
日々の忙しさに追われ、季節の移り変わりを肌で感じることはあれど、その足音を聞くことはまず無い。
すっかり秋の表情を見せているこの空も、入道雲が眩しい夏の空から少しずつ色を変えていったのだろう。

だが、かえではすっかり表情を変えた今になって初めて、秋という季節を見つけた。
早朝特有の澄んだ空気は暖まった身体を冷やし、すっかり冷たくなった風は流れる汗を乾かしてゆく。
日本特有のムシムシとした重い空気に襲われる季節は、もうとうの昔に終わっていたのだ。

空も空気も、すっかり変わってしまってから気付いたという現実。
それはひとえに、余裕の無い日々を送っていたからということ。
確かにここ最近は忙しかったとはいえ、気持ちだけはもう少し余裕を持たないといけないわね……
そんなことを思いながらかえでが息を吐いた時、ふと彼女の耳に低い地鳴りのような音が響いた。
日頃よく聞くそれは、身体が栄養を欲しがり悲鳴を上げた音。
朝食を摂っていない為かえで自身も空腹ではあるが、それは彼女の体内から発せられたものではない。

「……あ、腹減ってたんだ」

頭の上の辺りから、そんな声がかえでの耳に聞こえる。
どうやら、先程の腹の虫の主であるらしい。
その虫の鳴き声は頭の上から聞こえたのだから恐らく間違いは無いだろう。

頭の上から腹の虫の声とはおかしな話であるかもしれないのだが、今のかえでと相手の体勢を考えれば
何ら不思議なことではない。
二人は体の大きさこそ違えど、全く同じ大の字で地面に寝転がっていたのだから。
しかも劇場の中庭で。色の少しだけ違う茶色の髪を突き合わせ、建物の間から覗く秋の空を見上げて。

「そっか、飯食って無ぇもんな……当たり前か」
「あら、カンナがご飯のこと忘れるなんて、どうしたの?」

それは独り言らしく、かえでが知っている普段の相手の声よりも小さい。
彼女はその名を呼びながら問いかけると、ごろりと寝返りをうってうつ伏せになる。
そして肘を地面につけてすぐ目前にあるカンナの方を見た。
かえでの言う通り誰よりも腹の虫が元気な彼女にとって、その言葉はそれはそれは珍しいものだった
のである。

「う~ん……何でだろうな? ひっさしぶりに本気で、人相手に組み手したからか?」

かえでの方に視線を向けずにカンナは答えると、よっとひとつ気合いを入れて体を起こす。
その動きに合わせてヒラヒラと舞い落ちる草葉を見たかえでもまた、慌てて同じように身を起こした。

相手の真似をして勢いで寝転がってしまったものの、あまり髪にゴミが付いてしまっても困る。
かえで自身も身なりに気を使う年頃の女性の一人であるのだから、お転婆だった子供の頃のようには
いかない。

「……そんなに久し振りだった?」

後ろ髪についた草葉を払いながら、かえでは再びカンナに問いかける。
服にまでその気を使わないのは、彼女が普段着ではなく合気道の鍛錬や試合をする際の袴姿であるから。
これは、汚れてナンボのものである。

普段から体術の鍛錬を積む際にはいつも、彼女はこの袴姿になっていた。
他の何よりも心が引き締まるその姿は、何よりも心がその技を左右する体術に最も相応しい服装といえよう。

「隊長達にたまに相手になって貰うんだけどよぉ、素手相手にあたいが本気出したら吹っ飛んじまう
じゃねえか。だからいつもは手加減してる」

久々に袴に袖を通したかえでの相手は、術の種類は違うものの主として体術を使うカンナ。
かえでが久々に身体を動かしたいからと彼女を朝練に誘ったのだが、隊員で唯一得物を扱わない彼女にも
そんな悩みがあったらしい。
たまに誰かを掴まえては一緒に組み手をしているところをよく見かけていた為、彼女なりに発散しているのだと
かえでは思っていた。
しかし確かに、最も得意とする術を取り去った相手に全力で向かっていくことは、空手家としての彼女の主義に
反するのだろう。

例え相手が男、その上屈強な軍人であったとしても。

「ふふっ、確かに油断してたとはいえレニに投げ飛ばされちゃった大神くんじゃ、本気のあなた相手だと
怪我しちゃうわね」
「うんにゃ、筋はいいんだけどなぁ……」

ふと噂に聞いた部下の姿を思い浮かべたかえでが苦笑すると、カンナが鼻の頭をかきながら同じように
微笑む。彼らが噂をしている人物は、今頃くしゃみのひとつでもしているに違いない。
カンナ曰く赴任当時よりもずっと腕は上がったらしいのだが、それでもその道を極めた彼女には
物足りないのだろう。

そんな彼女は微笑んだまま、ふとその優しい眼差しでかえでの瞳を真っ直ぐに見つめてきた。

「だから、楽しかったよ。あたいの拳をただ受けるだけじゃなくて、こっちか隙を見せりゃ投げ飛ばされるかも
しれねぇ……そんなハラハラする気持ち久し振りだったぜ。ありがとう、かえでさん」

彼女のその言葉通り、単なる朝の鍛錬にしては気合いの入ったものであったとかえでは今になって思う。

鋭く、そして早く打ち込まれるカンナの拳。
大きな身体から繰り出されているとは思えない程早いそれを、かえでは時にかわし、またある時は受け流す。そして息つく暇のない攻撃のほんの少しの隙を突いて、相手の身体に潜り込み投げようとする。

最初はカンナの拳を受けるだけ、そして自らの投げを受けて貰うだけということをお互いに繰り返していた
2人であったのだが、いつの間にか武闘家同士の試合さながらの攻防戦を繰り広げていた。
勿論相手が怪我をしないようにという最低限の加減はどうにか守られていたのだが、やがて一息吐いた
時には、気力を使い果たしてお互い座り込んでしまったのである。

敵の出現もなく平和な日々が続き、彼女はずっと物足りなさを感じていたのだろうか。
普段と同じ筈のその屈託のない微笑みが、かえでにはどこかすっきりしているように感じられた。

「どういたしまして。お陰で私も生傷だらけだけど」

力が入らないからと言って靴を脱いだ為に直に地面を踏んでいた足の裏からは、傷ができているらしく
ズキズキとかえでに痛みを訴えてくる。
日常生活にこそ支障は無いものの、自らの身体のあちこちからそんな声が響いており、暫くは止みそうに無い
だろうということが素人のかえでにも予想できた。

「へへっ、悪かったな。でもこっちだって余裕無かったんだぜ?」

そう言って頭をかくカンナの肘には、かえでに投げられた時についたのであろう小さな擦り傷がある。
よく見ればそんな傷は身体のいたるところにあり、彼女の言葉がお世辞ではなく本音であると分かる。

腕は鈍っていないようね……と思い少しだけ嬉しくなったかえでは、いつもは遥かに高いところにある
相手の頭を撫でた。

「別に怒って無いわよ。私も久し振りに思いっきり身体を動かせたわ。ありがとう、カンナ」

そんな心からのかえでの言葉に、カンナはにっこりと嬉しそうに笑う。
そんな相手の顔を見つめながらかえでが再び口を開こうとした時、つい先程聞いた地響きのような腹の虫の
声が再び辺りに響いた。

二人はお互いに顔を見合わせ、ほぼ同時に吹き出した。

「あ~、思いだしたら余計腹減ってきた! 飯だ飯!」

そうして暫く笑い合った後、カンナはそう叫んで勢いよく立ち上がる。
それに合わせてかえでも立ち上がると、意気揚々と劇場へと歩いて行く相手に向かってこう言葉を
投げ掛けた。

「ええ、そうしましょう。またお願いね、カンナ」
「おう、いつでも受けて立つぜ!」

駆け寄るかえでの方を振り返り、カンナは右手の拳を上げる。
かえでは彼女にもう一度「ありがとう」と伝え、その隣に並んで歩き始めた。
 

少しずつ強くなってゆく日差しと、髪を靡かせる爽やかな秋風。そして澄んだ朝の空気。
普段通りの一日を過ごしていたとしたら、かえでは恐らくどれも感じることは無かっただろう。

今日は休日、だからこそかえではこの朝を選んだ。
しかしいくら休日とはいえ、普段のそれならば今頃寝ぼけた頭で朝食を採っている頃で……とてもこんな
清々しい朝とはいえない。
徐々に明るくなってくる室内で瞼を開けてゆっくりと身体を起こし、隣で布団を被っているであろう恋人を
起こして――

ふとかえでの脳裏に過った端正な寝顔に、かえでは思わず自分の部屋の方を見上げた。

あまり目立たないとはいえ、あまり朝に強いとはいえない『彼女』はもう目覚めているだろうか。
いやもう流石に朝食を終え、日課の射撃や読書に励んでいるのだろうが……

 
「かえでさん」

そんなことを思いながら劇場内に足を踏み入れたかえでの耳に、よく見知った声が響く。
だが、それは彼女の脳裏に過った端正な寝顔の持ち主ではない。

「ん? 隊長じゃねえか。おはよ」

彼女より一瞬早くそちらに視線を向けたカンナが、声の主に向かって軽く右手を上げた。
それと同時に、かえでの視界にも大神の姿が映る。
普段と同じモギリ服に身を包んだ彼は、二人の方へと徐々に近づいて来た。

「ああ、おはよう。カンナも一緒だったのか」
「おはよう大神君、どうしたの?」

肩で息をしているのは、彼がかえでをあちこち探し回ったということ。
休日である今日、彼がそれほど急ぐのには何か理由があると考えたかえでは、挨拶もそこそこに問いかける。

「実はさっき次の舞台の脚本を書いて下さる先生がいらっしゃって、内容について話しがあると」

大神の答えに、かえではその訳を理解した。
花組の舞台を支える脚本家は一人ではなく、その内容に一番適している作家をそれぞれ迎えるという
形をとっている。
次回の舞台は西洋が舞台の恋愛ものなのだが、依頼をした作家がその世界でも頑固で
有名な人物だった。
その上花組の舞台脚本を依頼するのは初めてのことであり、馴染みの人物以上に失礼のないように
応対しなければならない。
つまりわざわざ足を運んで頂いた相手を、待たせる訳にはいかないということである。

「わかったわ。じゃあ着替えてすぐに行くから、支配人室で少しお待ち頂いてちょうだい」
「はいっ、分かりました」

かえでの言葉に、大神は敬礼で答えて再び走り出す。
次回公演は支配人である米田の意向で彼が全てを任されることとなったのだが、わざわざかえでを呼びに来る
ということは、よっぽどの問題があったということか。

「……そういう訳だから、悪いけど先にご飯食べてて」

様々な憶測が頭を過る中、かえではじっと二人の会話を聞いていたカンナに向かってそう詫びる。

「いや、あたいは別にいいんだけど……大丈夫かよかえでさん、朝から何も喰って無いんだろ?」

心配そうな面持ちでカンナは言うものの、たかが空腹で舞台を台無しにする訳にはいかない。

「まあ、お腹は空いてるけど……私が行かない訳にはいかないから仕方ないわ。
今日は支配人も自宅で
お休みだし」
「……無理すんなよ、皆が心配するぞ」

かえでの言葉にカンナはそれ以上追求すること無く、そう言って彼女の肩をポンと叩いた。

「ありがとう、肝に銘じておくわ」

彼女はその手をきゅっと握り自らの肩から下ろさせると、にっこりと微笑んで相手を見上げる。

「じゃ、またね」

かえではそう言って手を振ると、堅い表情であったカンナはやれやれといった様子でその手を振り返した。


そんな彼女から踵を返したかえでは、自室へと向かう道のりの中でふうっと大きなため息を吐いた。
どうやら彼女がその脳裏に浮かんだ人物に『おはよう』と言えるまでは、まだまだ時間がかかるようである。


+++++++++++++++
序盤の序盤の序盤。そう簡単に探し当てちゃ面白くありません。
では皆様また(多分)明日、お会い致しましょう~☆
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