自分を追い込むために早めに更新。久々にギリギリですよいやっほい!!
※注意※
・マリかえです
・約1年振りのくせして、妙に暗いです
その辺り、ご容赦頂ける方は先にお進みくださいませ。
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・約1年振りのくせして、妙に暗いです
その辺り、ご容赦頂ける方は先にお進みくださいませ。
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ついこの間、彼女と二人でお揃いの指輪を買った。
婚約の儀式の真似事をする子供のような、軽い気持ちで。
部屋に戻ってから彼女は、指輪と同じ色のチェーンにそれを通して私の首に掛け
「これでいつでも身に付けていられますね」
と言って、笑った。
その言葉が冗談なのかは分からなかったが、それ以来ずっと私はこのネックレスを首に掛けている。
「かえでおねーちゃん、見て見て!」
ある日のお昼過ぎ、劇場内の廊下を歩いていた私は甲高い声に呼び止められた。
反射的に振り向くと、庭に咲いていたのであろうシロツメクサの花かんむりをつけたアイリスが
私の方に駆け寄って来る。
私の方に駆け寄って来る。
「あら、可愛いわね。どうしたの?」
「マリアがね、お庭で作ってくれたの」
愛らしい姿の彼女に視線を合わせてしゃがみ込むと、彼女はにっこりと嬉しそうに微笑んで
私にそれを手渡した。
丁寧に織られたかんむりを見ると、幼い頃に姉や友達と競って作ったことを思い出す。
慣れた手つきで編んでゆく姉の真似をしてもなかなか上手くいかず、癇癪を起こしたこともあった。
それでも初めて綺麗に編むことができた時は、あまりにも嬉しくて花が枯れてしまってもずっと部屋の机の上に
飾っておいた記憶がある。
慣れた手つきで編んでゆく姉の真似をしてもなかなか上手くいかず、癇癪を起こしたこともあった。
それでも初めて綺麗に編むことができた時は、あまりにも嬉しくて花が枯れてしまってもずっと部屋の机の上に
飾っておいた記憶がある。
いつの間にか、誰かに捨てられてしまったけれど。
「懐かしいわね……」
「かえでお姉ちゃんも作れるの?」
「ええ。でも暫く作っていないから、こんなに上手くはできないかもしれないけど」
感慨に耽っていた私を現実に引き戻した幼い問いかけに、私は苦笑しながら答える。
最後に作ったのはもう何年前だろうか。作り方すらうろ覚えで、形にすらならない可能性が高い。
「はい。せっかく綺麗に作って貰ったんだから、大切にしないとね」
綺麗な金色の髪の上に再びその冠を乗せると、アイリスは返事をしながら深く頷いた。
彼女の返事に嘘が無いことを私は知っている。
志半ばで折られてしまった形になる花たちも、ずっと彼女に大切にされればある種本望だろう。
そんなことを勝手な思い込みをしながら立ち上がろうとした時、ふとアイリスが私の胸元の辺りを見て呟いた。
「かえでおねーちゃん、マリアと同じ首飾りしてるね」
「えっ……?」
彼女の言葉に、思わず私は着ていた服の襟の辺りを手で押さえた。
手には確かに、あの時の指輪の硬い感触がある。
「その指輪がついた首飾り、マリアもしてたよ。同じやつ」
アイリスの口ぶりから、どうやら見えていたことは間違い無いようだ。
チェーンはともかく指輪は服の裏側に隠れるような位置にある為、見られることはないと思っていた。
しかし、背の低いアイリスと話していた今は襟がたわんでいた為、それを上から見下ろしてしまえば
まる見えなのだろう。
「そう、それは……」
「……かえでさんも買われたんですか? 銀座のあの店で」
偶然ね、と言おうとした言葉を遮るようにマリアの声が降りてくる。
立ち上がりざまに振り返れば、動揺など全く見られない普段通りの彼女がすぐ傍まで来ていた。
「ええ……あなたも?」
私も彼女と同じように何食わぬ顔で問いかけ、チェーンを引いて指輪を見せる。
すると彼女もまた、わざわざ確認するかのように指輪を引き上げ、私に見せた。
あの時の指輪同士が、買ったとき以来再び顔を合わせる。
「はい。普段はあまりこういう物は買わないんですが、目を惹かれて。……偶然ですね」
自分の首にある指輪を見つめながら彼女は呟いた。
その表情からは、まさかそれが演技だとは到底思えない。さすがは役者であるといったところか。
その表情からは、まさかそれが演技だとは到底思えない。さすがは役者であるといったところか。
「そうよね、綺麗だものね。アイリスもそう思わない?」
その真似をするようにして私も笑顔を返すが、果たして上手く笑えているかどうか。
「うん。すっごく綺麗。アイリスも欲しいな~」
「ふふっ、アイリスも綺麗なかんむりしてるじゃない」
アイリスの目が上手くネックレスの方に向いたことにほっとしながらも、私はすぐに会話の矛先を
彼女の花冠へと向ける。
さすがにこれ以上、彼女に嘘をつき続けることは私にはできなかった。
「うん。マリアに教えてもらったから、今度は自分で作るんだ。そしたらかえでお姉ちゃんにもあげるね」
「ありがとう、嬉しいわ」
騙されているとは露知らず無邪気に微笑む少女に対する罪悪感が、1つの理由。
そして、もう1つは……。
「それでは、私達はそろそろ稽古の時間なので失礼します。行くわよ、アイリス」
あまりにもあっけらかんと、この「お揃い」が偶然であると言い切る彼女を、私が見ていられなかったから。
私たちの関係を、知られてはいけないことは分かっている。
だからこそ彼女が、このネックレスをお互いが持っていることがまるで本当に偶然であるかのように振舞った
ということも、頭では理解している。
ということも、頭では理解している。
だが、ほんの少し前まで狭い部屋の中で優しく包み込んでくれた存在に、その時とはまるで別人であるかの
ように振舞われたことが、淋しくないといえば嘘になる。
いや、もしかしたら……昨日の彼女は全くの別人で、今目の前に居る彼女の姿こそが、本来の彼女
なのかもしれない。
「またね、お姉ちゃん」
「ええ、2人とも頑張ってね」
マリアに促されて手を振るアイリスに向かい、私は軽く手を振る。
にっこりと微笑んで手を振り返す少女とは対照的に、彼女は形式的な軽い会釈をするのみ。
そして最後まで、彼女が後ろ姿を見守る私の方を振り返ることは無かった。
やがて二人の姿が、扉の向こうへと消える。
それを確認するのと同時に、一人廊下に残された私は胸元で揺れる指輪を外し、
まるで何かを隠すようにポケットにねじ込んだ。
まるで何かを隠すようにポケットにねじ込んだ。
そのまま、暫く時間が過ぎた。
どうやらその間に指輪は私のあまりに幼すぎる心に愛想を尽かしてしまったらしく、どこかに姿を消してしまった。
どうやらその間に指輪は私のあまりに幼すぎる心に愛想を尽かしてしまったらしく、どこかに姿を消してしまった。
私がそれに気づいた時には、もう遅すぎたのである。
すっかり荒れ果てた、自分の部屋の床の上。
探し疲れて寝転がったその場所で、私はもう二度とその姿を見ることは無いのだろうと悟った。
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「3.おそろいのネックレス」
『気付いて、気付かないで、』 (配布元:『勿忘草』様 )
指輪じゃん! というツッコミは無しの方向ということにして頂けると有難いです(汗)
すっかり荒れ果てた、自分の部屋の床の上。
探し疲れて寝転がったその場所で、私はもう二度とその姿を見ることは無いのだろうと悟った。
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