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皆様こんばんは。
本日はご存知の通り、マリアさんの誕生日でございます。

おめでとうマリアさん! 今日は色んな所でキミを祝ってくれると思うよ!

……という訳で、
間に合うか間に合わないかの瀬戸際でしたが、何とか間に合ったのでマリア誕生日の駄文を上げてみようと
思います。

しかし久々に打ったので、ただでさえ駄文だったのが更に劣化して大変なことに!
ごめんなさい……。


それでは、今回は取り急ぎここまで。
拍手のお返事は、申し訳ありませんがまた次の機会にということで……。

注意
・完全に百合風味(マリかえ)です。
・マリアさんがかえでさんにかなりメロメロです。

・別に凄い描写がある訳ではありませんが……何気に危ないかもしれません……!

まあ、マリアさんだから仕方ないよね……という広い心をお持ちの方は、どうぞ続きにお進みくださいませ。




+++++++++++++++


朝から降り続いていた雨は夕方を過ぎる頃にはすっきりと上がり、雲の切れ目から淡い月の光が夜の街を
照らし出している。
梅雨の長雨にげんなりしていた大帝国劇場の面々は、この時間ともなると既に大半が寝静まっていた。
梅雨の中休みが予想される明日の朝には、きっと彼らの表情にも笑顔が浮かぶことだろう。
 
そんな静かな劇場で、天井から降り注ぐ電灯の光と窓から淡く注がれる月のふたつの光に照らされながら、
副支配人藤枝かえではじっとドアの前に立っていた。
 
その胸には、洋酒の瓶が一本。銘柄からしてアルコール度数が強く、更に高級なものだと分かる。
かえではそれを腕に抱えたまま、手首の腕時計をじっと見つめていた。
やがてその長い方の針がカチリと動いたのと同時に、かえではこくりと頷いてその手をぐっと握る。

そんな彼女の脳裏には、数日前に交わされた目の前の部屋の主との会話が浮かんでいた。
 
 
+++++++++++++++

 
「マリア、今何か欲しいものある?」
 
朝早くから窓に打ち付ける雨の滴を見つめながらかえでは洋服に腕を通すと、同じ部屋にいる人物に
そう問いかける。

「……欲しいもの、ですか?」
 
柔肌に白いシーツを滑らせながらゆっくりと身体を起こした相手は、長い前髪をかき上げながら
ぼんやりと呟く。

「そう、何でもいいのよ」
 
そんな相手にチラリと目をやったかえでは、今度はスカートに足を通した。

いかにもさりげない様子を装っている彼女ではあるものの、唐突にそんな質問をしたのには訳があった。

あと一週間もすれば、年に一度しかない相手の誕生日がやってくる。
自らの欲を前面に出すことがない彼女が今一番欲しいものは何なのか……一月ほど前からかえではずっと
考えていたのだが、思い浮かぶのはありきたりなものばかり。
それでも相手は喜んでくれるのだろうが、かえでの脳裏に浮かんだものは皆他のメンバーが
相手に贈る手筈となっているのである。
 
彼女の趣味である料理に関するものは、アイリスやレニ、織姫が。
女性のたしなみであるアクセサリーや化粧品はすみれが。
酒をたしなむ彼女の好きな銘柄はカンナが、手料理はパーティーでさくらが。
 
思いついたもの全てに先約がつき八方塞がりとなったかえでには、もう本人に直接聞くという手しか
残っていなかった。
 
だからこそかえではただでさえ勘が鋭い相手に悟られないよう、慌ただしい早朝の着替えの合間に
相手に問いかけたのである。

そんなかえでの問いに、相手は暫し黙り込む。
内容が内容なだけにかえでが相手を急かすようなことはできず、自らもまた黙ってその返答を
待つしか無かった。
 
だが彼女が無言のままでふと相手に背を向けた時、ほぼ同時にその腕が後ろから彼女に絡み付く。

「さあ……何だと思いますか?」
 
唐突な行動に目を丸くしたかえでの耳元で、相手はそう囁いた。

「えっ……?」
「私が今欲しいもの、何だと思いますか?」
 
予想外の言葉に声を漏らしたかえでの耳元に、二度目はわざとらしく吐息を吹きかけ相手はそう問い返す。
どうやら、彼女はかえでにそれ以外の答えを教える気はないらしい。

「もう、意地悪ね」
 
それを悟ったかえではため息混じりにそう呟いて、自らの首元に顔を埋めた相手の誘いに乗り、
絡み付いてきた腕を優しく撫でる。
 
今日の天気は憂鬱な雨。
そんな日の劇場の朝は、普段よりずっと遅いのだから。
 
 
+++++++++++++++

  
結局、後にマリアが口を割ることはなく、かえでは暫しその問いに悩まされることとなった。

そして今日、彼女はその結果を携えマリアの部屋の前に立っている。

日付が彼女の記念日を指し示すまで、まさにあと数秒。
かえでは握った拳の甲をドアの方へと向け、まさにその瞬間に扉をノックしようとした時……
叩かれることの無かったそれが、部屋の内側から開かれる。
予想外の出来事に目を丸くしたかえでが我に帰った時には、既に彼女の身体はすっぽりと二本の腕の中に
収まっていた。

「やっぱり、知っていたのね……私が来ること」
 
相手の胸の中で何が起こったのかを悟ったかえでは、頬をすり寄せながら呟く。
日付の変わる瞬間にタイミングよくドアを開け自らを抱きしめるなど、最初からそれを狙っていたとしか
かえでには考えられなかった。

「いえ、偶然ですよ」 
 
しかしかえでのそんな憶測に柔らかい微笑みだけを返したマリアは、あくまでシラを切り通すらしい。
彼女は相手の言葉に唇の端を歪めてそう返すのみである。

「嘘。知ってたくせに……」
 
頬を相手の胸から離しその顔を見上げたかえでは、あくまで偶然を装うマリアに少々不機嫌そうな表情を
浮かべる。
しかし彼女は溜息混じりに「まあ、いいわ」と呟くと、両腕に抱えていた酒瓶を床に置き、自らの両腕を
相手の首へと廻した。

「記念日にあなたを驚かすことなんて、もうとっくの昔に諦めているもの」
 
自分より背の高い相手の顔に少しでも近づく為に、かえではぐっと背伸びをする。
それと同時に呟かれた言葉は彼女の何よりの本心であった。
 
出会ってからこれまで、何度か一緒に過ごしてきた年に1度の彼女の記念日。
勿論かえではパーティを計画する他のメンバーと同様に、毎年サプライズを狙っていた。
そして毎年彼女は狙い通りに心底驚いて見せていたのだが、かえでは長い付き合いの中で
それがフリであるということに感づいていた。
 
それを踏まえての言葉であったのだが、マリアはかえでを見下ろしたままその表情を変えることはない。
余裕の表情で、ただにっこりとかえでに微笑みかけるのみである。
 
相手の様子にがてかえではひとつ溜息を吐くと、相手の首に廻していた両腕を解きその両手で
マリアの頬を包んだ。
そして彼女の顔を自らの方へと近づけ、そのグリーンの双眸をじっと見つめて微笑む。

「それでも、誰よりも先にそれを祝うことだけは譲らないわ」
 
優しい微笑みから顔を出したのは、ほんの少しの独占欲。
普段は全く見せることの無い、かえで自身の身勝手な願望。

「誕生日おめでとう、マリア。生まれてきてくれて……ありがとう」
 
唇に吐息がかかる程の距離でかえではそう呟くと、自らの唇で相手のそれをゆっくりと塞ぐ。
それはマリアにとって世界中で最も早い、心からの祝福の言葉であった。
 
 
+++++++++++++++

 
「はい、これ」
 
招かれは先でかえでが最初にマリアに差し出したのは、抱えていた洋酒の瓶。
頻繁に酒好きと揶揄されるかえでほどではないが、マリアもまた他よりも酒好きの部類に入る人物である。
特に度の強い洋酒を好んで飲む傾向があり、かえでの差し出したそれは正に彼女の好みだといえるのだろう。

「私に……ですか?」
「まあ、ね。一緒に飲みましょう?」
 
ありがとう、と続くのだろうマリアの言葉を遮り、かえでは続けざまにこう釘を刺す。

「でも、これはあの時の『答え』じゃないから」
 
そう言って含みのある笑みを浮かべたかえでに、マリアは一瞬不思議そうに首を傾げる。
だがすぐにその意味せん事を把握したらしく、彼女もまたかえでと同じような笑みを浮かべた。

そして、こう相手に問いかける。

「分かりましたか?」
 
その言葉に、かえではゆっくりと首を振った。

「ううん、そんなの……分かる筈ないじゃない。私は、あなたじゃないもの」
 
自らの出した答えをゆっくりとした口調で呟きながら、かえではその手をマリアの頬へと伸ばし、
その指で彼女の白い頬を撫でる。
そしてその手首を掴もうとしたマリアの手をすり抜けた彼女は、相手の傍を離れベッドの上へ。
更に高低差が増した視線の高さを補うためお互いに顔を上げ下げし、再び二人は一瞬だけ離れた
視線を絡ませた。

お互いの姿が、それぞれ全く違う色をした瞳の中に映り込む。

「その代わりといっては何だけど、私は今日一日という時間をあなたにあげるわ」
 
かえでがゆっくりとした口調で話す間に、洋酒の瓶をテーブルに置いたマリアは、かえで姿を追いかけるように
一歩一歩そこへと近づく。

「時間……?」
 
そうして彼女がこう問いかけたのは、かえでの隣に腰を下ろした時であった。

「そう、時間」
 
ごく自然に肩を抱いてくるマリアの方へ、かえではそう答えながら自らもまた自然にその身体を寄せる。

「朝起きたらあなたを起こして、誰よりも早く『おはよう』を言うわ」
 
相手の温もりを感じながら、かえではそう言ってにっこりと微笑む。
その脳裏には勿論、梅雨の合間の晴れ間の日の光が眩しい朝の情景が浮かんでいた。

「お昼になったら一緒に食事をして、十時と三時にはお茶にしましょう。そこで沢山あなたと話すわ」
 
肩に置かれた手に自らの指を絡めながら、二人で紅茶をすする様子を思い浮かべる。

「そして夜には腕によりをかけて、あなたの為に料理をして……お風呂も、一緒に入りましょうか」
 
ゆっくりと紡がれる相手の言葉を聞いているマリアもまた相手と同じ情景を想像しているのか、
かえでと同じように優しい笑みを浮かべていた。
 
だがかえでが今挙げた光景は、誕生日という特別な日ではなくても見られる日常のそれと
殆ど変わらないもの。
 
共に夜を過ごさない日であっても最初に顔を合わせるのは図ったようにお互いであったし、
食事や休息の時間はほぼ同じな為顔を合わせる。
料理が趣味なかえではマリアに手料理を振舞うことがよくあったし、毎日風呂に入る時間も近いため
鉢合わせることはよくあった。
 
つまり、かえでは自らの「今日」をマリアに贈ったとはいえ、結局彼女は普段とあまり変わらない
日常を過ごすだけなのである。
 
それを知っているのか気づいてもいないのか、ここで言葉を止めたかえでは自らの肩を抱くマリアの方へと
視線を移す。

「……自分の中で限られた時間のうちの一日をあなたにあげるのよ? ……これが誕生日のプレゼントじゃ
 不満かしら?」
 
相手にそう問いかけながら、かえでは自らの口元に人差し指を軽く当てた。

「いいえ、全く。むしろ私には勿体無いくらいです」
 
首を軽く振ってその言葉に答えたマリアは、相手の額に自らのそれを当てる。
そしてゆっくりと、その美しい瞳を閉じた。
 
マリアの言葉に、偽りは無い。
 
彼女にとっての今一番の幸せは、かえでのいる日常。
朝目覚めて最初に見るのが彼女の笑顔。そして耳に入るのが彼女の声。
たったそれだけのことではあるが、マリアにとってのそれは特別。
 
だからこそ、自らの記念日に彼女が改めて『日常』を贈ってくれるということが、マリアにとっては最も嬉しい
贈り物なのであった。

「ありがとうございます、かえでさん」
 
かえでに向かってそう囁いて、マリアはその唇に軽い口づけを落とすと、相手の身体を抱きしめ
ゆっくりとベッドに横たえる。

「私の欲しいもの、分かっているじゃないですか……」
 
更に言葉を続けようとするマリアの唇にかえでが自らの指を当てそれを遮ると、相手はきょとんとした表情で
彼女を見下ろす。

「さあ、私はそこまで自惚れてはいないから」
 
そんなマリアに向かってかえではにっこりと微笑むと、その背に自らの腕を廻した。

「きっと一生、分からないままでしょうね」
 
そう呟いたかえでは自らを押し倒している相手の頭を抱えて引き寄せると、その唇にもう何度目かの
口づけを施す。
 
やがてそれは徐々に深いものへと変わり、そして……。
 
 
かえではこうして自らの贈り物に、少しだけ『色』を付けたのである。
だがその色が再び普段と同じものへと変わるのに、そう長い時間は掛からなかったことはいうまでもない。


+++++++++++++++
うちのマリアさんはかえでさんが居るだけで幸せ最高潮なのですよ! ということですはい。
ホント、心底惚れてるなぁ……。

最後の2行の裏の意味が分かった方、素晴らしき第六感をお持ちですね……!!
暗転の後は皆様のご想像にお任せしときます(笑)
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