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こちらはすみれ様誕生日かえすみバージョンです。
下にはマリすみバージョンもございますので、皆様の好みに合わせてお進みくださいませ。

(こちらも下記事同様ガチ百合になっております。ご注意ください)



+++++++++++++++


誕生日の日の夜、一人きりで居ることには慣れていた。
しかし今日だけは何故か、眠る気にはならなかった。
 

カチリと時計の針が鳴ったのと同時にすみれが壁にある時計を見ると、
長針と短針が丁度真上で重なっていた。
日付が変わった今日一月八日は、すみれがこの世に生を受けた日。つまり誕生日である。


だが、すみれはその事実を知ると同時に深いため息を吐き、すぐに時計から目を反らせた。
そして俯いたまま、じっと一点を見つめ動こうとはしない。


彼女の表情には、記念日を迎えた幸せな感情など微塵も感じられなかった。

そんな部屋の中に、コンコンと二つ硬い音が響く。

すみれに、それに答える様子はない。

「……入るわよ。」


鍵の開いていたドアを開け、入ってきたのはかえでであった。

「誰も、入っていいとは申しておりませんわよ。」


視線をかえでに合わせることなく、すみれは憎々しげにかえでに向かって言い放つ。
そんな機嫌の悪い様子の彼女は、人を寄せ付けないピリピリとした雰囲気を漂わせていた。


しかし当のかえではそれに臆すること無くすみれに近づくと、彼女の横に腰を下ろしてその肩を抱く。
すみれは一瞬だけ顔を上げ彼女を睨み付けたものの、すぐにまた下を向いて黙りを決めこんだらしい。

暫く、沈黙が辺りの空間を支配した。

「……誕生日、おめでとう。」


その沈黙を破ったのは、かえでの小さな祝福の言葉。
しかし彼女はすみれの方を見てはおらず、一方言われた本人も顔を上げようとはしない。

「ありがとうございます。」


しかしそれでもすみれは下を向いたままで、相手の囁きと同じくらいの小さな声で礼を述べる。

それを最後に、部屋にはまた沈黙が降りた。

どちらも言葉を発することの無い室内を、真夜中の月明かりが照らす。

かえでは暫くその月を見つめていたが、やがて視線を傍らのすみれに移すと、
同じようにその肩にある手を彼女の頭に移した。

「今日、傍に居られなくてごめんなさい。」


彼女は再び、小さく呟く。
すると傍らのすみれの身体が、微かに震えた。

「別に、気になんてしておりませんわよ。……仕方のない、ことですわ。」


すっかり枯渇しきってしまった喉から言葉を絞り出すかのように呟いたすみれは、
視線を真下からかえでがいる方とは逆の方へと移す。

「嘘、気にしてる。」


深いため息を吐きながら、かえではゆっくりとした口調で呟いた。

「してませんわよ。」


すると今度はすぐに、すみれが言葉を返す。
かえでは再び深いため息を吐くと、先程よりもはっきりとした口調で言葉を返した。

「してる、顔に書いてあるもの。」


そう彼女が言い切るより前に、すみれはずっと俯いたままであった顔を上げてかえでを睨み付ける。
そして半ば叫ぶようにして、相手にこう言い放った。

「してませんわよ!」


その言葉とほぼ同時に、かえでの唇の端が悪戯っぽい笑みの形に曲がる。

「してるわよ。もう、意地っ張りなんだから。」

やっと顔を上げたすみれの唇に、かえではひとつだけ軽い口付けを落とすと、その身体を強く抱きしめた。


しかし、普段ならばそんな唐突な行動にはすぐに抵抗する筈のすみれが、
かえでの胸に額を当てたまま動かない。


ただじっとその腕の中で、子供のように丸くなっていた。

「でもそんなにヘソを曲げる程、淋しがってるとは思わなかったわ。」


そんなすみれを見つめかえでは優しく微笑むと、彼女の髪に指を滑らせる。

「ごめんね、すみれ。……あなたの誕生日を一緒に祝ってあげられなくて。」

かえではそう相手の耳元で囁くと、自らの頬を相手のそれに擦り寄せたまま、
暫の間じっとその体温を感じていた。
 
 
「今日はね、お詫びに来たのよ。」

静かな部屋の空気を破ったのは、やはりかえでの言葉であった。
しかしすみれは未だ、かえでの胸から顔を上げようとはしない。

「私が、誰よりも先にあなたにプレゼントをあげるわ。すみれが今一番欲しいものを、ね。」

そんな相手の頬を指でなぞりながら、かえではゆっくりと言葉を紡ぐ。

「何が欲しいの、すみれ?」
「……」

かえでがそんな問いかけをした数秒後、やっとすみれは顔を上げる。
その顔は涙でぐちゃぐちゃにも、羞恥心で真っ赤にもなってはいない。


表面上は普段と変わらない『すみれ』の表情で、微笑んだままのかえでを
ただじっと見つめているだけであった。

「……それなら」

暫くの沈黙の間の後、すみれは小さく言葉を紡ぐ。


そして自分の心音を落ち着けるかのように何度か深呼吸を繰り返すと、すみれはかえでが
考えてもみなかったような贈り物を彼女に願った。

「沢山の口付けと一緒に、かえでさんの今夜を全て……私にくださいな。」

そこまでの言葉を紡いだ彼女は、とうとう羞恥心に耐えきれなかったのか、
顔を真っ赤にしてかえでから視線を反らす。

そして暫くの間の後に、言い捨てるかのようにこう言葉を付け加えた。

「それで今年の件は全て、水に流して差し上げますわよ。」


そう言って、すみれはフンと鼻を鳴らす。
途端に、ずっと呆然としたままのかえでがクスクスと笑いだした。

「な、何がおかしいんですの!」

クスクスからケタケタへと笑いの質を変えたかえでに向かい、すみれは顔を真っ赤にしたままで怒鳴りつける。

「だって、あなたがそんな風に言うとは……思わなく……!」

文字通り腹を抱えたかえでは、息も絶え絶えに笑いながらそう言うと、ベッドの上へと転がった。

「し、失礼ですわよかえでさ……きゃっ!」

そんなかえでの様子が不満で仕方がないすみれは、すぐに文句を言おうと口を開く。
だが彼女の言葉が終わるより早く、かえでは彼女の腕を掴んで自らの方へと引き倒した。

驚いた表情のままのすみれの唇は、かえでのそれによって再び塞がれる。

「キスは、何回してほしい?」


熱さを感じる前に離された唇で、かえではそう相手に問いかけた。

「……」
「黙ってちゃ、分からないわよ?」

答えられないすみれの唇は、そう呟いたかえでによって再び塞がれる。

「……っ狡い、ですわよ。知っている癖に。」


それが離れた途端に、すみれはかえでに向かってそう囁く。
するとかえでは再び悪戯っぽい笑みを浮かべがら、次の文句を紡ぐ前の相手の唇に触れた。

「さあ、知らないわよ……そんなこと。」


艶っぽいその言葉に誘われるように、すみれはかえでの方を見上げる。

その声と同じような妖しい笑みを浮かべたかえでは、最後にこう呟いて相手の唇に噛みついた。

「どうしたらあなたの気が晴れるのかなんて、私には分からないわ。」
 

 
その日の早朝、かえでは予定通りに劇場を後にした。
勿論、誕生日を迎えたすみれを置いて。

そんな彼女を見送るメンバーの中に、何食わぬ顔をしたすみれの姿があった。


彼女はその後ろ姿を見つめながら、他の誰にも分からないよう、
心の中でずっとかえでに手を振り続けていた。


+++++++++++++++
すみれちゃんお誕生日かえすみバージョン。当日出張に出ちゃうかえでさん。
打っているうちにドシリアスになりかけ、さすがに誕生日にそれは無いだろうと変更。
そしたら単なるいちゃいちゃ話になったという……。

いつかやりたいなぁ……かえすみの長編(言ってみただけ)
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