レニお誕生日おめでとう!
そしてメリークリスマスイヴひゃっほう!
調子がよければ続きます。
ええ調子がよければ…ハハッ……
※注意※
・レニかえなんだか何なんだか……
そしてメリークリスマスイヴひゃっほう!
調子がよければ続きます。
ええ調子がよければ…ハハッ……
※注意※
・レニかえなんだか何なんだか……
+++++++++++++++
新しい年がもうすぐそこまで迫った、ある冬の日の早朝。
人の声どころか鳥の囀りすらも聞こえない、とても静かな夜と朝の境目。
この季節独特のピンと張りつめた冷たい空気が漂う部屋で、朝日の目覚ましさえも頼らずにむくりと
起き上がったちいさな影がひとつ。
それは目を擦ることもなくぱっちりと両の瞼を開け、軽く辺りを見回すとふっとひとつ息を吐く。
やがて音ひとつ立てる事無くゆっくりとその場に立ち上がると、自らが横になっていた場所の上を踏み締めて
ベッドの上を歩いた後、ひょいと床へ飛び降りた。
「……んぁ~レニぃ、どこ行くですかぁ~……」
同時に響いた自らのものではない声に影はぴくりと眉を動かし、チラリとそちらを振り返る。
だが声の主が未だ深い眠りの中に居ることを確認したのか、すぐに視線を元に戻した。
そしてぺたぺたと床の上を数歩進み、壁際にある机の前でふと足を止める。
手探りで机上にあるものを確認し、やがてそれは自らの身に付けている服の上へ。
そしてもう片方が合流したかと思えば、暗闇の中で器用にボタンを外してゆく。
すっかり脱いでしまうまで、そう時間は掛からないだろう。
だが今の今までスムーズに動いていた手が、微かな音と同時に止まった。
金属と金属が触れ合うその聞きなれたその固い音は、部屋の外で誰かがドアを開けた音に違いない。
そして手を止めた本人は、その大きさだけでそれがどこから発せられたものなのかということをおおよそ
把握することができた。尤もその能力は、本人が望んで手に入れたものでは無いのではあるが。
やがて影は再びその手を動かし始める。心なしかその動作は先程よりもずっと早い。
あっという間にボタンを外し、上着を躊躇なく脱ぎ捨てる。すると布団の中の温かさが懐かしいらしいその
白い肌が、冬の空気にピクリと反乱を起こす。
だが影はそれを意に介する事も無くテキパキと身体を動かし、先程触れた自らの普段着に袖を通した。
やがて時計の秒針が三週もしないうちにすっかり服を着替えてしまうと、影は静かに扉を開けて真っ暗な
部屋を飛び出す。
暗闇からいきなり廊下の明かりに晒されたその青い瞳がその眩しさに眩むものの、それに気を取られ足を
止めることはない。
前に進みながら辺りを見回し自分以外の影が見当たらないことを確認すると、すぐ目の前の階段を
駆け降りる。
そして真っ直ぐな廊下の先に目を遣れば、肩の辺りで切り揃えられた見慣れた後ろ姿がひとつ。
ふと、その口元が緩む。果たして当人はそれに気付いているのだろうか。
「かえでさん!」
ある程度近付いたところで響かせた自らの声に、相手は驚いたような顔をしてこちらを振り返る。
だが声の主の姿をその瞳に映したのと同時に、それは柔らかい微笑みに変化した。
「あら……おはよう、レニ」
こうして自らの新しい一年を迎えたレニの一日は、そんな「らしくない」行動と大切な人の温かな笑顔で
始まったのである。
* * *
相変わらず日は昇ってはいないものの、徐々に目を覚ましつつあるそれが雲間から辺りを照らし始めた頃。
普段よりも少し早い時間ではあったのだが、レニは片方の手にリードを握り帝劇の扉を開けた。
その先は勿論、劇場内で飼われている幾つもの名前を持った白い犬に繋がっている。
「ふぅ、寒いわねぇ……もしかしたら今年はホワイトクリスマスかしら」
その後からもう一人、厚手のコートを羽織ったかえでが扉から顔を出す。室内以上に底冷えする外の空気に
一瞬だけ目を閉じたものの、すぐにその瞼を上げた彼女は空を見上げて言った。
その声音が妙にはずんでいるような気がし、レニは首を傾げる。
「雪が降っても、お客さん達は観に来てくれるかな」
今にも鼻歌が飛び出してきそうなかえでの方を見上げ、彼女はそう問いかける。
子供ならばまだしも、雪の日の外出は大人にとって億劫なもの。年始の頃に雪が積もった際、街の人々が
雪かきをしながら文句を言っていたのを彼女は聞いているし、路面の凍結は時折大事故に繋がることも
知っている。
だが何故、かえではこんなにも嬉しそうなのか。
「大丈夫よ、レニ。今日の雪だけはトクベツだから」
扉を閉めながらその問いに答えた相手は、表情を変えずにそう言ってレニのプラチナブロンドの髪を撫でる。
柔らかいその感触に、その青い瞳がほんの少しだけ見開かれた。
「満天の星空もいいけれど、クリスマスの雪はそれよりもずっとずっと幸せな気分にさせてくれるのよ。
……ふふっ、まるで魔法みたいね」
その手の感触と同じように柔らかい笑みを浮かべたかえでは、そんな事を言いながらゆっくりと階段を
下りていく。レニは触れられた場所に自らの手の平を触れさせると、彼女の後に続いた。
自らの髪の感触は、外の空気と同じく冷たい筈。
だがレニの手には、それがとても温かく感じる。
まるでかえでの手の温もりが未だそこにあるかのように。
そして彼女に触れられたのと同時に熱くなった、自らの胸にも。
クリスマスに降る雪が魔法だというのなら、ほんの少し触れただけでその温かさに包みこまれてしまう
かえでの手は、一体何だというのだろうか。
「あら、レニ。手袋はどうしたの?」
そんなことを考えながら階段を下りていると、既に石畳の地面に立っていたかえでが彼女に問いかける。
我に返ったレニは頭に置いた手を目の前に下ろして見つめると、やがて綱を握っているもう一方にも
同じように視線を落とす。
すると主の様子に気付いたのか、白い犬は石畳に両足を乗せたのと同時に自らの動きを止めた。
そして同じように足を止めた主を、じっと見上げる。
「急いでたから、部屋に忘れてきたみたい」
自分の方を見上げた愛犬に向かい柔らかな表情を浮かべたレニは、そう呟いてかえでを見つめた。
彼女が部屋を出る音を聞いた瞬間、慌てて着替えて部屋を飛び出した。
恐らく見に着けていたものは未だ床の上に転がっていることだろう。
誕生日だからと布団に潜りこんで来た織姫がもしも目覚めたとしたら、珍しいこともあるものだと首を傾げるに
違いない。尤も、彼女がそんなに早い時間に起きることなど万に一つも無いのだが。
だがレニはどうしても、かえでに接触する必要があったのである。
周りにあまり人が居ない場所で、できることならば二人きりで。
本当ならば余裕をもって実行する筈だったのだが、今日の公演に自身もかえでも振り回されてしまったこと、
そして何よりレニ自身が一歩前に踏み出すことを戸惑ってしまったお陰で結局当日を迎えてしまった。
自らが生まれた、この日。
過去の自分ならば、何の感慨も持たずに過ぎてしまった筈の日。
それは特別なものであり、この日を祝福されることの喜びを教えてくれたのは今の仲間達。
だが、そんなことを最初に教えてくれたのは――
「はい、じゃあこれをつけて」
レニの目の前に差し出された手には、毛糸で丁寧に編まれた片方の手袋。
それは彼女の記憶が確かならば、かえでが今年から身に着けはじめたものであった。
「ボクは大丈夫だから、心配しないで」
慌てて一歩身を引いたレニは、手をパタパタと振りながらやんわりとその申し出を断る。
手袋を忘れたのは自分なのだ。そのせいで相手にまで寒い思いをさせたくはない。
だがそう言った途端にかえでの手が伸び、彼女の手を強引にしかし柔らかく掴んだ。
先程まで手袋に包まれていたその温もりに、レニは再び目を見開く。
「何言ってるの。今日の主役はあなたなんだから、風邪をひかせる訳にはいかないわ。
ほら、そっちの手を出して」
まるでその熱を吸い取っているかのように、どんどんと火照ってくる自らの身体。それに戸惑ったレニは
言われるがまま、飼い犬のリードを掴んでいる方の手を相手へと差し出す。
するとかえではリードを自らの手に取り、空になったレニの白い手に手袋を被せた。
先程まで身に着けていた彼女の名残のおかげで、その内側は未だほんのりと温かい。
「でも、これじゃあかえでさんが……」
再び自らの手に戻ってきたリードを再び握ったレニは、そう言ってかえでの方を見上げる。
すると相手は一瞬きょとんとして表情を浮かべ、手袋が無くなった自らの手を見つめた。
そしてにっこりと、柔らかく微笑む。
「大丈夫よ、ほら」
かえでの表情と同じくらい柔らかな声音がレニの耳に響く。
それがまるでぬるま湯に浸かっているかのようにじんわりと沁み渡っていくのを感じていた時、ふと彼女の
手が何か温かいものに包まれた。
「こうすれば、寒くないでしょう?」
先程と同じ柔らかい声でそう呟いたかえでが、手袋をしていない方のレニの手を自らの素手で柔らかく
包み込んでいた。
それに気付いたレニはまた目を見開いてそれを見つめ、やがて彼女の瞳を見上げる。
二人のブルーとブラウンの視線がかち合ったのと同時に、片方は照れたように頬を染め、もう片方は普段と
変わらない温かな表情で微笑み合った。
「……ありがとう」
微かな声で、レニはそう感謝の言葉を述べる。
思えば初めてその言葉を言った相手も、もしかしたら彼女であったかもしれない。
「ふふっ、どういたしまして。さぁ、行きましょうか」
嬉しそうな表情を浮かべてそう言ったかえでは、繋いだ手を軽く振りながらゆっくりと歩を進める。
すると飽きることなくじっと座っていた飼い犬も立ちあがり、主と共に歩き出す。
そして彼女の手の温もりに量の手を包まれたレニは、すっかり火照ってしまった心の中である決意を
固めていた。
今の今まで口に出すことのできなかったそれは、他の誰でも無いかえでに背中を押され、紡がれる。
「あのね、かえでさん」
レニの言葉に、彼女はすぐに視線を動かす。
「なぁに?」
自らを見つめる視線の柔らかさが、高鳴る鼓動を解してくれる。
レニはずっと昔から、その目瞳が大好きだった。
いや、瞳だけではなく、かえでという存在が――
レニはその瞳を真っ直ぐに見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「……ひとつだけ、お願いがあるんだ」
たった一日だけの、甘えと言う名の我儘を。
+++++++++++++++
レニかえ……? う~ん、レニかえ??
そんな錯覚を起こしつつ、私的には親子ネタでございました。時期は2の後、大神クンが巴里に居る辺り。
レニを思いっきりかえでさんに甘えさせたくなったのです。
そしてまだ続くよ、と、言いたい。
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