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皆様こんばんは!
宣言通り、かえでさんの誕生日に戻って参りました(笑)

かえでさん、110歳のお誕生日おめでとうございます!
でもってなんと、来年はアイ・アイ・アイの年ですよ! 
こりゃ何か起こさないと、アイX4までは流石に生きてられないからなぁ……

そしてもう昨日になってしまいましたが、20日は美智恵さんのお誕生日。
ついったでもお話しましたが、いつも癒しをありがとうございます。
今年が美智恵さんにとって素敵な年でありますように!


さてさて、今回は先日の武道館&えどさくらネタとかえでさん誕生日ネタです。
前者はこのすぐ後、記憶が曖昧且つ大幅に偏っておりますが相方様にかえでさん分を託されたので
頑張りますよはい。

後者はいつも通りつづきから。
去年みたいに大々的にやる気力も時間も無かったので、今回はマリかえのみですよよよ。
……しかし最近新たな萌えやら武道館ネタやらで、書きたいものが膨大なのは事実!
うん、山場過ぎたら頑張る。何かマリア誕以降常に何かに追われてる気がするけどッ(涙)


それでは、以下イベントネタでございます。
箇条書きであんまり詳しく無くて申し訳ないので、詳しいレポは他所様で!
(その上かなり穿った見方もしちゃったりしてるので、その辺りは反転しております)

【武道館2】

・物販3時間!
午前11時前には現地に着いていたのですが、既にうっすらと列が。
流石に3時間前じゃそうでもないなぁ、こんなもんか……と思っていたら増える増える。
私らでも開始から30分くらいだったので、後の方はもっとだったのでしょう。
ご飯食べて戻ってきたら門の外まで列が連なっててびっくりした思い出。
ちなみに目当てのブロマイドとパンフ、サイリウム、カレンダー、ポスター2種は無事ゲット致しました。

・平日ですよね今日!?
平日な上にキャパも大きかったのでどれくらい埋まるのかと心配でしたが、それは杞憂でした。
見えた限りの席は2階までほぼ埋まっておりましたよ。
凄いなサクラ、そしてファン……この為に皆頑張ったのね! (私も当初諦めてたけど頑張ったのよ)

・花ゆめ、だと……?
もうそこらじゅうで話題になってますが、何か奏組とか新連載みたいですね。
何だろう、花ゆめだと乙女ゲとしか考えられないんだけど……。
はっ、まさかとうとうかえでさん主役にして花星組全員落とすという私得なストーリーが(違)

・帝都が揃った!
1曲目は『愛が香る頃に』
白黒レビュウの織姫が居る辺りはウルっときましたね。とうとう全員揃ったんだって。
『海神別荘』以来だって気付いたから、私は行こうと決めたんですから。
……しかし最後脇役含めた全員が舞台に出てきた際、なんとかえでさんが私達の位置から死角にッ!
くそうあのモニターめ! モニターめッ!!!

・すたーんだっぷ!
星組ライブの新曲がッ! これもノリがよくて好きなんですよねぇ……
相変わらず振り忘れそうになりましたが(笑)、12月のCD化が楽しみであります。

・これがレビュウ!
かえでさん白黒レビュウ服ですよ! さっき普段着だったから早替えですよ皆様!
でもってついに『ルンバ』初体験(笑)
何ですかあのタメけしからん! ええ勿論ニヤニヤが止まりませんでした。
そして脇のマリアとカンナがごちょごちょしてたんですが、マジで間違えそうになったのかしら?
見てる分にはとても面白かったのでよし。マリアさんナイスフォロー流石です。

・『こらッうさぎ!』
ハッキリ言います、この数秒のイベントだけで諭吉払ってヨカッタと思いました(笑)
うさぎよありがとう、ホントにありがとう。
かえでさんの服を切り刻んでくれてホントにありがとう! 大好きだ!
そして服を切られたかえでさんがマリアに美味しく頂かれる妄想しかしてなくて御免なさい。
いつかネタにする、絶対ネタにする……


・副司令ノート
このネタはもう、武道館後一番話題になりましたよね(笑)
『お酒が強い順』で「嘘よ、私が入ってないもの」とか言っちゃうかえでさんが素敵。
「えっとまず……マリア」「ハイッ!」 ええ勿論、私が反応しない訳が無い。
かえでさんがマリアって、マリアって言った!
でもって勢いよく返事しちゃうマリアのわんこっぷりがたまりませんたまりませんたまりません!
何だこのマリかえ! しかも何回か会話あったしね! ねえ何このマリかえ!
(よく訓練されているので、これだけでも十分美味しく頂けます。ありがとう公式)

そしてすみれさま、「一か八か組」おめでとうございます☆
前回否定されておりましたが、私は絶対イッちゃってるって信じておりました。
そんなあなたが大好きです。かえでさんに迫ってくれたし。

そして何より嬉しいのは、このネタのお陰で色んな方がW副司令にスポットを当ててくれたこと。
まさか後のオンリーであんなにかえでさんを見るとは……!
ついったでもラチェット&かえでさんの話題が出るなんて!

これはもう公式、頑張るしかないじゃありませんか!
端に二人で出てきた時『新曲かッ!』と身構えた私のこのときめきを、今こそ現実にッ!
そして私が前々からラチェかえに萌え始めていることは内緒である。

・歌謡ショウメドレー
相方様も挙げておりましたが『愛の花』は怖かった。演出凄い!
そしてマリアのW王子姿。忙しいですなやはし。
後ろの映像も雰囲気を出してくれましたし、このコーナーの演出は全体的に凄かった。
紅蜥蜴とか!紅蜥蜴とかねッ! 
私あの人と歌っちゃったよどうしよう流石本場凄いや!
姫もふつくしかったし……あそこばかりは織姫にサイリウム振ってました。
劇場版『海神別荘』もラチェさんに圧巻だったんですが、また、さっくらさんが、死角に。
うぬぬ、やはり南東1階は辛い(涙)

・Around the 青春!
かえでさんかんわいい……!
会場に呼びかけながら走り回り跳び回るかえでさんを追いかけるのに必死でしたよ私は!
勿論おーおー言ってたし、タオル振り回してましたが!
(あ、物販でタオルも買ったんですよ。勿論帝都で!)
この曲については色々あるようですが、私に関してはかえでさんが可愛かったからよし! 単純!

・花咲く乙女&夢のつづき
すみれ様のハモリ……! 
新愛だか何だかで、ここがマリアになっててショックを受けた私には最高でした。
やっぱりここは(元)トッッッップスタアでないと! マリアファンですがそう思いますハイ。

……でも、一言だけ、ひと言だけ。
せめてどっちかだけでも、かえでさんにも歌って欲しかったです。
演出上仕方ないんでしょうがね、1の曲でモトホシ入れなきゃだし後者は3都全員だし。

あ、でも『夢のつづき』の時にマリア&すみれ様が近くに来て振りを教えてくれたのには感動しました。
舞台の中心には目もくれず、お二方の方に釘付けになるここの人達(笑)
最後にはかえでさんもいらっしゃったのよ! 相方様ちゃんと気付いてた!?
私は袖しか見ておりませんでした(笑)


以上が武道館の大まかな感想でしょうか……見事に偏っておりますねぇ。
全体的には大満足。トークも面白かったですし、演出も素晴らしかったと思います。
それぞれの都市均等にスポットが当たっておりましたしね。他都市のキャラも面白かった!

まあ、かえでさんは実質3曲のみでしたが。
しかし彼女はあくまで副司令ですので、本当ならこれくらいの出番が妥当なのかなぁと思います。
今までが、出過ぎて、いたんだ、よ……。
その分仕切りまくっていましたからね、私はそれで十分ですよ。
……でも『これがレビュウ』はこれからもずっとかえでさん歌わせてあげて下さいね(涙)

サブキャラ程脇でもなく、ヒロイン達程中心的でも無い。
かえでさんのファンは大変でございます。(ラチェさんはまだヒロイン側な気がするんですがね)


【えどさくら】

イベントにて当スペースにお越し下さった皆様、本当にありがとうございました。
お陰様で初本ながら完売という、嬉しい結果でした。
寄稿したアンソロジーと合同本の売れ行きも好調のようで……凄いなぁサクラ。

私はほぼ売り子状態でスケブを頼まれる相方様を見守っておりましたが、まさかこんな辺境サイトの
文章が好きだと仰ってくれる方がいらっしゃるとは……!
金魚のフン的な心持ちでおりましたが、嬉しかったでございます。
いや、普段褒められた覚えがあんまり無いもので……ああどうすればいいのか!

差し入れもありがとうございました!
初サークル参加だったもので何にも準備してなかったのですが、次回は何か持って行きます。
水饅頭持って行けたらなぁ……くそう生菓子&期間限定で無けりゃ!

そして先程も述べましたが、副司令ノートネタにむふふ。
さあ流行れ流行れW副司令……!


以上、イベントネタでございました。

相方様の述べておりましたが、拍手の数も増えておりまして嬉しい限りでございます。
いらっしゃいませ! こ、こんな変なサイトでごめんなさい(土下座)

でもご新規さんも多い中、私が上げるかえでさん誕生日ネタはマリかえという……。
ご、ごご、ごめんなさい! 
だって4プレイした(のを最初から最後まで隣で見て口出ししてた)ら、マリアさんに物凄く
萌えてしまったのですもの……!

そんな訳で、続きからはマリかえの百合ネタにございます。
大丈夫な方のみ、お進み下さいませ。

注意
・マリかえのガチ百合です
・微妙に4のネタばれです(今更ですが)
・誕生日なのに誕生日っぽくない微妙なシリアスだったりします





+++++++++++++++


蒸気機関の謎の暴走から始まった一連の騒動に、帝国華撃団と巴里華撃団の活躍によってこの日終止符
が打たれた。黒幕であった大久保長安が彼らによって撃破された為帝都の人々の平和は約束されたものの、
敵によって破壊された街の被害は甚大。
特に蒸気エネルギーを送っていたミカサを使用することができなくなってしまった為、明かりひとつを点ける
ことも難しくなってしまった。

だが、幾度の危機を乗り越えてきた帝都の人々の表情は思いのほか明るいもの。
壊れてしまったものはまた作りなおせばいいと人々は口々に呟き、避難先から戻ってきた彼らは息つく
間もなく街の補修に取りかかる。思い出の詰まったもの達の無残な姿に表情を曇らせることはあれど、
次の瞬間に彼らの瞳には希望の光が輝いていた。

そんな帝都の人々に、ふたつの華撃団のメンバーは戦いの疲れを癒す間もなく手を差し伸べる。
まだ動くことのできる光武を使用して瓦礫の撤去を手伝う者、怪我をした人々を治療する者、働いている
人々の為に炊き出しをする者、それぞれの得意とする分野で彼らもまた帝都の復興に尽力していた。

やがて慌ただしいその一日が過ぎて、街中を暖かく包み込んでいた太陽が西の空に沈む。
街灯もすぐには復旧できる筈も無く、どうやら今宵は月と星の光だけが帝都を淡く照らすことになるとのこと。
その弱い光だけでは夜通しの作業も難しく、大人しく眠って朝が来るのを待つ方が賢明だと誰もが判断した。

こうして皆が眠ってしまったこの時間は、帝都は普段以上の深い静寂に包まれることとなった。
それは大帝国劇場でも同じことで、夜に出歩くことの多いロベリアすらも大人しく自らが泊まる部屋へと
戻っている。尤も彼女は、そこで酒でも煽っているのかもしれないが。

だがそんな静けさに包まれた劇場内で、ひとり部屋にも戻らず佇んでいる者がひとり。
彼女は屋根が崩れ隙間から夜空が覗いてしまっているサロンに立ち、じっとそれを見上げていた。

怪我をしてはいけないということで瓦礫こそ撤去されてはいるものの、復旧作業の邪魔になるからと
並べられていた椅子やテーブルは全て片付けられている。
その為ひどくがらんとしてしまったその空間は、被害の少なかった他の場所に比べどこか淋しい。
屋根さえ塞がればすぐに元通りになるとはいえ、サロンが最も居心地のよい場所だと言っていたすみれ
などは酷く気落ちした様子であった。

彼女はそんな場所に、かれこれ一時間程立ちつくしている。
皆が寝静まるのを見計らってここを訪れた彼女は地べたに座ることも動き回ることもせず、ただ真上から
月明かりの入るその場所に立ち、月と星の踊る夜空をじっと見つめ続けていた。

街を照らすのは夜空を彩る星と月のみ。人々の声どころか動物の鳴き声さえも殆ど聞こえない。
おまけに家具が片付けられた為にその空間には生活感というものが一切失われており、彼女はまるで
自身が世界中でたった一人残されてしまったかのように思えた。
勿論彼女はそれがただの錯覚であることを、きちんと理解しているのではあるが。

「……こんなところに、いらっしゃったんですか」

ふとそんなたった一人の世界に、彼女のものではない声が響く。
それに一瞬だけ彼女は肩をぴくりと反応させたが、視線をその声の主の方へ動かそうとはしない。

「いくら待っていても戻って来られないので、どこにいらっしゃるのかと思いました」

侵入者はそんなことを言いながら、ゆっくりと彼女の方へ近づいて来る。やがてそのすぐ隣で足を止めると、
彼女と同じように夜空を見上げた。
その唇が微かな声で「これは……」という驚愕の声を紡いだのは、その持ち主が初めてこの場所の惨状を
目撃したからだろう。瓦礫の撤去が終わるまで立ち入り禁止の令を敷いたのは、他でも無い彼女である。

「今日は疲れているんだから、自分の部屋でゆっくりした方がいいんじゃない?」

視線はしっかりと夜空を捉えたまま、意識を少しだけ相手に移し彼女はそう問いかける。
昨日の今頃、相手は愛機に乗り込み帝都で暴れ回る敵の真っ只中へと飛び出していったのだ。
この静けさからは想像できないような轟音と、人々の悲鳴の鳴り止まぬその場所に。

「いえ……こんな時だからこそ、私はあなたの傍に居たいんです」

柔らかな声で、相手はそう彼女の問いに答える。穏やかなそれがほんの少しだけ掠れて聞こえるのは、
戦いの間中ずっと大声で叫び続けていたからだろう。
自らの技を、率いた仲間を、そして信頼する隊長と指揮官達の名を。

「ふぅん、そう」

やけに久し振りに感じる相手の言葉に、彼女は素っ気ないとも取れるような短い返事だけを返す。
彼女は事件の後処理と、復興作業の陣頭指揮。相手は隊長をサポートしつつの復興作業。あの最終決戦の
後に彼らが直に言葉を交わしたのは今この瞬間が初めてのことである。

すると何ら変わりない懐かしいマリアの声音にかえでは無性に泣きたくなり、それを耐える為に奥歯を
ぐっと強く噛みしめた。
こうして彼女が黙ってしまうと、相手もまた新たな言葉を発しようとはしない。

二人の間に、暫し穏やかな沈黙が流れた。
風のひとつも吹かない穏やかな春の夜。
外を歩く人影も無い為、彼らの耳に届く音は何一つ無い。
本当の意味での、沈黙の時。

「終わったわね」

不意にそれを打ち破ったのは、せり上がって来る感情をどうにか堪えたかえでであった。
しかし彼女は未だマリアの方に視線を向けることは無く、じっと夜空を見つめ続けている。
恐らく相手の方からではその表情を伺い知ることはできないだろう。

「ええ、どうにか」

ひとつ息を吐いて、マリアが彼女の言葉に答える。
そちらからかえでの表情が見えないのだから、逆もまた然り。
溜息混じりに呟くその表情を、かえでは伺い知ることはできない。

「随分大きな被害を受けてしまったから、明日からは復興に大忙しね」

恐らく口元にほんの少しだけ笑みを浮かべているのではないか、彼女はそう相手の表情を予測しながら
続けて言葉を発する。政府が本格的に動き出せば、今日以上にかえでや華撃団の仕事は増えていくの
だろう。戦いから戻ってすぐの、今日以上に。

「はい。でも、きっと大丈夫……これまでもずっと、帝都は立ち直りましたから」
「勿論、必ず復活するわ。すぐに元通りよ。そしたら、『ああ、無情』の幕を上げないと」

柔らかいマリアの声音を待たずにかえではそう口を開き、二人の声が少しだけ重なる。
まるで何かを隠すように早口で口走ったかえでは一瞬しまったというふうに目を見開き、自らが言葉を発する
早さを少しずつ抑えていった。

そして横目で、チラリと相手の表情を見る。
すると視界の端にマリアの端正な、それでいて柔らかいその顔が移り込む。
その瞬間に再び熱いものが込み上げ、かえでは慌てて視界を夜空の月へと戻す。
おだやかなその表情は先程から何も変わらず、彼女にはそれがやけに羨ましく思えた。

「隊長も米田さんも、この舞台には強い思い入れがあるようですから……私達も負けられません」

何事も無かったかのように、マリアの口調もまた変わらない。かえでが視線をそちらに向けていない以上
それは当たり前のことなのだが、ここは察しの良い相手のこと。もしかしたらここまでの彼女の葛藤など
とうにお見通しなのかもしれない。

「……あら、私だってそうよ? それにお客様も、この公演を首を長くして待っているわ」

だが一瞬だけ言葉を詰まらせたかえでにとって、相手が自分の感情を読んでいるかどうかなど既に関係の
ないこと。
それよりも今この瞬間に自身がマリアと二人で何気ない日常の会話を交わしているということの方が、
彼女にとっては重要なのである。

今から少し前のほんのひとときの間、彼女は確かに、もう二度とそんな日常が訪れることは無いのだという
絶望の淵に立たされたのだから。

「それならきっと、隊長は予定通りの日程で幕を上げるでしょうね。お客様を待たせられませんから」

そんなマリアの柔らかい声音を聞きながら、かえではゆっくりと視線を下げていく。
やがてその視界から夜空が消えた頃、頬に何か熱いものが流れ落ちるのを感じた。

「そうね、大神クンならきっと……そう、するでしょうね」

弟のような存在の事を想ったかえでの言葉がほんの一瞬だけ途切れたのは、もう既に体中を覆いはじめた
熱が喉を潰してしまったせい。
それでもどうにか彼女は最後まで言葉を紡ぎ、ゆっくりとマリアの方へと視線を向けた。

「となると、帝都復興と稽古を同時進行しなければなりませんから私達も随分多忙に……」

一瞬だけ垣間見たその表情は確かに微笑んでいたのだが、それはすぐに形が判別できない程に
ぼやけてしまう。
そしてかえでのそんな表情を見たのであろうマリアは、自らの言葉を途切れさせた。

「……ッマリア、よね」

そう涙声のままで呟いて、かえでは視界が利かない代わりにその手を取り相手の存在を確かめる。

「……はい」

握った方とは逆の手が、彼女のそれを包み込む。
普段は冷たく感じるそれが、今はやけに暖かくかえでには感じられた。
その表情が見たくなり彼女は空いている方の手で瞼を擦るが、止めどなく流れ出る涙はすぐに視界を覆って
しまい、結局モザイクは取られないまま。

「生きてるの、よね」

随分自由の利かなくなった声帯を震わせ、かえではもう一度相手に問いかける。

「ええ、勿論」

すぐに降ってきた柔らかい言葉と同時に、彼女の身体は暖かい相手の身体にすっぽりと包まれた。
驚いたのと同時に握っていた手を離すと、それが背中に廻され更に強く抱きしめられる。

何度も感じた筈の、しかしどこか懐かしい暖かさとその匂い。
それに包まれると、かえでの目から更に涙が零れ落ちて止まらない。
何かを言おうとするものの、声が掠れて言葉にならない。

やがていつの間にか、かえではマリアの胸に縋りついたまま、年端の行かない子供のようにしゃくり上げて
泣いていた。

「心配を、お掛けしました」

ゆっくりとした口調で囁かれた相手の言葉は、かえでを更に深い涙の渦の奥へと導く。
彼女の思考は昨日のあの絶望の瞬間を再び映し出していた。


マリアの提案により、ミカサと地上の二つに別れた華撃団。
通信状況の悪い中、地上部隊を任されていたマリア達は大神との通信を最後に消息を絶ってしまう。

その報告は確かに自らの耳に届いたものの、かえでには一瞬理解できなかった。

悲鳴のような声で大神に状況を説明し、必死に彼らを探す風組。
呆然と画面を見つめたものの、士気を低下させない為に一同を鼓舞する総司令。
心配しながらも彼らを信じ、目の前の敵に立ち向かっていく大神。

全ての喧噪が、まるで自分とは遠い世界の出来事のように思えた。

走馬灯のように流れる、地上部隊のメンバーそれぞれの顔。
それぞれが皆かえでにとっては妹のような、娘のような存在である。

そして彼女の脳裏に最後に映ったのは、出撃前に作戦指令室でキスを交わしたばかりの恋人。
思い悩んでいたところを大神の言葉によって救われたのだと、彼女はどこかスッキリとした表情で話していた
ことをはっきりと覚えている。

その温もりを思い出すように、かえでが自らの唇に触れた。

その瞬間、辺りに歓声が沸き起こる。大神達が、ミカサ内部への突入に成功したのだ。
かえではその声でハッと我に返ると、すぐに思考を一人の女から帝国華撃団副司令のそれへと変える。

戦いはまだこれから。まだ個人の感情を表に出すような時ではない。
まして二人はこのような立場であるが故に、お互いの間で何度も確かめ合ってきているのだ。
 
もし自分の身に何かあったら、その時は――
 
かえでは自らの感情を、頑丈な蓋で閉じ込める。
そして祈るような気持ちで、映りの悪いモニターをじっと見つめた。
 
再び地上部隊の生命反応が感知されたのは、それから暫く経った後のこと。
しかしその姿をその目で見るまで、かえではその吉報を信じることができなかった。

それから数時間後、長い戦いに勝ち仲間と共にまたこの場所へと戻って来た愛する人の姿を見た時、
彼女は思わずへたり込んでしまいそうになる程の安堵感に襲われる。
だが今すぐにでもその身を抱きしめたいという衝動に駆られながらも、かえではそれをぐっと堪え変わらぬ
笑顔で彼らを迎えたのだった。

そして触れることも間々ならぬまま過ごした長い時間に彼女の中の切なさが積もり、やっと二人きりになる
ことができたこの瞬間、抑えが利かず爆発してしまったのである。


「また、置いて、いかれたのかと……思った」

背中をさするマリアの手の優しさとその温もりに少しずつ落ち着きを取り戻していったかえでは、途切れ
途切れではあるもののゆっくりと言葉を紡ぐ。

また、とは永遠に別れてしまった姉のこと。
欧州と日本という遥か遠い二つの地、秘密部隊と賢人機関の仕事に振り回される忙しい日々、そして何より
かえで自身の勝手な嫉妬心から疎遠になり、結局ありがとうの一言も言えないまま。

そんな思いをまた味わっていたのかと思うとまた熱い涙が溢れ出し、かえではマリアの胸に顔を埋めた。

その温かさと背中をさする柔らかな感触により、今確かに彼女がここにいるのだと実感できる。
更に、まるで子守唄のように響く相手の心音が、再び熱くなったかえでの心を徐々に落ち着かせていった。

「私は、あなたを置いてはいきません……絶対に」

しゃくり上げる音が響かなくなった時、ふとマリアがそう柔らかい声で囁く。
その声に誘われるようにしてかえではゆっくりと顔を上げたものの、涙の残ったままのその瞳は未だ相手の
姿を鮮明に映してはくれない。

するとぼやけたままのマリアの口元がにっこりと笑みの形に曲がり、その指が彼女の瞼を軽く拭う。
反射的に目を閉じたかえでが再び瞼を上げると、その瞳が今度ははっきりと恋人の姿を映し出した。

月明かりで照らされたブロンドの髪が淡い光を放つその姿は、かえでにはひどく幻想的に思える。
それ故に再びどこか遠い所へと消えてしまいそうな気がし、彼女は自らもその背中に腕を廻しぎゅっと強く
抱きしめた。

「……大丈夫ですよ、かえでさん」

余りにも必死な相手を落ち着かせようとしたのか、マリアはそう言って彼女の髪を軽く撫でる。まるで子供を
あやすようなその行為に、ほんの少しだけ我を取り戻したかえでは気恥ずかしさを覚えた。
しかし今はただ相手のその温もりに甘えたいという思いが勝り、振り払うことなくじっとその温もりに身を
委ねる。

「だからあなたも、私を置いていかないでください。あなたと同じ宿命を持った、あの人のように」

そして続けざまに紡がれたマリアの言葉に、ハッと目を丸くしたのだった。
裏御三家につらなる家に生まれた者の宿命。姉はそれに殉じることを覚悟し、妹であるかえでに宝刀を
託した。
彼女と同じように姉を敬愛していたマリアもまた、その死に打ちひしがれたと聞く。だからこそもう二度と、
同じ想いはしたくないということなのだろうか。

もしもそうであるとしたら――自分自身がマリアの中でそれほどまでに大きな存在になっていたということ。
また裏を返せば、自身の中の彼女もまた何よりも大きかった姉と同じくらいの存在になっていたということに
なる。

何時の間に、お互いの存在はこれほどまでに大きくなったのだろうか。
これではもう、自分達は絶対に離れることなどできない。

そんなことを漠然と思っていたかえでに、マリアが柔らかく微笑みかける。

「でも、そんなことにならない為に……私が皆と、帝都を護ります。それは必然的に、愛するあなたを護る
ことになりますから」

言葉のあとに続いたのは、触れるだけの軽い口付け。
それはほんの数秒であったものの、かえでの意識を現実へと引き戻させる。

「これは、その誓いです。それと……」

再び降ってきた二度目の口付けが運んできた温もりは、先程と同じほんの少しの間だけ。
だがそれは、かえでの中にまるでもやのように漂っていた思いをはっきりさせる。

彼女は、マリアを何よりも深く愛していたのだ。

「心配を掛けてしまったお詫び……これで許して頂けませんか?」

少しだけ首を傾げてそう問いかける相手の表情に、かえではふっと微笑む。
そして心の中で、ああ、私の大切なマリアだ、と呟いた。
だからほんの一瞬前まであれだけ泣きじゃくっていたのに、つられて笑ってしまうのだ、と。

愛する人の微笑みは、何よりも希望を与えてくれるものなのだから。

「許すもなにも、私はあなたが戻ってきてくれただけで……十分よ」

目元にまだ残っていた涙の痕を指先で払い、かえではゆっくりと、しかしはっきりとした口調で言う。
もうその声には悲しみも、そして迷いすらも残ってはいない。

そして自身よりも高い位置にある相手の瞳を真っ直ぐに見上げ、続けざまにこう囁いた。

「だから、私にも誓いを立てさせて」

そんなかえでの言葉にマリアは一瞬だけ驚いたように目を見開いたものの、すぐにその目は再び笑みの形に
歪む。
すると彼女はほんの少しだけ頬を染め、まるで花嫁が誓いのキスを待つかのようにゆっくりと瞼を閉じた。

その様子を見届けたかえでは、少しだけ背伸びをしてその薄い唇に自らのそれを重ねる。
もう何度も味わっていた筈のその感触が、今はやけに柔らかく感じられた。

「あなたが私を護ってくれるなら、私もあなたを護るわ。だから、絶対に置いて行かない」

唇が離れてすぐにかえでがそう言うと、言葉の途中でマリアがゆっくりと瞼を上げる。
一瞬だけ見つめ合った二人は、どちらともなく微笑んだ。

「約束、ですよ」
「あなたこそ」

そんな軽口を叩きあっていると、微笑みだけでは収まらずクスクスと笑みが零れてくる。
それは徐々に大きくなり、やがて音の無いサロンにひとしきり笑い声が響き渡った。

「……でも誓いのキスだなんて、何だか結婚式みたいね」

やがてそれも治まりはじめた頃、ふとかえでがそんな言葉を漏らす。
すると口元に未だ笑みを湛えたマリアが、その額に自らのそれを重ねてきた。
そしてそのグリーンの双眸で、じっと相手を見つめる。

「いっそしてしまいましょうか、結婚」

その長い睫毛が自らの顔に触れてしまうのではないかと思う程の距離で見つめられ、かえでは自らの顔が
一瞬で熱くなるのを感じた。
だが、もう彼女は決して視線を逸らそうとはしない。

「あら、もうしているようなものじゃない?」

かえでが心に思ったことをそのまま呟くと、マリアは幸せそうな満面の笑みを浮かべる。
そして彼女はその表情のままでこう呟いて、再びゆっくりと瞼を閉じた。

「愛情を誓うキスは、まだ交わしていませんよ?」

その言葉に、かえでは思わずふっと噴き出す。
しかしそれに気付いていないのか否か、相手はそのままじっと彼女の動向を待ち続けている。

「もう、分かったわよ」

キスを待つ花嫁をもう一人の花嫁が放っておくことなどできる筈もなく、かえでは自らも瞼を閉じて再び
そっと踵を上げた。
 
月明かりに照らされて、2人の影がまた重なる
静けさに包まれた中でのその儀式は、かえでの心を温かな愛で満たしたのだった。


++++++++++++++
サクラ4でマリアさんを地上部隊の隊長に任命すると、物凄くカッコイイことが分かりました。
私の中の彼女の像は大神クンをしっかりと支える頼りになる副官なので、あの場面はとてもらしい。
大神クンに『(帝都ヒロイン)のことも、考えてあげて下さい』みたいなこと言うところもそうなので、
うちのマリアらしい彼女の場面は結構4にもあるのか……と思ったり。
でもって消息を絶つなんて、なんとマリかえ的にオイシイ展開ッ!
こりゃ『最初に帝都に来てかえでさんの部屋に泊まったのはロベリア』と同様、私の中の公式ストーリーに
するしか無いよね!ね!

そんなこんなで、かえでさんけっこ……じゃなかった誕生日おめでとございますネタでした。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございます!
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ご案内
こちらは、わとことくらゆきの二人が運営する「サクラ大戦」の帝都ごった煮二次創作サイトです。

全体的に女性キャラ同士が非常に仲の良い描写が含まれること、更に製作物によってはキャラが崩壊していることがございますので、観覧の際はご注意下さるようお願い致します。

その上最近はCPが節操無し状態になっておりますので、より一層ご注意願います。

初めていらっしゃった方は、必ず「あばうと」のページをご覧下さい。

尚、このサイトは個人で運営しているものであって、版権物の著作者様・販売会社様等とは一切関係ありません。

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