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皆様どうもお久しぶりです、告知ぶりのくらゆきでございます。

あんな本を出しながら盛大に遅刻をかましましたが、どうにかこうにか出来上がりました。
(しかし日付は詐欺をしておく、何となく)

かえでさん、お誕生日おめでとうございまぁぁす!
111歳ですよ、111歳! 1がみっつですよ1が、Iが……!!

とまあそんな感じで、今年は年にあやかってもう少し更新できたらいいなぁと思います(物凄く願望)


そしてもう1つ忘れてはいけないこと、皆さまえどさくらありがとうございました~!
あんなに趣味に走った本だというのに、ここまで捌けるとは思わなんだとです。
有難いお言葉やら差し入れやら、もう本当に感無量でした。

もういちど、本当に本当に、ありがとうございました!
また来年も参加できたら、いいなぁ……(願望その2)


しかしながら、ご新規さんもきっと多い中相変わらず更新はマリかえでございます。
申し訳無い、何故かオンリーの後はかえでさんの誕生日なのですよ。
ここで書かねば、いつ書けと……いやホントすんませんです。


拍手返信(くらゆき)

白妙様
えどさくらお買い上げ&差し入れまでありがとうございました!!
物凄く早い時間に真っ先に来て下さった方ですよね、覚えております。差し入れ盛りだくさん
ありがとうございました。
新刊楽しんで頂けたようで何よりでございます。モトホシ分少なくて申し訳ない……!
その上私の方はかなり偏ってしまって申し訳ないとです……!!
欧州私も大好きなので何かしら出したいなぁとは思うのですが、それぞれ熱心なファンがいらっしゃるので
私ごときが出すなんてオコガマシイような気も…でも何かしら形にはしたいと考えております。

そしてみちうらいらっしゃるのですね! 是非是非沢山お話しましょう☆
まだチケット確保しただけで何の予定も立てておりませんが、確実に会場には居ます(笑)
お気軽に声を掛けてやって下さいませ。

それでは、メッセージありがとうございました!


それでは、百合大丈夫な方は『つづきを読む』よりお楽しみ下さいませ。

注意
・マリかえの百合でございます
・見事にヤマもオチもイミも無いでございます
・見事に2人しか出て来ないでございます





+++++++++++++++


ふわふわと舞っているかのようだった自身の意識が唐突に重くなり、ずっと曖昧なままであったその感覚が
明瞭になっていく。すると今まで視界に映っていた景色の幕が上がり、ライトの消えた景色はすっかり暗く
なってしまった。

そしてほんの一瞬前まで見ていた筈の光景がすっかり記憶の彼方へと消え去った頃、かえではやっと自らが
目を閉じたままであることに気付く。
そして消えてしまった記憶の代わりに、既に馴染んだ本来のそれがゆっくりと頭の中へと蘇る。

やがて彼女はいつも隣に当たり前のようにある匂いに包まれ、ゆっくりと瞼を上げた。

はじめはぼやけていた視界が徐々にはっきりとしていき、二三度瞬きをした頃には見慣れた真っ白な天井が
はっきりと映り込む。
それは普段自室で目覚めた時と全く同じものであったが、かえではその視野に見えた景色に違和感を覚えた。
装飾があまり派手ではないところは変わらないのだが、チラチラと目に映る家具は彼女の部屋のものではない。

それを思えば、今自らの寝ているベッドの感触もどこかおかしい。
硬いシーツのそれは何も変わらないのだが、その大きさが普段よりも広く感じるのだ。まるでその背の高さから
特注で作らせたという、この香りの主のもののように。

寝ぼけた頭のままかえではそこまで考えると、自らの身体をごろりと動かして寝返りをうつ。
その身を預けているものが彼女のそれであればとうに床に落ちている筈なのだが、迎えたのは先程までと同じ
柔らかな感触。
だがその小さな運動のお陰ですっかり目をさましたかえではそれを疑問に思うことも無く、うつ伏せのまま枕に
頬を擦りつける。そして既にその身体を包んでいる香りを吸い込むと、自らの頬が自然と緩んでいることに
気づいた。

「目が覚めましたか?」

だが彼女が幸せを感じていた時もつかの間。ほぼ同時にすぐ傍から聞こえてきた声に、緩みきった表情を一瞬で
ひきつらせる。そして文字通り布団を跳ね除ける音が響く程慌てて身体を起こせば、そんなかえでを
きょとんとした顔で彼女を見つめるマリアの姿があった。

「お、おはよう……マリア」

ずっと見つめられていたことに気付いた彼女は、引き攣った表情のままそう言って片方の手を軽く上げる。
それは朝に交わされるものである筈なのだが、ベッドのすぐ傍にある窓からは朝の光は一向に差し込んで来る
気配は無い。
視線を動かすことなくその視界にある時計に意識を移せば、針は丁度真上で重なっていた。
どうやらまだ真夜中であるらしい。

「おはようございます。まだ酔ってらっしゃるんですか?」

そんなかえでの場違いな挨拶を律義にかえしたマリアは、そう問いかけて不思議そうに首を傾げる。
だがその答えを自らの記憶の中からすぐに見つけ出すことが出来なかったかえでは、相手と同じように
首を傾げた。

「酔って……?」
「誕生日のパーティーで飲み過ぎてすっかり眠ってしまったこと、覚えてらっしゃらないんですか?」

オウム返しの問いかけに、マリアは小さく溜息を吐いてそう答える。するとその言葉のお陰でかえでの中で
途切れていた記憶が繋がり、彼女は漸く今置かれている状況を理解した。

今日はかえでの誕生日。
それを祝い花組全員が彼女を祝うパーティーを開いてくれた。
皆からの祝福の言葉や贈り物に喜びを感じながら、丹精込められた料理に舌鼓を打つ。
すると酒豪の彼女としては当然ながら摂取する酒の量も増えていき、いつの間にお開きになったのかも
知らないまま、ここで眠りこけていたというわけである。

「あ……ごめんなさい、ここまで運んでくれたのね」

いつの間に寝こけてしまったのかは定かでは無いものの、状況を推理すればそれくらいのことは予想できる。
宴会が行われたのはいつもと同じ、一階劇場の楽屋。そしてこの部屋は二階である。寝ている人間が自力で
辿りつける筈が無い。

しかしその言葉にマリアから返ってきた言葉は、彼女にとって意外なものであった。

「ええ、まぁ……でも実際、二階まで運んだのはカンナでしたけど」
「えっ、じゃああの子がここまで!?」

涼しい顔で言う相手とは裏腹に、かえでは目を丸くする。
彼女が目覚めた時の違和感の正体、それは今居るこの場所が自分では無くマリアの部屋であったから。
女性にしては落ち着きすぎている彼女の部屋の家具を確かに見慣れてはいたものの、自らの部屋にあるもの
とは全く違う。背の高い彼女のベッドはかえでのものよりも随分と広いのである。

そして何より、彼女のものとは香りが違うのだ。生まれた時からの付き合いであるせいか、自らのベッドでは
何の匂いも感じない。
だが今自分が寝ている彼女のそれは――

「いえ、あなたの部屋まで。その後は私が」

悶々と流れて行くかえでの思考を遮るかのようにそう呟いて、マリアはぱたりと膝の上に乗せていた本を閉じる。
すると彼女はゆっくりと立ち上がり、かえでが座るベッドの方へと近付いて来た。

「ど、どうしてそんなこと……」

その姿を目で追いながら、かえでは相手の言葉に疑問を投げかける。カンナが彼女を部屋へと運んだのなら、
そのままにしてしまえばよかった筈。いくら酔い潰れていたとはいえ、時間が経ちそれが冷めてしまえばその後は
自身で対処できる。むしろ全てが揃っている自室の方が色々と都合がよい。

またもし今のように目覚めるのを待っていてくれるのであっても、わざわざ手間を掛けて自室へと運ぶ
必要は無い。
部屋にある椅子に座り、時間潰しに今のように読書でもしていればいいのだ。
彼女達は一年の殆どの日の夜を、お互いの部屋で共に過ごしているのだから、遠慮をする必要は
無いのである。

だがかえでがそんな疑問を口にするよりも早く、マリアは彼女のすぐ傍に腰を降ろした。
そして相手の瞳を見詰めたまま、その整った薄い唇にうっすらと笑みを浮かべる。
深緑に瞳に吸い込まれそうだと思いながらかえでが目を見開いた時、相手は彼女のすぐ横に手を付きその耳に
唇を寄せた。

「誕生日に、眠り姫を盗んでみたかったんですよ」

暖かな吐息混じりの言葉に自らの体温を一瞬で押し上げられたかえでは、慌てて耳を塞ぎ相手と距離を取る。
そしてマリアの方を見れば、湛えた笑みを崩さないままじっと彼女を見つめていた。

唐突なその行動と表情に相手の求めているものが分かり、かえではごくりと喉を鳴らす。
すると早鐘のように鳴る心音をどうにか堪えた彼女の目が、マリアの手にあるものを捉えた。

「そ、そういえばこれ、みんなで選んでくれたのよね。マリアはどの写真を選んだの?」

縋るような気持ちでかえではそれを口に出すと、相手の手からそれを取り上げベッドの上へと広げる。
それはかえでが誕生日に皆から贈られたアルバム。花組全員がこれまでに撮られた何枚もの写真から、
彼女の為に選んでくれたものであった。宴会の最中に皆の前で広げた時には、当時の思い出話に花が咲き
大層盛り上がったことを、やがて酔い潰れてしまった彼女も覚えている。

「どれだと思いますか?」

先程までと変わらぬ穏やかな声の問いかけに、かえではふとマリアの方を盗み見る。
アルバムに視線を落とした彼女の表情は長い前髪に隠れて殆ど分からない。
だがその瞳に囚われていないせいか、ほんの一瞬前に感じたような甘く熱い雰囲気を感じることもなく、
その為かえではどこかほっとしたような気持ちで再び視線をアルバムの上へと落とした。

ページをめくる度に次々と現れる懐かしい写真。かえでがその一枚一枚を指し示すと、マリアはその写真を誰が
選んだのかを教えてくれた。
そしてその後続くのは、当時のことを想う思い出話。宴会の時のような大きな盛り上がりは無いものの、
二人きりでじっくりと語り合う時間もまた心安らぐひとときである。
その相手が、心を通わせた相手であれば尚更。

そんな暖かい時間の中でかえではいつの間にかマリアの隣に寄り添う形になり、やがてその肩を相手に
抱かれていた。

「これを撮った時のこと、覚えてらっしゃいますか?」

かえでの肩に添えられた方とは逆の手で、マリアは一枚の写真を指し示す。
その写真では大帝国劇場のメンバー全員が、こちらに向かってにっこりと微笑んでいた。

「えっと、確かレニとアイリスが主役の舞台が終わった後の……」

大人数の中心で微笑む衣装を着たままの二人を見、かえでは当時のことを思い出す。
主役も板につきもう可愛らしい子役というだけでは表現できない程の役者となった二人の、初めての恋愛劇。
連日満員御礼の舞台で喝采を浴びた二人を祝福するため、この写真を撮った後は花組のメンバーだけでなく、
裏方や日頃お世話になっているスポンサーも含めた盛大な打ち上げを行った。
皆に祝福された二人はどこか緊張した面持ちであったものの、いずれはトップスタアといった風格を漂わせる
堂々とした振舞いを見せていた。そして二人を見ていたかえでは、その成長ぶりに胸が熱くなったことを
昨日のことのように覚えている。

そんな記念すべき日の写真では、彼女はマリアの隣に立っていた。
だが小さなその姿をよく見ると、皆が笑顔で映る中でかえではたったひとり驚いたように目を見開いている。
何か驚くようなことがあったのなら、皆もまた同じような表情をする筈。しかし周りも、そして隣に立つマリアもまた
満面の笑みを浮かべて――

「あ、この時マリアがいきなり手を握ってくるからびっくりして……もう、変な顔で残っちゃったじゃない」

自らと彼女の腕の位置を見て全てを思いだした彼女は、そう言って頬を膨らませる。
前に立つレニの影に隠れて正面からは分からないものの、確かにこの瞬間マリアの指はかえでのそれに
絡め取られていた。勿論撮影の後にはすぐに解放されたものの、突然の行動に目を白黒させたままのかえでは
そのまま写真に写ることとなる。そして一方のマリアはそんな彼女を余所に、どこか満足そうににっこりと
微笑んでいた。

「そうですか? 私はとても、可愛いと思いますけれど……」

写真のかえでの顔を軽く爪の先でつつくと、マリアは憮然とした表情のかえでを見下ろしてくる。
その瞳はいつの間にか、再び先程と同じねっとりとした熱を持ったものへと変わっていた。

再びそのグリーンの瞳に射すくめられたかえでは表情を一変させ逃れようとするが、文字通り相手の腕の中に
居る今はどうすることもできない。

マリアはかえでの膝に広げられたアルバムをゆっくりと閉じると、それを枕のあるベッドの隅の方へと移動させる。
こうして空いた腕はかえでの背中に廻され、彼女はぎゅっと抱きすくめられた。

暖かな相手の体温に包まれ、彼女の心臓はまた早鐘のように高鳴る。
そして同時に相手の鼓動もまたその耳に響き、その早さが自らのそれと同じように早くなっていることに
気付いた。

「……あなたも、緊張しているの?」

鼓動の合間を縫い、かえではそう微かな声で囁くとゆっくりと顔を上げる。
吐息がかかる程の距離にある相手の顔は舞台で見せるどんな役柄よりも美しく、それでいて儚いものの
ように映った。

「ええ、勿論」

マリアが問いに答えると、その吐息がかえでの髪を揺らす。
そして殆ど同時に瞼に降ってきた口付けは、彼女の睫毛を軽く揺らした。

「深い眠りに就いていた眠り姫を盗み出して、自分のものにしてしまったのですから」

続く頬への口付けが離れるのと同時に、かえでは自らの手をマリアの背中へと伸ばす。
近かった距離が更に縮むと、彼女は真っ直ぐに相手の瞳を捉えた。

すっかり相手と同じ熱を持った自らの瞳が、エメラルドの宝石の中で妖しくかえでを見つめていた。

「こんな風に」

マリアの口元が笑みの形に曲がると、二人はどちらとも無く唇を重ねる。
軽い口付けは重なるごとに深くなり、やがて闇の茨がゆっくりと二人を包み込んでいった。


+++++++++++++++
お誕生日パーティの後のマリかえでございました。
脳内マリかえは毎日のようにかえでさんの部屋で一緒に寝ているので、たまにはマリアさんの部屋でも
いいかなと!
広いベッドの方が色々と都合がいいですし、ねえ。
ちなみにお互い相手の部屋にちょいちょい私物を置いている辺りまで脳内妄想しておりますが何か?

そんなこんなで痛々しいながらも、物凄く久々なマリかえでした。ああスッキリした(笑)
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