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※注意※

※以下マリかえルートにつき
※勿論百合でございます



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「マリア、これで何回目かしら?」

振り上げたままの手を下ろすことができず固まってしまったマリアを見上げ、かえでは溜息混じりにそう呟いた。
その言葉に緊張の糸が解けたのか、腕を下ろしたマリアはへなへなと床にしゃがみ込んでしまう。

「かえでさん、やはり私には……」
「駄目よ。本番でそんな風になっちゃったらどうするの?」

さながら飼い主に叱られた犬のように顔を上げたマリアを尻目にかえではそう一喝すると、傍らのテーブルに
ある台本を開く。

「演技には申し分無いから、やっぱり今と同じところからでいいわね? ……ああでも、もう少し前からの方が
感情移入できるかしら?」

台本に目を落としたままぶつぶつと独り言を零すかえでを見、マリアもまたひとつ溜息を吐く。
やがてその視線は彼女が誰よりも愛する人から、自らの手の平へと移された。

平均的な女性よりも少しだけ大きな掌、細く繊細な指。すっかり見慣れてしまったその手が人を打つ時、果たして
どれほどの凶器になるのだろう。ましてその相手が愛する人であったとすれば――

「うん、やっぱりさっきと同じ所からにしましょう。マリア、始めるわよ!」

名前を呼ばれ反射的に顔を上げれば、そこには生き生きとした表情のかえで。
複雑な気持ちを抱えていることは事実であるものの、彼女のそんな表情に逆らえる筈も無い。

「……は、はい」

曖昧に返事をしたマリアは、ゆっくりと立ち上がる。
そして開かれたままの台本に軽く目を落とした後、先程と同じ位置に立ち瞼を閉じた。
 
それが再び開かれた瞬間、もうここに彼女は居ない。



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