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※注意※
※以下マリすみルートにつき
※勿論百合でございます



+++++++++++++++


「お爺様から、お見合いを勧められましたの」
一人二人と他の仲間が消えていき、いつの間にやらたった二人だけ残されたサロン。仲間達の気配を扉の外に
感じながら静かに文庫本を読んでいたマリアに向かい、すみれは唐突にそんな嘘を呟いた。
 
それはいつも相手に散々弄ばれている彼女が仕掛けた罠。
だがそれは仕返しという意味合い以上に、相手が普段一切見せようとはしない自身への愛情を確かめたいという
強い想いがあったのである。

まるで揶揄されるように『綺麗だ』と囁かれ、弄ぶような浅いものから狂おしいほどの激しいキス、果てはそれ
以上のところまで。そんな風にして確かにすみれは、彼女と共に幾つもの夜を越えてきた。

だがそれでもすみれは、彼女に愛されているという自信が無い。
その形の良い唇から紡がれる相手の『愛の言葉』はどうしても戯れのように聞こえるのだ。

彼女の周りには沢山の彼女を愛する人がいる。だがそれは同じ場所に立つすみれも同じこと。
そして彼らに対し感謝の気持ち以上のもの抱いていないことも、同じ立場であるからこそ分かる。
だから相手にとってすみれがそれ以上の存在であることは確かなこと。

だが相手が普段囁く愛情に、舞台の上で紡がれる時以上のものを感じたことはない。

トップスタアとして役に入り込んだ彼女が、すみれが演じる役を愛していると言った時の瞳は全てを
包み込むように暖かい。だが夜のベッドの上で愛を囁く彼女の瞳は、それとは逆にとても冷たいのだ。

まるで全てを呑みこんでしまいそうな、月の無い夜の闇のように。
 
「……そう」

聡い彼女を騙す為には多少の現実味がなければならない、そう考えて作った嘘は、そうでありながらいつか
起こり得る話でもある。
だがそうであるにも関わらず、マリアはそう返事をしたのみで視線を文庫本から上げようともしない。
もしも話が本当ならば帝劇を去ることにもなりかねない。実際にそんな話があった時には、仲間達は真っ先に
彼女を取り戻しに来てくれた。

だが、そのメンバーの中に当時海外に渡っていた彼女の姿は無い。

「来週の土曜日に……全く、急なお話で困ってしまいましたわ」

自分の中に湧き上がってきた不安を振り払うように、すみれはわざと明るい口調で更に言葉を続ける。
だがそれでもマリアの視線が動くことは無かった。

「……ふぅん」

何の興味も無いといった風に息を吐き、マリアは本の頁を捲る。
襲い来る強い不安に意識を持って行かれそうになるのを必死に堪えながら、すみれはぐっと袖に隠れた拳を
強く握った。



→一呼吸おき、冷静になる
→思いのまま怒りをぶつける

→りせっと
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